アイヌ文化における【地獄】のイメージ

アイヌ文化研究者・アイヌ語爺さん ( @aynuitak_jiji )によるアイヌ文化における【地獄】の解説です。
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丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。この「地下世界」「ヤチの国」はアイヌ語ではヤチネモシリとかテイネモシリ、ポクナモシリなどさまざまに呼ばれるが、化物などが封じ込められる一種の地獄である。灼熱地獄ではなく、「じめじめした嫌なところ」らしい。

2014-04-19 16:35:36
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。さて、アニメではポイヤウンペは真逆さまに沼に落ちる。丸いものがたくさん並んでいるが、これが「谷地坊主(ヤチボウズ)」。北海道の湿地や平地(ヤチ)の草(スゲ類)が株状に固まって生えているもの。

2014-04-19 16:37:12
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。アニメでは沼になっているが、まあリアリズムで考えたらもう少し湿地っぽいかもしれない。赤い色もアニメオリジナル。異世界ぽくしてみた。

2014-04-19 16:41:53
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

①【地獄】 地獄について古今様々な民族様々な宗教で想像図が描写されてきた。それは(現在いる世こそ地獄という人もいるかもしれないが)地下にあって、誰もが行きたいと思わぬ苦しい所といったところだろう。

2014-04-22 23:51:13
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

② アイヌにとっての poknasir(下方の土地)もやはりそのような地下の世界だ。 iwan poknasir (六層界の地獄)と表現するのは伝統的には普通の死者の魂が赴く先もまた地下の世界であって、これと分けて更に深い深い深淵である事をいうのだろう。

2014-04-22 23:56:17
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

③ 多くの宗教で地獄には神や仏の意向に反した罰として魂が送られるところだが、アイヌの場合は神が落すこともあれば人間が落すこともある、比較的容易に?落される場所だ。

2014-04-23 00:03:29
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

④ また様々な宗教では地獄の支配者、管理者よいえる存在がいて積極的に懲罰として人間に苦痛を与えるが、アイヌの地獄には基本的にそういう存在はない。ニタイパカイェのトムンチカムイも閻魔大王とかとは少し違う存在ではあろう。つまりそこにいる魂を苦しめるために存在している訳ではない。

2014-04-23 00:08:35
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑤ 言ってみれば地獄の住人という存在なのだろう。 さてアニメではその地獄が湿地として描かれていた。これは teynepoknasir と言われる状態だ。teyne は現在「手稲」の地名の元になっている「濡れる」という意味だ。

2014-04-23 00:15:09
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑥ とはいいながらここまで大胆に泥沼として描いたのは感心する。地獄の描写でよく cikapsakkotan 鳥なき国、wakkasakkotan 水なき国というのがある。食料も水もなく飢えや渇きに苦しむ場所という事だ。わしなどこれに引っ張られてあれ程の沼には描けんかったろう。

2014-04-23 00:20:15
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑦ この水がないは、teyneがあるから単に飲めるような綺麗な水がないというだけでいいのだ。この湿地を表す yaci という言葉、わしら石狩の者にとっては別な地方の言葉で実感がわかないが、うちらの言葉で言えば teyaka で、水ではなく泥とか泥沼でアニメみたいな感じ。

2014-04-23 00:27:34
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑧ yaciが構成要素に含まれた yacipoci も「どろどろ」の意味。アニメでは主人公を泥まみれに描く訳にもいかないからあれでよかったんだろう。実写でやるんならそういう汚れも大いに描けばいいんだろうがな。

2014-04-23 00:33:21