中学生でも読めるフーコー『性の歴史Ⅰ』(第四章「性的欲望の装置」〈時代区分〉の部分)

フランスの哲学者ミシェル・フーコーの著作である『性の歴史Ⅰ知への意志』を中学生でも読めるように要約したもパート9です。
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zutabukuro @ClothSack

中学生でも読める『性の歴史Ⅰ』、第四章「性的欲望の装置」第四節〈時代区分〉の部分を連投しますね~

2014-04-23 18:31:12
zutabukuro @ClothSack

ここでは、性に関する時代区分、つまりどのように時代を区切って考えるのかを書いていきたいと思います。また、性的欲望の装置の普及についても話していきます。  (続く)

2014-04-23 18:31:52
zutabukuro @ClothSack

性的欲望の歴史を性の否定というメガネで見てみると、時代の区分は17世紀に起こった否定の開始と20世紀に起こったその緩みということになるでしょう。しかし、今までの分析を振り返ってみると、現実はだいぶ違います。(続く)  

2014-04-23 18:32:10
zutabukuro @ClothSack

性的的欲望を得るための中心的な技術である告白は、今とはその形式が違いましたが中世から存在しました。その後、16世紀くらいになると、性的欲望の元である肉欲の問題がキリスト教において注目され、良心の指導と検証の手続き(告白)が発達していきます。 (続く)

2014-04-23 18:32:33
zutabukuro @ClothSack

18世紀末になると、今まで見てきたような性に関する新しいテクノロジー(性の科学など)が生まれ、性が社会と個人にとって大きな問題になっていきました。教育、医学、人口学を中心に展開したこれは、新しいものでしたが、キリスト教が作り上げた仕組みを応用していました。 (続く)

2014-04-23 18:32:59
zutabukuro @ClothSack

このように見ていくと、18世紀から19世紀にかけて、性が宗教のもの(肉欲)から医学のものになっていったという過程が見て取れます。前者は宗教にもとづく精神的な問題が中心でしたが、後者は科学的、物質的な肉体・身体がその問題の中心でした。(続く)

2014-04-23 18:33:21
zutabukuro @ClothSack

なお、性が医学化されたといっても、そのやり方は一般医学とは違っています。性的倒錯と遺伝の結びつきがそれを示す良い例でしょう。現在では考えられませんが、18、19世紀当時は、性的倒錯(変態)が他の病気と結びつき、それが遺伝すると性の医学においては考えられていたのです。(続く)

2014-04-23 18:33:42
zutabukuro @ClothSack

手に性的興奮を覚える人は手の病気になりやすく、それは遺伝すると大まじめに考えられていた、というように。(1940年台までは精神分析がこの考え方に抗っていました。性的欲望の根源は家族との経験であると考えていたためです) (続く)

2014-04-23 18:34:23
zutabukuro @ClothSack

なので、性が否定されていたという考え方以外で性の歴史を見てみると、16世紀の半ばにおこったキリスト教における動きと、19世紀の初頭に起こった性についての医学(科学)的テクノロジーの出現が時代のターニングポイントになるでしょう。 (続く)

2014-04-23 18:34:44
zutabukuro @ClothSack

しかし、これは技術的なものの歴史にすぎません。パソコンの開発とその普及が別物であるように、これからは性的欲望の普及と適用の歴史を考えてみましょう。   性は経済的な理由、具体的に言うと労働力の確保のために否定されたと主張する人たちがいます。(続く)

2014-04-23 18:35:13
zutabukuro @ClothSack

そのような人たちの意見に従うならば、性の問題、あるいは性的欲望の装置の主な対象は労働者になる貧しい人々のはずです。しかし、初期にその対象になったのは、経済的に恵まれ、政治的に上位に立っていた人々である、ブルジョワジー(17世紀以降お金持ちになった人々)や貴族の家族でした。(続く)

2014-04-23 18:35:37
zutabukuro @ClothSack

一般に貧しい人たちが性的欲望の装置に完全に取り込まれたのは19世紀末になってからです。このように、性的欲望の装置の広がり方は、一様ではありませんでした。 (続く) 

2014-04-23 18:36:20
zutabukuro @ClothSack

このような流れを見ていると、よく言われる指導者階級(ブルジョワジー)が性的欲望の装置を貧しい人々の性を否定するために設置した、という話は適切ではないでしょう。そこでおこなわれていたのは、性的欲望の装置の指導者階級自体への適用だったからです。  (続く)

2014-04-23 18:36:41
zutabukuro @ClothSack

では、なぜブルジョワジーは性的欲望の装置を自らに適用していったのでしょうか。これもよく言われることですが、この時代のブルジョワジーが持っていたと言われる禁欲主義のためでしょうか。そうではなく、それは健康という生を最大限に活用するためのポジティブな理由のためでした。(続く)

2014-04-23 18:37:22
zutabukuro @ClothSack

彼らにとって重要な問題は、自分の身体であり、精力、寿命、子孫の繁栄だったのです。それが、時代を経て他の人々に広がっていった、といえるでしょう。   さて、ブルジョワジー達は性を中心に自身の死、身体、魂を性を中心として考えました。(続く)

2014-04-23 18:37:59
zutabukuro @ClothSack

18世紀の中頃になると、自分たちの身体を性的(性的欲望)なもの自ら作り上げていきました。これを具体的に言えば、彼らは健康、衛生、子孫、種族などの性に関わるものを中心に、自分たちの体を考えるようにということです。では、なぜ彼らはこのような考えを持ったのでしょうか。(続く)

2014-04-23 18:38:20
zutabukuro @ClothSack

第一の理由として考えられるのが、貴族の血統の替りとしての性ということです。ブルジョワジー達が登場する以前の社会において上位の階級にいたのは貴族たちでした。彼らは自分の血統(王様の血を引いているなど)によって自分の身体は優れている、偉いのだと主張してきました。(続く)

2014-04-23 18:38:39
zutabukuro @ClothSack

ですが、その後をついで社会における上位の階級になったブルジョワジーたちは、ただの金持ちなので血統が優れているなどということはありませんでした。   そこで彼らが持ちだしたのが、性であり、生理的身体の健康だったのです。彼らはこう言ったことでしょう。(続く)

2014-04-23 18:39:00
zutabukuro @ClothSack

自分たちは下のものに比べて、健康で力強い身体をもっているだから偉いのだと。このような動きを示す例として結婚が挙げられます。貴族たちが支配的だった時代、結婚で重視されたのは系図(だれの血を引いているか)や財産、身分が同じくらいであるかでした。(続く)

2014-04-23 18:39:23
zutabukuro @ClothSack

ブルジョワジーが支配的な時代になってくると、結婚で重視されたのは遺伝という性に関する健康問題だったのです。   具体的に考えてみましょう。貴族の時代、王の血を引いているのならば簡単に良い相手と結婚できたのでしょう。(続く)

2014-04-23 18:40:25
zutabukuro @ClothSack

ですが、ブルジョワジーの時代になるとそうはいきません。自身が健康であり、遺伝的に子孫が不健康になる可能性があるから家系に病気の人がいてはならないのです。   もう一つの理由として挙げられるのが、力と精力と健康と生の無眼界な拡張です。(続く)

2014-04-23 18:41:10
zutabukuro @ClothSack

これはつまり、身体の第一主義の拡大ということです。ブルジョワジーたちにとって唯一誇れるものが身体の健康であるのならば、その価値・機能を高めてしまおうという理屈です。(続く)

2014-04-23 18:41:32
zutabukuro @ClothSack

18世紀末、身体の健康、長寿法、健康な子供を産んでそれらをできるだけ長生きさせる方法、人類の子孫を改良しより良くするための方法など、無数の健康に関する書物が出版されたということがこのことを示す良い例でしょう。 (続く)

2014-04-23 18:42:10
zutabukuro @ClothSack

これまでの議論からいって、ブルジョワジーといえば身体(性)の否定、ブルジョワジーが労働者の性を否定している、と考えるべきではないことは明らかです。(続く)

2014-04-23 18:42:48
zutabukuro @ClothSack

実際の彼らの問題関心は、性(的欲望)から身体を考え、性的欲望の装置を組織することによって、自分たちの身体の力と子孫を反映させるということだったからです。だから、貧しい人々へ性的欲望の装置を適用することが遅れてしまったのでしょう。(続く)

2014-04-23 18:43:06