ヲヅデルセン童話「しかインベスと きょうは聖母の日!」 森のなかのしろいおうちに、うつくしい聖母がくらしていました。聖母のおしごとは、「チーズ」というおちちがはいったケーキや、かぼちゃのパイをつくることです。聖母には、大きなかぞくと、小さなかぞくがいました。
2014-05-11 12:39:03大きなかぞくは、かみのけがまっくろで、てが大きくて、ときどきまちへいって、しかくいパイをころがしたり、しかくいパイをそろえたりするのがおしごとです。小さなかぞくは、聖母とおなじ、ちゃいろのかみのけで、聖母のパイをたべるのがすきで、ペコといいます。
2014-05-11 12:39:25ペコにはふしぎなともだちがいました。しかインベスといって、つのがかたほうおれていて、聖母とペコのことがだいすきで、聖母のおちちをいただくのがゆめです。しかインベスは、ときどき聖母のおうちにやってきて、聖母のためにおさらをあらったり、フォークをあらったり、コップをあらったりします。
2014-05-11 12:39:46きょうは、聖母がまちにかぼちゃのパイをうりにでかけているので、しかインベスはペコとおるすばんをしていました。しかインベスとペコが、しちみとうがらしをななつにわけるあそびをしていると、そこへ、ただいまといって、大きなひとがかえってきました。
2014-05-11 12:40:03しかインベスは、できるだけれいぎただしく、「ごきげんよう」と大きなひとにあいさつをしました。「きょうは、おるすばんをしにきました。」としかインベスがいうと、「おまえたちは、なにをしているんだ。」と大きなひとがふしぎそうにたずねました。
2014-05-11 12:40:21「しちみとうがらしを、ななつにわけています。ペコさまは、みかんのかわをあつめるのがおじょうずです。」と、しかインベスがていねいにこたえると、大きなひとが、みかんのかわばかりのやまをみて、「ペコはてんさいだ。」とほめました。
2014-05-11 12:40:35大きなひとは、聖母がいないことをよくたしかめると、ペコをひざのうえにすわらせて、しかインベスをじぶんのむかいにすわらせました。そしてこういいました。「おまえたち、きょうは母の日だ。母の日というのは、かいとのおいわいをする日だ。そこで、ふたりにやってもらいたいことがある。」
2014-05-11 12:40:57「かいとのすきな、おいしいケーキをさがしてくること。かならず、ひぐれまでに、ケーキをもってかえってくるように。」大きなひとはそういうと、大きなてで、ペコの小さなあたまをなでました。大きなひとは、聖母のことを「かいと」とよびます。
2014-05-11 12:41:12しかインベスは、「わかりました。聖母のために、かならずまっとうします。」といって、しちみとうがらしをもとどおりにまぜあわせると、小さなペコをせなかにのせて、ケーキをさがしに、まちへでかけました。
2014-05-11 12:41:52てくてく、てくてく。ペコをせおったしかインベスが、森をぬけてまちにでると、きれいなケーキがたくさんおいてあるおみせをみつけました。ここはゆうめいな、ドリアンおばけのおみせです。「ごめんください。」ペコとしかインベスがおみせにはいると、ドリアンおばけが大きなケーキをやいていました。
2014-05-11 12:42:13「こんにちは。ぼくたちは、おいしいケーキをさがしているのです。ひとつ、わけてもらえませんか。」としかインベスがいうと、ドリアンおばけは、「ケーキがほしければ、おだいをいただかないと。おかねがないなら、ここではたらきなさい。」
2014-05-11 12:42:32しかインベスはペコをおろすと、おさらをあらったり、フォークをあらったり、コップをあらったりしました。だけど、これではひぐれまでにケーキをもらえそうにありません。ペコは、おみせのまえで「おいしいケーキは、いりませんか。」と、大きなこえでおきゃくさんをよびました。
2014-05-11 12:42:57ペコがとってもかわいいので、あっというまに、おきゃくさんが、たくさんたくさんやってきて、おみせは「だいはんじょう」です。おさらやフォークやコップも、ちょうとっきゅうであらわないと、おいつきません。しかインベスは、いまだかつてないはやさで、たくさんたくさんあらいものをしました。
2014-05-11 12:43:15ドリアンおばけはおおよろこびで、すきなケーキをひとつもっていくよういいました。「おちちのケーキをください。」「いちごのケーキをください。」しかインベスとペコは、ちがうケーキをゆびさしました。「聖母は、おちちのケーキがすきです。」「かいとさんは、いちごがだいすきだよ。」
2014-05-11 12:43:34ふたりは、どちらのほうが聖母がよろこんでくれるか、わからなくなってしまいました。「うーん、うーん。」ふたりで、おでこをくっつけて、こまっていると、ドリアンおばけが「たくさんはたらいてくれたから、サービスよ。」といって、まんまるのおちちのケーキに、いちごをのせてくれました。
2014-05-11 12:43:51「聖母のぶんと、ペコさまのぶんと、大きなかたのぶん。」「それから、しかちゃんのぶん。」ケーキのうえには、いちごがよっつ。ちょうどぴったりです。「やったあ。」「やったあ。」ふたりは、おおよろこびで、ぴょんぴょんとびはねました。
2014-05-11 12:44:15ドリアンおばけにていねいにおれいをいって、ペコは、おちちのケーキをだいじにもちました。しかインベスは、ペコをせなかにのせました。「さあ、はやくかえらないと、ひぐれになっちゃう。」「ハイヨー、しかちゃん。」しかインベスは、はやあしで聖母のおうちをめざしました。
2014-05-11 12:45:13「ケーキ、ケーキ、おいしいケーキ。」しかインベスのせなかで、ペコがたのしそうにうたっています。てくてく、てくてく。しかインベスが、ケーキをこわさないようはやあしであるいていると、きゅうに、めのまえに、しろいひとがあらわれました。ほらふきレモンのせいれいです。
2014-05-11 12:45:35「やあ、しかインベスくん。きみ、なにか、たべるものをもっていないかい。ぼくはおなかがすいて、しにそうなんだ。」ほらふきレモンのせいれいは、こまったかおでそんなことをいいました。しかインベスは、うっかり、「ぼくはケーキなんてもっていません。」とこたえてしまいました。
2014-05-11 12:46:07ほらふきレモンのせいれいは、「ケーキ、ケーキ。」とうれしそうにいいました。「きみ、ひときれでいいんだ。ぼくにケーキをわけてくれないか。ケーキをたべないと、ぼくはきっと、しんでしまうよ。」しかインベスは、うそだ、とおもいました。
2014-05-11 12:46:21ところが、ペコが、「しんでしまうのは、かわいそう。」といって、しかインベスのせなかで、なきはじめました。ペコは、聖母のおこさまなので、とてもじゅんすいで、じひぶかいのです。だけど、このケーキは、聖母のものなので、ひときれだって、あげることはできません。
2014-05-11 12:46:39しかインベスは、こまって、こまって、いちごをひとつだけ、あげることにしました。ペコが、ケーキのはこのなかから、いちごをひとつとりだすと、ほらふきレモンのせいれいは、ものすごいはやさで、いちごをとっていきました。げんきそうです。
2014-05-11 12:46:57「げんきになって、よかったね。」とペコがえがおになったので、しかインベスは、「ペコさまがげんきになって、よかった。」とおもいました。「さあ、もうひといき。」てくてく、てくてく。いそがなければ、もうすぐひぐれです。
2014-05-11 12:47:10「ただいま。」「ただいま。」ペコとしかインベスが、しろいおうちにかえってくると、大きなひとがそわそわしながら、まっていました。やくそくのひぐれまでに、ちゃんとまにあったので、大きなひとも、ペコも、しかインベスも、えがおになりました。
2014-05-11 12:48:26大きなひとは、てに、あかいはなをもっています。きっと、聖母へのプレゼントにちがいありません。ふたりといっぴきは、聖母のかえりを、いまか、いまか、とまちました。なんだか、こころがそわそわします。
2014-05-11 12:48:44