ボカロのブーム化と原盤権問題

snakefinger(@ugtk)氏の「ボカロのブーム化と原盤権問題」についてのツイートを簡単にまとめました。
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Yuji TANAKA @ugtk

『初音ミクはなぜ世界を変えたのか』著者、柴那典氏と都内某所で密会。ボカロにまつわる情報交換……というか“問題意識”を共有する貴重な時間を過ごせた。と言っても2人の興味はむしろその埒外。音楽ビジネスにまつわるオフレコ話は、同業者同士しか交歓できぬエキサイティングな部分じゃなかろか。

2014-05-08 21:34:47
Yuji TANAKA @ugtk

「ボカロのブーム化」の理由を考察してくと原盤権問題に辿り着く。JASRAC契約では解決できない隣接権部分。クリプトンが元々90年代半ばの業界のサンプリング自粛を背景に、合法的なブレイクビーツ音源輸入元で登場してきたのも運命的で。初音ミクが最初からPD的管理だったのもそれだと思う。

2014-05-09 10:46:53
Yuji TANAKA @ugtk

「ミクとサマー・オブ・ラブ」の件で反射的に抵抗感を感じたのも著作権の部分。90年代にゲーム音楽の脱JASRACの潮流が生まれ、今は約1/3が非信託とか。そんな中でボカロPが率先してJASRACと部分信託を交わしたのが、反ヒッピー的思想だなと思って。既得権アンチではないんだなと。

2014-05-09 10:46:58
Yuji TANAKA @ugtk

聞かれたので要点をまとめて書く。ネットを通じて音楽を届けたい人は黎明期からいた。ナローバンド時代はアクセスすると軽量MIDIデータをブラウザが読み込み、プラグインで再生する方式が普及していた。曲はカヴァー中心、インストで、MIDI職人がシコシコデータ化してカタログを増やしていた。

2014-05-10 00:27:07
Yuji TANAKA @ugtk

そこにJASRACが介入しNiftyのMIDIフォーラムなどに使用料を要求。ネット音楽家対JASRACの構図に。10曲8万円で個人も契約できたが、当然廃れ、よくできたMIDIデータはごっそり消えた。ブロードバンド時代になり、mp3などの高圧縮技術で音声そのものを配信できるように。

2014-05-10 00:27:14
Yuji TANAKA @ugtk

MIDI職人じゃなくてもCDリップしてネットで音楽が送れる時代。当然ネットサービスは著作権違反に配慮し、ようつべもニコ動もJASRACと包括契約を結んだ。しかし詞曲は使えるがCD音源(原盤)はNG。カラオケにも原盤権ある。カヴァーしかできない状況で渡りに船だったのがボカロだった。

2014-05-10 00:27:19
Yuji TANAKA @ugtk

ナローバンド時代はMIDIデータ曲の大半がインストだった。声という最大の武器を得て、ネット音楽はポピュラリティを得た。器楽派から見りゃミクは玩具。物理モデリング時代と違い発音記号も怪しい。だがネットで音楽伝えたい人々には十分だった。今のヤマハNSX-1の商品コンセプトは真にそれ。

2014-05-10 00:27:42
Yuji TANAKA @ugtk

昔鍵盤雑誌のメンボ欄には「当方打ち込み。女性Vo募集」が溢れてた。インストは趣味層にしか届かない。YMO時代ならいざ知らず。未熟だろうが女の子が自曲を歌うことの意味は絶大。作曲家はごく普通に代理ボーカルとしてミクを使った。発声のニュアンスで歌手と喧嘩するストレスからも解放された。

2014-05-10 00:27:47
Yuji TANAKA @ugtk

昔のアマのデモテープには特に歌が酷いものが多かった。素人歌手の力量じゃ妥協の連続。書かれた曲をそのまま歌ってくれるボカロは作曲家の理想だった。音域も気にせず純粋に作曲を探求できる。打込音楽が特殊なものじゃなくなった。その証がボカロを人間がカバーする「歌ってみた」の流行だろう。

2014-05-10 00:27:55
Yuji TANAKA @ugtk

当然、カラオケ店でボカロを歌いたい要望が出てくる。ボカロPがJASRACと契約を結ぶのは整備のため必要なのだろう。使用料に執着なくても、権利保護はしてくれる。しかし、ネット音楽家対JASRACの記憶は癒えなかった。ゲーム音楽のようにJASRAC非信託の流れもすでに生まれてた。

2014-05-10 00:28:02
Yuji TANAKA @ugtk

著作権管理会社に信託すれば、自曲を自分で演奏する度にお金を払う理屈に。LP時代、米国盤に歌詞カードがなかったのは、歌詞掲載料まで本人が取られてしまうから。ゲームする度に使用料払えというJASRACの言い分に、ゲーム会社は反旗を翻して非信託の潮流が産まれた。著作権管理も自ら行うと。

2014-05-10 00:28:08
Yuji TANAKA @ugtk

JASRACはカラオケからは徴収するがネットでは自由に使える「部分信託」を用意した。基本、楽曲権は貸与ではなく譲渡するので、果たして部分信託は可能なのか。「部分信託はできない」と突っぱねてきたから、全信託でカタログを充実させ、JASRACは今日のような巨大勢力になったはずでは。

2014-05-10 00:28:14
Yuji TANAKA @ugtk

ここなんだろな拒絶感あるのは。ボカロが歌いやすいようJASRACに信託した後はもう、メジャーデビューや海外大物とのコラボみたいな、ごく普通の音楽の流行に回収されてしまう。曲もいつしか人が歌うためにアイドル風が主流に。声優のソロと同じじゃんと。これが新しいジャンルの誕生なのかと。

2014-05-10 00:28:20
Yuji TANAKA @ugtk

Jazz Pluginというブラウザをバーチャルシンセ化する技術も登場。再びMIDIデータが行き来し、遠隔地でセッションできる時代に。動画サイトはしばらくはボカロ発表の場として残り、カラオケの登録曲は増えるだろう。でも新しいジャンルはすでに別のところで生まれつつあるのかなと思う。

2014-05-10 00:28:26
Yuji TANAKA @ugtk

著作権(詞、曲)の使用料はJASRACが徴収して契約作家(主に音楽出版社)に配当する。これだと譜面や耳コピを元に、歌ったり、演奏するのが許されるだけ。CD音源(原盤)の使用料は、放送局やレンタル業者から文化庁が徴収して芸団協が預かり、音事京などに決められたパーセントで配当される。

2014-05-10 11:16:59
Yuji TANAKA @ugtk

ようつべやニコ動、DOMMUNEがJASRACと包括契約を結んでいるが、これすなわちレコード音源の使用許可を得たわけではない。著作隣接権を使用料を回収するルートがないためCD音源が使われたらアウト。権利者が主張すればBANされる。でも著作権と違って隣接権は回収→配当に謎が多い。

2014-05-10 11:17:04
Yuji TANAKA @ugtk

JASRACの対抗勢力として、ネット時代を想定して創業した著作権管理会社JRCがあり、著作権だけでなく隣接権(原盤)の権利処理もしてると聞く。しかし原盤主との個別契約は煩雑で、しかも参照例は少なく、実際に預かってるカタログはクラブミュージックなど特殊ジャンルに限定されてるらしい。

2014-05-10 11:17:09
Yuji TANAKA @ugtk

80年にサンプラーが登場した時、英米では初期段階に原盤問題が浮上。英では実演家組合が「演奏家が失業する」と販売差し止め請求。リズムマシンを使う場合は、ドラマーを同席させるなどを法制化。黒いパンク=ヒップホップは盗む芸術だが、RUN-DMC時代から既に原盤使用許可取って使われてた。

2014-05-10 11:17:14
Yuji TANAKA @ugtk

米国にはASCAP(映画系)とBMI(放送系)という2大著作管理会社があり、著作権者への高い配当など自由競争の中でカタログを揃えてきた。だが原盤は隣接権なので業務外で、使いたい場合は原盤主と個別に許可・契約してたそう。マライア・キャリーなんてブレイクビーツに膨大な使用料払ってた。

2014-05-10 11:17:20
Yuji TANAKA @ugtk

日本は90年代までサンプリング整備が遅れてた。だからこそアニメのレコードをブレイクビーツに使うなど、徒花的芸術が花咲いた。しかしこの数年間に発表された作品は、今ではリマスタ復刻できない作品が多い。90年代に欧米で発売された日本人作品も、同様の理由で一部曲が割愛されてたのがわかる。

2014-05-10 11:17:26
Yuji TANAKA @ugtk

欧米ではサンプリングGメンと呼ばれる波形から盗用を割り出す専門業者がいる。洋楽曲の場合、著作権みたく8%程度の使用料では収まらず破産も免れぬ。訴訟事件も数多い。グローバル化の流れで日本でもサンプリング自粛化。そこに表れたのがクリプトンなどの、合法サンプル素材を販売する会社だった。

2014-05-10 11:17:34
Yuji TANAKA @ugtk

今では二次創作が市場を食い荒らすどころか、売上に繋がると権利元が柔軟な姿勢を示す角川のような例も出てきたが、これも初音ミク現象を参照した例。ミクのキャラクターのPD的利用にかなり先進的な考えが想定されてたのは、クリプトンが元々サンプル音源販売会社という点が重要だったのではと。

2014-05-10 11:17:41
Yuji TANAKA @ugtk

@tkmkz 「権利者が主張すればBANされる」と書いてるのは親告罪だから。楽曲処理は個別。セーフユースのリストみたことありますが、1アーティストあたり数曲で、いちいち確認するのも面倒なほど。ニワンゴの大株主エイベックスは、自社の音源使用は概ね認めてるようですね。

2014-05-10 11:33:04
Yuji TANAKA @ugtk

音楽PVのプロデュースもやってるけど、最近はシングルでも作らない例が多い。それに充てる宣伝費がない、流す番組がないのが理由だが。一方欧米では、アルバム全曲にPV作ってたりする。YouTubeで流す映像素材がなければ、そのそもアルバムなんて売れない。音楽不況の考え方も180度違う。

2014-05-10 11:37:44
alessandro_S_T_H_N @devotional_MMXX

@ugtk 英米では、全曲PVを作らないまでも、lyric videoをアップしてるアーティストが結構いますね。一方日本では、積極的にYouTubeにアップするアーティストとそうでないアーティストの差が大きい。「どういう形でもいいから、まず曲を知ってもらおう」という気がない。

2014-05-10 12:00:21