松田未来さんの漫画のコマ割りについてのお話

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松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

とあるコミカライズものを見てちょっと気になった事を一つ。曲がりなりにも漫画ばっかり描いていると、コマ割について考える機会が増えるのですが、これって漫画独特の技術なんですよね。

2010-11-07 02:21:34
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

だもんだから、他分野から来た人が描いたものは意外とあっさり判別できてしまいます。イラストレーター出身とか、アニメーター出身の方とか。描く事に重点が置かれて、読む事に気が回っていない感じでしょうか。これは初心者の方のネームに共通する事でもあります。

2010-11-07 02:25:17
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

あくまでも一般論ですけど、絵描きから転向した人のコマ割りは「絵」を優先します。決めポーズ・カッコいいメカ・顔のどアップ、こんなところでしょうか。では漫画家はといわれると、「そのシーン(コマ)の意味」を最も重要視します。

2010-11-07 02:28:40
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

そうするとどういった違いが出るか。まず一つには読者の印象の残り方が違ってきます。前者は絵が印象に残ります。後者は出来事が心に残ります。これは大きな差になります。

2010-11-07 02:30:13
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

漫画というのは「コマ割で時間を誘導する形式の物語」なので、絵が優先されるとコマの一つ一つの意味が薄れてしまいます。例えばイラスト系の人に顕著なのが横長のコマ。

2010-11-07 02:32:28
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

これはとりあえず割ってみましたという一番安直な割り方です。でも安定していて構図とかフキダシの位置とかをあんまり気にしないで済むのでついつい使ってしまうのです。

2010-11-07 02:34:29
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

自分でも、このコマ割をしたときには警報が鳴ります。他に出来る形はないのか、この形でなければいけない訳は?というふうに。

2010-11-07 02:35:40
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

横長のコマが何故安定するかというと、漫画の読み方に理由があります。みなさん漫画を読むときに意識していないと思いますけど、漫画は<右から左><上から下>に読んでいくという鉄則があります。普段気にしないのは漫画家がそう読むように誘導しているからです。

2010-11-07 02:39:12
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

<右から左><上から下>になる理由はひとえに日本語の書き方がデフォになっているからです。縦書きの日本語の文章は上から読んで、次の行は左ですから。台詞の読み方と、コマの流れは一致しているから読みやすいのです。

2010-11-07 02:41:14
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

ただ、セオリーどおりに右から左が続くと読んでいる人は飽きてしまいます。だから、漫画家はコマ割に変化をつけて読んでいる人の視線を揺さぶろうとするのです。

2010-11-07 02:42:42
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

でも絵描きに特化した人はそれが感覚的に出来ません。どうしても絵としてのおさまりやアピールを優先させるからです。その意味では横長のコマは磐石に見えるわけですね。

2010-11-07 02:44:29
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

逆に漫画家はコマを割る事で一種の「テンポ」を作り出します。横長のものを縦に分割すればリズムが生まれますし、縦長のコマを入れれば「転調」させることも出来ます。そうやって時間の流れを操って、場面場面のメリハリを作るわけですね。

2010-11-07 02:46:58
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

同時にコマの「形」と「大きさ」には必ず意味があります。一般に形には演出意図や視線の誘導・固定が、大きさにはそのページでのそのコマの「見て欲しい度」が関連していると思っていいです。このとき気をつけなければいけない点が一つ。

2010-11-07 02:49:54
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

必ず見開き単位でその大きさの決定をすること。なぜかといいますと、漫画はページを開いて読むものだからです。その意味では、携帯漫画は漫画の約束を大きく逸脱した別のフォーマットで描かれなければいけないし、従来の漫画を1ページづつ読んでしまう事の残念さが分かっていただけると思います。

2010-11-07 02:52:49
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

Pixivの漫画投稿フォームもその意味では落第です。1ページづつ読まされる上に、縦に送られる画像…漫画の読み方を生理的に二重に間違えています。

2010-11-07 02:55:32
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

話を戻すと、そのコミカライズのページを見たとき今まで説明した違和感が全てその見開きには入っていました。ぶち抜きのキャラクターが見開きの中に二つもあり、それぞれのコマがどういう意図でその形になったのかがまったく分かりません。

2010-11-07 02:59:07
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

ぶち抜きというのは、コマをまたいでキャラクターが前面に描かれる事です。そのキャラクターの初登場時などに良く使われます。全体を一度に見れて、なおかつその見開き出の存在感をマックスに出来るからです。

2010-11-07 03:00:37
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

それを二つやってしまうというのは、読んでいる側にとって「どっちを見ればいいの」というブレーキになります。それではぶち抜きの意味がありません。例えばページ数の関係で一つの見開きで二人紹介しなければならないとしたら演出方法を変えるべきなのです。

2010-11-07 03:02:56
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

そして、遠景→中景という平凡な場面の流れはともかくとして、そのコマ割が先ほど言った「磐石の横長」が並んでいるだけなので、もうその時点でリズムが一定になり、ぶち抜きのキャラだけがぽつんと浮いている、そういう構図になってしまっています。

2010-11-07 03:09:08
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

そして隣のページも全て「横長」のコマ割です。縦に割られているコマは一つもありません。つまりこの見開きを読んでいる読者はコマを読む流れを一方向にしか味わえない事になります。ならばその分キャラが目立つかというと、先ほど言ったようにぶち抜きの多用でそれすら台無しです。

2010-11-07 03:13:51
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

本来ならこれは「漫画になっていない」レベルで編集側の指摘があってしかるべきなんでしょうけど…能力か時間か、あるいはその両方がなかったのかもしれません。

2010-11-07 03:26:15
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

コマ割の技術、それは読む人の視線を考えて描くものです。描く人間の都合ばかり出たものはコマ割とは言いません。これから漫画家を目指す皆さんにはぜひ「読み手の視線」を意識したコマ割を考えていただければと思います。幾つかのセオリーを踏まえる事で、それは実現可能なのです。

2010-11-07 03:32:54
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

昨日のコマ割についてのツイートで興味を持った方、是非こちらも見ていただきたい。http://bit.ly/9108We ネームそのものを例示しているため非常に分かりやすいです。漫画家がいかに狙い・意図を持ってこまを割っているのか理解していただけると思います。

2010-11-08 01:03:02
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

4パートに分かれていますので、順番に読んで最後の4番目の「ネームの修正意図」についての解説ページを読めば目からウロコが落ちること請け合いです。

2010-11-08 01:05:52
松田未来 コミティア146 C50b 「翼駆人アラン 第Ⅵ章」 @macchiMC72

それから、同じシナリオでもネーム描く作家次第でここまで雰囲気が変わるのかという貴重な一例ともなっています。ネームと言う作業パートがものすごく重要である事が理解しやすいですよ。

2010-11-08 01:08:30