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1931年に『新青年』で探偵作家デビューし、戦後はブラジルの日本語雑誌で探偵小説を発表していた渡辺文子

2013年1月のツイートと、当時調べたいくつかの情報をまとめたものです。 自分のサイトでいつか情報をまとめようと思っていたのですが、それをしないまま1年以上が過ぎてしまったので、とりあえず簡単にでもTogetterでまとめておくことにしました。
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Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

ブラジルの雑誌で日系移民たちが日本語で書いた探偵小説についての記述が、先月発売した細川周平『日系ブラジル移民文学1』(みすず書房)にあってかなり興味深い。ブラジルで日本語で探偵小説を発表した作家の中には、『新青年』に寄稿したこともある作家もいたとか。

2013-01-25 21:11:37
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

1930年代に『新青年』で探偵小説を発表していた渡辺文子という作家が、1935年にブラジルに移住し、1948年創刊のブラジルの日本語雑誌『よみもの』でも探偵小説を発表していたとの記述(細川周平『日系ブラジル移民文学1』)。(訂正再ツイート)

2013-01-26 00:43:55
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

渡辺文子(ブラジルでは北島文子)がブラジルの日本語雑誌で1940-50年代に発表していた探偵小説は、『新青年』や早川書房の出版物に載っていても不思議がないような作品だという。(細川周平『日系ブラジル移民文学1』参照)

2013-01-26 00:17:31

細川周平『日系ブラジル移民文学1』(みすず書房、2012年12月)、p.84より引用

  • 「『よみもの』誌でもっとも活躍した作家が、戦前『新青年』に寄稿したこともある北島文子」
  • 「『よみもの』にはわかっているだけで十数本の作を載せ、非常に活発な活動がうかがえる。「世界怪奇探偵実話」という連載では、『新青年』や『ハヤカワ・ミステリー』にあっても不思議がないような作が並んでいる。それはブラジルに関する系列とそうでない系列に大別され、前者はさらに移民が登場する作とそうでない作に分けられる。」

同書によれば、『よみもの』は1948年3月に創刊され、1952年まで刊行された。渡辺文子(北島文子)の作品は掲載順に、「ダヴィルソン事件」、「移民船怪異を乗せて」、「カインの末路」、「インスブルグの瓦斯地獄」、「ロスアンゼルスの家政婦」、「まにら丸異聞」、「沖縄の飛行隊の妻」などがあるという。詳しくは同書をご覧ください。

Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

ただ、ブラジルの日本語文学界では純文学が主流でミステリ小説への評価は高くなく、渡辺文子(ブラジルでは北島文子)はブラジルの文芸サークルともあまり接触がなかったそうだ。「ブラジル在住の日本人女性ミステリー作家というほうが似合っている」との記述。(細川周平『日系ブラジル移民文学1』)

2013-01-26 00:20:41
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

『新青年』作家渡辺文子(北島文子 / 北島府未子)は細川周平『日系ブラジル移民文学1』によれば自費出版で『北島府未子作品集』(1964年)というのを出しているそうで、なんと検索してみると国会図書館にも所蔵されている。探偵小説も収録されているだろうか? これはチェックせねば。

2013-01-26 00:24:47
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

ん? 先ほど言及した『北島府未子作品集』は、「ブラジル移民文庫」 http://t.co/HaHyOk1Q というサイトでpdfで公開されているようだ→ http://t.co/AtC3gSAI

2013-01-26 00:32:55

『北島府未子作品集』(1964年)収録作一覧(13篇)

  • 佐久間旅館
  • ラドラ
  • えんだん
  • 沖縄飛行隊長
  • ほうたい
  • カステラ
  • ネブリーナ
  • 金髪に気をつけろ
  • 人生のあや模様
  • 銭(ぜに)
  • おいちよゆるせ
  • まにら丸異聞
  • 運命のダグラス機

同じサイトで読むことができる『コロニア小説選集』第1巻(コロニア文学会、1975年7月)には北島文子の「なすび」(1950)と「ロテリアを買う女」(1954)が収録されている。

前山隆による『コロニア小説選集』第1巻の巻末解説では、北島文子について以下のように書かれている。

  • 「ついでに北島文子に触れておく。彼女は戦前、日本の『新青年』誌に作品を発表したこともあるセミ・プロ女流作家であり、『よみもの』誌の創刊号から文芸部門を担当していた。(略)彼女は生涯推理小説家・スリラー作家として娯楽読物を書くというプリンシプルに徹し、『よみもの』誌にはほとんど毎号なにかを発表していた。また彼女自身が編んだ生涯唯一の作品集『北島府未子作品集』(サンパウロ刊・一九六四年)にもそのような作品をのみ所収している。」
  • 同じ解説では『北島府未子作品集』について「娯楽本位の推理小説集」とも書いている。一方、『コロニア小説選集』第1巻収録の「なすび」と「ロテリアを買う女」はそういうタイプの作品ではなく、純文学的、私小説風な作品で、「泌々した中年女性の哀しみ、ひそやかな夢と虚栄を鳴った心境小説の佳品」だとのこと。
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

『北島府未子作品集』の末尾に付された著者紹介を引用→「(1932年)四月、雑誌『新青年』の新人紹介に入選爾来一九三五年渡伯まで同誌に推理小説を発表」。さっき『キング』でも小説を発表と書いたのは私の間違いで、『キング』には随筆などを寄稿していたようです。

2013-01-26 00:38:16

『北島府未子作品集』(1964年7月)巻末の「著者略歴及び筆歴」から簡単にまとめる

  • 1906年3月6日、横浜市生まれ。
  • 1929年2月、ブラジルに渡る。
  • 1931年4月、『新青年』の新人紹介に入選。以来、同誌に推理小説を発表。(※1932年となっているが、1931年が正しい)
  • 1931年4月末または5月初め、日本に帰国。(※これも1932年となっているが、のちに言及する随筆「私のすきな作家」によれば、1931年が正しい)
  • 海外興業株式会社の雑誌『移民地事情』の編集に携わる。(この雑誌は1927年~1939年刊行)
  • このころ、「キング、日の出、令女界、若草、婦人サロン、其他の雑誌に随筆、雑文、中南米の文学紹介を書く。」
  • 1935年10月、再度ブラジルに渡る。結婚して北島姓に。以来11年は、育児のため筆は執らず。
  • 1946年以降、ブラジルの日本語雑誌や新聞に寄稿。「時折日本の諸雑誌に寄稿」。

そして細川周平『日系ブラジル移民文学1』によれば、この作品集刊行の翌年、1965年に死去。

1931年、『新青年』で探偵作家デビュー

『新青年』「新人十二ヶ月」(実際は8人のみ)

  • 1931年1月号 米田三星「生きてゐる皮膚」
  • 1931年2月号 城戸シュレイダー「決闘」
  • 1931年3月号 高山敏雄「呪死の渦」
  • 1931年4月号 ★渡辺文子「第二の復讐」
  • 1931年5月号 戸田巽「第三の証拠」
  • 1931年6月号 古泉新「運ばれた拇指紋」
  • 1931年8月号 伊東鋭太郎「弓削検事の実験」
  • 1931年11月号 光石太郎「十八号室の殺人」(のちの光石介太郎)

渡辺文子「第二の復讐」について、編集後記より水谷準(M・J)のコメント

  • 本号に集めた創作は多く新進で、その面白さもまた一段と自信するが、新人十二ヶ月の四なる渡邊文子氏は、南米サン・パウロの珈琲園に在る若き御婦人でゐられるさうな。新青年初号からの熱心な愛読者。この度、新作数編を送られた中より、「第二の復讐」一篇を頂いた。今後の進展を期待するや切である。
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

『新青年』で探偵作家デビューし、戦後はブラジルで日本語で探偵小説を発表していたという渡辺文子。光文社文庫の『「新青年」傑作選』に作品が収録されていることに今ごろ気付いた。この本では経歴不明となっているが、昨日の本によれば1906年横浜生まれ、1965年サンパウロにて没だそうだ。

2013-01-26 14:03:23

ツイート内の「昨日の本」というのは細川周平『日系ブラジル移民文学1』のこと。
ミステリー文学資料館編『幻の探偵雑誌10 「新青年」傑作選』(光文社文庫、2002年2月)には渡辺文子の「地獄に結ぶ恋」(『新青年』1932年9月号)が収録されている。同書では渡辺文子について以下のように紹介されている。

  • 「経歴不明。一九三一(昭和六)年の「新青年」で連続企画として毎月行っていた新人紹介の四番手として、四月に「第二の復讐」でデビューした。編集後記によれば南米のサンパウロの珈琲園に在住と紹介されていた。たしかに「第二の復讐」もサンパウロを舞台にした異色作である。女流作家として期待されたが、その後は三作ほど発表したに止(とど)まった。」

なお、このツイートの数日後、渡辺文子について調べるためにミステリー文学資料館に行ったところ、偶然にも『幻の探偵雑誌10 「新青年」傑作選』の編者氏にお会いしたので、細川周平『日系ブラジル移民文学1』に渡辺文子の詳しい経歴が載っているということをお伝えした。

『新青年』の渡辺文子の寄稿
小説

  • 1931年4月号「第二の復讐」
  • 1932年9月号「地獄に結ぶ恋」
  • 1933年2月号「復讐の書」
  • 1934年3月号「まむぜるの幻」
    よみもの
  • 1933年12月号「ガンモ先生の哲学研究」
  • 1935年9月号「聖ヨハネ祭」
  • 1936年9月号「姦通を聴く男」

寄稿一覧は細川周平『日系ブラジル移民文学1』、p.164より。ただしそこでは「第二の復讐」(1931年4月号)が漏れている。

1932年、雑誌『植民』でも探偵小説を発表

Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

日本植民通信社の雑誌『植民』(1922年創刊)の11巻2号(1932年)に渡辺文子の「探偵小説 葉巻の殺人」という作品があるのを和歌山市民図書館移民資料室 http://t.co/XebCsswA のデータで発見。『新青年』作家の渡辺文子と同一人物だろう。

2013-01-26 14:28:46
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

雑誌『植民』11巻(1932年)7号および8号に渡辺文子「復讐怪奇譚 夜開く花」があるのを発見。ほかに、7巻12号「読者としての私の希望」以降、エッセイの寄稿複数回。(和歌山市民図書館移民資料室のデータ http://t.co/XebCsswA より)

2013-01-26 15:03:06

雑誌『植民』の渡辺文子の寄稿

小説類

  • 1932年 11巻2号「探偵小説 葉巻の殺人」
    編集後記(「編輯室」):文芸欄には、在伯三年の閨秀昨(ママ)家渡邊文子嬢の『葉巻の殺人』がある。バックをブラジルに取った探偵小説で、素敵に面白いものである。
  • 1932年 11巻7号および8号「復讐怪奇譚 夜開く花」

随筆類

  • 1928年 7巻10号「見えざる力」◆
  • 1928年 7巻12号「読者としての私の希望」
  • 1929年 8巻4号「婦人ホーム 寄港地の印象」
  • 1929年 8巻11号「サンパウロを凝視して」◆
  • 1929年 8巻12号「洋上を往く」
  • 1930年 9巻4号「女性団結の威力よ!!異境に咲く佳話」
  • 1931年 10巻1号「ブラジル女学生の横顔 レヂストロ行回想録」
  • 1931年 10巻2号「栄冠目指すパイオニア レヂストロ行回想録」
  • 1931年 10巻7号「伯国サンパウロ風景」★
  • 1931年 10巻12号「伯国女学生の明朗さ」★
  • 1932年 11巻1号「ブラジル学生の学費調べ」
  • 1932年 11巻3号「ブラジル 在外婦人就職線」
  • 1932年 11巻8号「近頃暑くないお話」

◆ 和歌山市民図書館移民資料室のデータの記載漏れ
★ 和歌山市民図書館移民資料室の欠号
(国会図書館のデータにより補った)

【2014年5月11日追記】
和歌山市民図書館移民資料室のサイトで目次情報が見られるもう一つの雑誌、『ブラジル』にも少々気になるタイトルを見つけたので、一応メモしておく。名字が一緒だというだけだが。

『ブラジル』

  • 1936年 10巻8号 渡邊西湖「怪奇よみもの ドオナ・ルイザの手相」
  • 1936年 10巻10号 渡邊西湖「現代伯国捕物帖 アングラ・ドス・レイスの活劇」

1932年、雑誌『探偵クラブ』にも寄稿

Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

ネット上を検索してみると渡辺文子は戦前の『探偵クラブ』にも寄稿していたようだ。『探偵雑誌目次総覧』はさすがに持っていないので……、今度図書館にいったらチェックしてこないと。

2013-01-26 15:07:14

覚えていないが、おそらくはネット上の古書販売サイトで、『探偵クラブ』に渡辺文子の名前を見つけたものと思う。このツイートの数日後に山前譲編『探偵雑誌目次総覧』をチェックした。渡辺文子は以下の2つのみ。ほかの探偵雑誌には寄稿していないようだ。

  • 小説「黒子」『探偵クラブ』5号(1932年10月)

  • 随筆「私のすきな作家」『探偵クラブ』7号(1932年12月)

  • 随筆「私のすきな作家」には「明ければ一昨年――五月二日、サン・パウロから帰つたばかりの私が、始めて、「新青年」を訪ねた時でした」との記述があるので、ブラジルから日本に帰国したのが1931年の4月末~5月初めであることが分かる。

  • 『新青年』編集部を初めて訪れた渡辺文子を迎えてくれたのは、当時編集部にいた荒木十三郎だった。渡辺文子は荒木に対して、「まだお若い方らしいんですけど、橋本[五郎]さんて方、よく書いてらつしやいますね」と言ってしまうが、のちに荒木十三郎と橋本五郎が同一人物だと知ってきまりが悪い、というエピソードを紹介するエッセイ。

  • 編集後記には、「橋本五郎氏の横顔は、海野[十三]、角田[豊]、渡邊の三氏に依頼しました。海野氏は麻雀敵、角田氏は同郷の友、渡邊氏は、渡邊氏にとつて橋本氏は、日本に帰つてからはじめて友人といふいはれある人、三様の面の比較又面白からうではありませんか。」とある。

戦後、1950年に日本の雑誌『探偵倶楽部』に寄稿(北島文子名義)

『探偵雑誌目次総覧』で結婚後の名前である「北島文子」を調べてみたところ、以下の1つが見つかった。

  • 小説「ダニューブの悲劇」『怪奇探偵クラブ』1巻2号(1950年10月)

『探偵雑誌目次総覧』では、渡辺文子と北島文子は同一人物扱いにはなっていない。
『怪奇探偵クラブ』はのちに『探偵クラブ』、さらに『探偵倶楽部』と改題された。

  • 「ダニューブの悲劇」に付されたあおり文句「ブルガリヤの首都ソフィヤに起った、怪事件。トランク詰の美女の死体に絡まる凄絶な情痴犯罪の真相は……」
  • 編集後記(「編輯だより」)には以下のようにある。「新進作家としては、今回は、魔子鬼一、北島文子両氏の力作を掲載しましたが、戦後、はなばなしく登場された探偵作家が、毎号力作を寄せて下さることは、本誌の一特長として認められて居ります。次号にも大力作を用意してあります。」
  • 北島文子が戦後登場した新進作家とされているようだが、同時期に日本のほかの雑誌ですでに探偵小説を発表していたのだろうか。『探偵雑誌目次総覧』で確認できるのはこの1作だけである。『北島府未子作品集』巻末の略歴にはこの時期、「時折日本の諸雑誌に寄稿」とある。
  • 北島文子は同時期にブラジルの総合娯楽雑誌『よみもの』に「世界怪奇探偵実話」を連載していたそうなので、ひょっとしたらこの「ダニューブの悲劇」も『よみもの』に掲載されたものだろうか。

渡辺文子の夫、北島弘毅について

サンパウロ市の日本語新聞『ニッケイ新聞』の2013年11月の記事で渡辺文子の夫、北島弘毅への言及がある(渡辺文子にも言及がある)。

渡辺文子とは関係ない情報いくつか

Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

細川周平『日系ブラジル移民文学1』によれば、ブラジルの日本語小説で通俗化が進んだのは80年代以降。雑誌『コロニア詩文学』(1980-98)にもミステリ小説が登場したが、「大方は出来事に重きが置かれ、犯人探しやトリックを楽しませる作は特殊な技巧を要するせいか少ない」(p.135)。

2013-01-26 01:00:53
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

細川周平『日系ブラジル移民文学1』には、谷崎潤一郎の実妹である林伊勢が1933年に、ブラジルの日本語新聞『伯剌西爾(ブラジル)時報』の小説懸賞募集で入賞しているといった話も。

2013-01-28 21:07:49
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

1991年のサントリーミステリー大賞で佳作に選ばれた醍醐麻沙夫が、それ以前にブラジルの日本語雑誌『コロニア文学』で小説を発表していたというのを件の本で知った。まあ、検索してみたら醍醐麻沙夫のウィキペディア記事にもこのことは書いてあったけど……。

2013-01-28 21:39:35
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

日系ブラジル移民文学についての件の本でまたもミステリーファンには見逃せない情報を発見。広橋勝造という人が2008年にブラジルを舞台にした大藪春彦風のサスペンス小説を2冊自費出版しているという。『昨日(かこ)からの電話(れんらく)』と『微生物』。

2013-01-28 22:29:28
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

昨日ツイートした、ブラジルで日本語でサスペンス小説を新聞連載し自費出版した広橋勝造氏について。検索してみたら氏の2冊の自費出版作品を紹介しているページがありました→ http://t.co/zSUrk7er http://t.co/8HJbYLsp

2013-01-29 22:46:54

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