古鷹青葉を見守る衣笠さんbot #22

更新二十二回目のまとめです。 オリョール海のボス艦隊と交戦する第六戦隊。その誤算とは。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

日が傾き少し薄暗くなってきたオリョール海の深部。私たちはあらかじめ定めた座標で水上偵察機の帰還を待っていた。数時間前、私たちは敵主力打撃群がいると想定される方向を中心に全4機の索敵機を放射状に放った。いずれかの索敵機が敵艦隊を発見すればその情報を持ってここに戻ってくるはずだった。

2014-05-06 21:50:39
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

視認できる距離まで近づいて敵の情報を探らなければならないため、偵察機の未帰還は珍しいことじゃない。水上偵察機の妖精さんは装備一つ一つに付属する存在らしく、個体差がなかったり皆で意識を共有している節があるなど人間のような死の概念はないらしい。それでも私は何か嫌な予感を拭えなかった。

2014-05-06 21:56:30
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

目の上に手をかざして空を注視していた青葉がその手を下ろして言った。 「偵察機は戻らなそうですね……。進撃しましょう。放射状に索敵機を向かわせた中心方向に向かいます」 了解、と応えた艦娘たちが前進し始める。今度こそ止めるべきだと叫ぶ自分の心に蓋をして、私もそれに続く。

2014-05-06 22:06:11
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

その悪い予感が現実のものになるのに、そう長い時間はかからなかった。敵艦隊の影を認めて弾着観測射撃のために放った水上偵察機が、ことごとく敵の艦上戦闘機に撃墜されたのだ。敵の艦隊には、空母ヲ級がいた。今までこちらの偵察機には見向きもしなかったはずなのに。

2014-05-06 22:12:24
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「なんで……そんな……」 予想外の事態に20.3㎝連装砲を抱えた青葉が立ち尽くす。敵主力打撃群の編成は戦艦ル級、重巡リ級elite、空母ヲ級、雷巡チ級、雷巡チ級、軽巡ト級の六隻による輪形陣。水上偵察機の報告で狙いを修正する弾着観測射撃が使えれば苦にもならない相手のはずだった。

2014-05-06 22:16:37
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弾着観測射撃のシステム自体、大本営から通達が来て実施するのは今回の戦闘が初めてだ。私たちの出撃は第六戦隊任務達成の達成とこの新しい試みのテストも兼ねていた。けれどこの事態は誰も想定していなかった。そして、呆然とする私たちの頭上にヲ級から放たれた敵の艦上機が次々と襲いかかってきた。

2014-05-06 22:23:13
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「青葉!」 青葉に声を掛けるけれど、自分の『失敗』に気を取られている青葉の耳には届かない。 「対空戦闘用意ッ!輪形陣組めッ!」 旗艦の青葉に代わって二番艦の加古が号令を下し、その声で青葉も正気づいた。単縦陣から輪形陣に陣形を組み直し、12㎝高角砲と25㎜高角機銃を空に向ける。

2014-05-06 22:29:48
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

空を覆うように敵の艦載機が飛来してくる。こちらに艦上戦闘機はいないのであの機影はすべて雷撃機と爆撃機か。思わず身震いがする。ようやく輪形陣を組み終わった時、敵艦載機の攻撃の第一波が襲ってきた。最初に爆撃機が水平爆撃で爆弾を投下してくる。命中率は低いが敵の本命はこの後だ。

2014-05-06 22:36:29
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

水平爆撃で投下された爆弾を回避するために艦隊が各個に回避運動をとる。轟音と共に私たちの周囲のそこかしこに水柱が上がるが、敵艦載機の飛んでいるルートをよく見ればこれは対して怖くない。けれど、回避行動を繰り返して体勢を崩したところを狙い澄まし、敵の爆撃機が急降下してくる!

2014-05-06 22:41:18
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「二時方向から三機、急降下!」 「了解ッ!」 見張り員の妖精さんの報告を受け舵を切る。同時に急降下してくる敵機に向けて高角砲と機銃を乱射するけれど、なかなか当たらない。敵機が爆弾を切り離したのが見えた。間に合うか。機関を全力で回し、落下してくる爆弾から少しでも距離をとろうとする。

2014-05-06 22:46:25
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ドウン! 海面に落ちた爆弾が爆発し、破片が私の艤装や服を切り裂く。鋭い痛みに思わず目をつぶってこらえるけれど、休まず敵の急降下爆撃が続く! 「あうッ!」 その後二回の急降下爆撃を回避した時悲鳴が耳に入った。背後を振り向くと、叢雲の艤装から煙と炎が見えた。直撃を食らったか。

2014-05-06 22:53:56
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それでも叢雲は10㎝連装高角砲を空に向け、ひるまず敵機に向かって撃ち返している。私も他人の心配ばかりはしていられない。再び舵を切り、敵弾を回避する。 「皆、敵機をばらばらに狙って撃っちゃだめ!被弾しそうなコースに乗った機だけを集中して狙って!」 冷静さを保った古鷹ねーさんの声。

2014-05-06 22:59:25
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

高角砲と機銃を今まさに急降下爆撃のコースに乗ろうとしていた敵機に向けて放つ。そのまま突っ込んできてくれれば当てられたけれど、それを嫌ったか敵機がコースを外れて私の上空を通過していく。でもこれでいい。撃墜できなくとも、敵機に爆弾を投下させなければ自分の身は守れるのだから。

2014-05-06 23:04:10
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

爆弾を投下し終わった爆撃機が次々とヲ級の元に戻っていくのが見える。素早く艦隊を見回して被害状況を確認すると、必死の回避行動のおかげで直撃を一発食らった叢雲が小破しただけで後は皆至近弾の破片を食らっただけのようだ。ほっと一息つきそうになるけれど、安心するのはまだ早かった。

2014-05-06 23:09:10
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「11時方向、雷跡3!」 水平爆撃、急降下爆撃の後に続く雷撃機による魚雷攻撃。私は出来る限りの速さで左に舵を切り、魚雷を回避しようとする。舵の効きが遅い。見る見るうちに魚雷が近づいてくる。並んで飛んでくる三本の魚雷のうち私から見て一番左の魚雷が危ない。回避できるか。目をつぶる。

2014-05-06 23:16:27
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

白い雷跡を残して魚雷が私のすぐ右の海面下を走り抜けていった。息つく暇なく次の雷撃機がコースに乗る。雷撃機は一度コースに乗ったら犠牲をいとわずそのまま突っ込んでくるため、とにかく高角砲と機銃を撃ちまくるしかない。弾幕で何機かは撃墜できるものの、生き残った機が再び魚雷を投下してくる。

2014-05-06 23:21:52
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

対空砲火を撃ちまくったおかげで敵機の手元が狂ったか、今度の二本の魚雷は回避しなくても命中しなさそうだった。しかし。 ドズン! 「こんの、変態ヤローがッ!」 爆音とともに聞こえる加古の怒号。思わず見れば、旗艦の青葉をかばった加古の右舷に魚雷が命中していた。加古の右足が水面下に沈む!

2014-05-06 23:28:33
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「加古ッ!」 「加古さんッ!」 古鷹ねーさんと顔面を蒼白にした青葉が叫ぶ。その青葉に手振りで大丈夫だと伝え、加古が敵艦を睨んで言い捨てる。 「嫌なこと思い出させやがって……!」 右舷にやや傾いたものの、傾斜はすでに止まっている。中破相当のダメージ。けれど、戦闘はやれそうだった。

2014-05-06 23:34:01
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

私たちはヲ級の先制航空攻撃をしのぎ切った。加古が中破した他は雷撃機による大きなダメージはなし。けれどこちらの偵察機が落とされ制空権を相手に取られているために弾着観測射撃はできない。こちらの戦術も、敵の戦術も変化している。青葉も動揺しているし、今はとにかくこの場を脱する方が先決だ。

2014-05-06 23:42:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉、と声をかけようとしたその時敵の戦艦ル級と重巡リ級の主砲が火を噴いた。普通初弾が目標に命中することはない。案の定、敵弾は私たちの頭上を大きくそれ、遥か後方に着弾した。敵が照準を修正するまでにもう少し時間がかかるはず。今のうちにと思ったその時、突如私の眼前に大きな水柱が立った。

2014-05-06 23:48:52
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

水柱を上げたのがル級の砲弾だと気付くまでに少し時間がかかった。遅れて恐怖がやってくる。一体何故!? 「あれです!」 吹雪が指さした方向を見る。敵の艦載機の一部がヲ級に帰還せず私たちの上空にとどまっている。どうしてこの可能性に思い至らなかったのか。敵も弾着観測射撃が出来るのだ!

2014-05-06 23:55:01
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「青葉ッ!」 旗艦の青葉に声をかけるが、反応が返ってこない。目の前で加古が雷撃を食らったのを見てショックに襲われ身体が硬直している。まずい。リ級の砲身が青葉の方を向いている。青葉の方に走り寄ろうとするけれど、ル級の砲撃がそれを阻む。その時敵艦に向かって猛然と走り出した艦娘がいた。

2014-05-07 00:03:42
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「古鷹ねーさん!」 私は思わず叫んでいた。一瞬だけ振り返った古鷹ねーさんが私に向かって指を三本突き出して合図する。私がその意図をつかむより前に、敵弾が古鷹ねーさんに殺到する! ドウン!ドウン!ドウン! 次々に襲いくる敵弾を古鷹ねーさんが身をひるがえして回避する。

2014-05-07 00:10:05
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

敵弾はいまだ一発も命中していない。艦載機の報告を見て敵が照準を修正するより古鷹ねーさんが敵艦に近づく速度の方が速いからだ。古鷹ねーさんが走り、跳び、海面を一瞬だけ転がって敵弾を回避する。同時に主砲を撃ちまくって敵艦の注意を惹こうとする。けれど、こんなのいつまでも続くはずがない。

2014-05-07 00:16:57