不幸の猫ss

てい @orztee

「拾っちゃ、ダメですよ」 路上に打ち捨てられた段ボール箱から鳴き声が聞こえた気がして、覗き込んでいる時に、後ろから声がした。振り向くと、三つ編眼鏡の後輩だった。 「最近、流行ってるんですよ、『不幸の猫』。不幸の手紙の猫バージョン。質が悪いですよね。人の優しさにつけこむんです」

てい @orztee

「不幸の手紙は、受け取ったら次の人に出さなきゃいけないじゃないですか。不幸の猫は、拾ったらまた捨てなきゃいけないんです」 私が顔をしかめると、後輩は口元に手を当てて笑った。 「だから、拾っちゃダメですよ、先輩」 私はまた段ボール箱を見つめる。不幸の猫とやらは本当にいるのだろうか。

てい @orztee

「しかし、それだと『不幸の猫』と言うよりも、不幸『な』猫だね」 私が言うと、後輩は三つ編みを揺らして、くつくつと笑った。 「流石、先輩。面白いです、愉快です」 私はまた眉を顰め、躊躇わずに段ボール箱を抱える。不幸になどならないし、させもしない。ちらりと覗いた丸い眼に、そう呟いた。