地下鉄の少女#4

キノコ工場に勤める一人の青年。彼は通勤の地下鉄でいつも出会う少女に好奇心を膨らませていた。彼女は青年が乗る地下鉄には必ず乗っており、数個前の駅でいつも降りるのであった。しかしその駅は存在しない駅だった…? twitter小説アカウント @decay_world で公開したファンタジー小説です。この話はこれで終わりです
減衰世界
rikumo 577view 0コメント
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  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 17:28:52
     闇の中カラカはじっと相手の出方を待っていた。魔法使いが自分に魔法をかけている。いま、それが破られようとしているのだ。カラカは魔法のことなどよく知らなかったが、何となくわかる。まるで手品を裏から覗いてしまったように。 91
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 17:36:39
    「あーあ、ばれちゃった」 闇の中に白い少女の腕が浮かび上がる。顔の所には一つの青い光点。これがあの少女の正体、魔法使いの姿であろう。魔法使いは日の下に出るときは黒い詰襟を着ているのが常だが、魔法の中では奇妙な姿を取る。 92
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 17:45:09
    「あなたは説明を求めている」 そうだ、俺に何をしていた? カラカはそれだけが気になった。「何にも悪いことは無いよ。ただ、あなたの好奇心を御馳走になっていただけ」 「あなたの好奇心は魔法の源力として素晴らしいものだったわ。感謝するよ」 93
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 17:53:13
     もうやめてくれ。好奇心を燻らせたまま、何もできないでいるのは辛いんだ。何も考えずただ日常を過ごす方がよっぽど楽だ。「それは悪いと思ってるわ。水を汲めば、水は減るもの。感情も同じ」 「でももう終わり。あなたは秘密を暴いてしまった」 94
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 18:00:45
    「この駅は虚無だよ。ハリボテなの。何もありはしない。あなたはそれを知ってしまったから、もう好奇心を抱くことも無いわ」 「さようなら、あなたの好奇心は十分役に立ったわ。わたしもね、魔法の力のために市民を生贄に捧げるのは嫌いなの」 95
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 18:07:41
     待ってくれ。まだ君に言いたいことがある。「何でしょう?」「俺にはまだ、好奇心がある」 ようやくカラカは声を出すことができた。カラカの足元から白い光が湧きあがる。それは渦を巻いて立ち上り、彼の姿を照らした。 96
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 18:14:51
    「好奇心ならまだある。だから……行かないでくれ」 97
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 20:28:31
    「あなたのどこに好奇心が残っているというの? 現にこの駅の秘密を知ってしまった。あなたの知りたいことは……え?」 少女の魔法使いは不思議なことに気付いた。自分の両手に燐光が走り、力がみなぎるのだ。これは好奇心の力だ。 98
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 20:38:32
    「俺の好奇心の元は、君自身だ。君がどんな魔法使いで、どんな風に生きているか……なんで俺を選んだのか、もっと知りたいんだ」 両腕の燐光が光をほとばしらせ、裸の少女の姿を一瞬闇の中に浮き彫りにした。 99
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 20:45:27
     彼女は少し恥ずかしそうにして、目をつぶった。その瞬間、カラカの視界は完全に闇に沈んだ。重力の感覚が消失し、四肢をばたつかせても空を切るばかりだ。叫び声をあげようにも、彼の声は自分の耳にさえ届かない。彼は完全な闇の中必死にもがいた。 100
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 20:53:34
     気がつけば彼は列車の中でうたた寝をしていた。地下鉄のアナウンスが歯車二丁目の停車を告げる。どうやら魔法からは解放されたらしい。少女の姿は見えない。どうやら許してくれたようだ。カラカは魔法の中でつい自分の気持ちを告白してしまった。 101
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 20:59:46
     歯車二丁目を過ぎてもやはり歯車三丁目は現れなかった。歯車二丁目の次は赤螺子一丁目だ。カラカは少し残念に思った。もう地下鉄の少女に会うことは無いのか……それだけが残念だった。彼女がいなければ、歯車三丁目なんてどうでもよかった。 102
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 21:05:40
     そしてカラカはいつも通り自分の駅で降りた。そのときである。流れるひとの間に立って、自分を待っている……地下鉄の少女がいたのだ。 103
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 21:12:53
     地下鉄の少女はいつものように淡い水色ワンピースにデニムのズボンという姿だ。じっとこちらを見ている。むっとした表情でカラカを見ていた。鼻からは……一筋の鼻血が流れていた。カラカは立ち止ってどういうことか戸惑う。 104
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 21:20:33
    「責任取ってよね」 「え?」 「あなたの好奇心が強すぎて、私の中から力が溢れすぎているの。しばらく付き合ってよね。じゃないと、好奇心で破裂しちゃう」 そう言って右手で鼻血をぬぐった。鼻の下に微かに血のあとが残る。 105
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 21:33:05
    「ね?」 「あ、ああ、喜んで」 それを聞いた少女は、にこりと笑ったのだった。 106
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 21:43:36
    ――地下鉄の少女 エピローグ
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 21:50:41
     カラカはいつも通りの日々に戻った。いつものようにキノコを育てる仕事。だが、毎朝の通勤はもっと楽しいものに変わった。地下鉄に乗っている間、隣に水色ワンピースの少女が座っているのだ。 107
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 21:58:14
     二人はいつまでも語り合った。カラカの降りる駅になると、別れを惜しみつつもカラカは下車した。カラカの好奇心は尽きることが無かった。もっと彼女を知りたい。もっと彼女の心に触れたい……そう思うたびその少女の魔法使いの力になった。 108
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-27 22:05:59
     カラカの好奇心はいつか尽きてしまうだろうか? それはすでに物語の外の話。だが、二人はこの上なく……幸せそうだった。 109

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