『当たって砕けて不連年』＃０～４

天界ボラヴル@4月ごろ再開 @vorrrrrrrra_e

『当たって砕けて不連年』 ＃０ http://t.co/a3mMeRqQtl

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中間考査一週間前ということもあり、最近妙に小学生の列に車が突っ込む事故が多いので、裏じゃきっとこんなことがあったとでも妄想してみる。もちろんこれは間違っても現実において起きたりはしないし、しくじっても実在する人物や組織に関係ないし実体験や史実に基づくものではない。①

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あくまでも妄想で、自由帳の中の秘め事である。こんなことを授業中に考えはしないし、テスト勉強という唯一の授業の復習の時間をつぶそうと狡猾に画策してる訳じゃない。単なる息抜きだ。すなわち、俺は単なるストレス解消に、飲酒運転者たちに対する怒りを物語の登場人物に託しているだけである。②

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以上でも、以下でもなく。 中傷でも、反抗でもない。 むしろこの妄想はおそらく、場合によってはまるで交通事故というものをヒーローを立てるための良い演出として描いているため、肯定しているようにも見えてしまうかもしれない。③

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まあ、どうせ他者の多くは他人事。自分が事故に遭うわけないとバカみたいに信じているだろうから俺だけ批判するのは変だろ、と開き直ってる様に見えるかもしれない。語るのが俺な以上、俺の気質の染みた言語表現で語られるので、上から目線に聞こえても無自覚なのだ。 是非とも目をつぶって欲しい。④

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一応、言葉遣いに十分留意しながら描いていくので、もし言い回しが不愉快に感じたらそれ は俺の気の緩みであり、社会問題の原因に数えられる注意不十分によっているところ なので、一つだけ、しっかりと、約束をしておこう。   俺は未来永劫、運転免許証は取らない。⑤  

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『当たって砕けて不連年』 ＃１－１

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物語を紡ぐ上で支障が生じては筋道が通らなくなるので、最初に俺のことを話してお こうと思う。俺は「公立の学校に通う高校二年生」で、「性別は男」。「みんなからは横様と呼ばれている」が、古語で異常を意味する横様に由来する訳でもなく、単純に「苗字からもじられた渾名」である。①

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部活は演劇部で、美術が得意なので大道具や背景を作ってる。たまに衣装もやるが出来は苦笑いなのでデザインを母に渡し作業を頼むことがままある。大学の心理学科に進学し人間はどんなことに注視するかを学び、客の目を奪うセットを作って劇団の美術さんになりたい、夢や目標を持ったサイドの人間だ。②

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進路に専門学校や美術系の学校を志望しない辺りよっぽど絵に自信があるのかと思われることが多々あるのだが。 その通り。 俺は絵だけに限りよっぽど自信があるのである。③

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一度演劇部に依頼があり保育園で演劇をしたことがあった。そのときの俺の描いた背景や小物の可愛さと言ったら…。正直俺が思うに部員たちの演技はへったくそなので、暗幕があがったときの子供たちの「かわいいー！」という真っ黄色な声は俺の作った世界観への感動の声なのだったと未だに思っている。④

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後日、部員たちにそんな話をしたら「自惚れすぎだろ」とため息をつかれた。 では聞くが、俺への黄色い声でなければお前らに向けられた声ってことだろ。酔ってる証拠だ、そっちこそ自惚れてるだろ、と指摘したら「死ね」と言われた。そのショックで一週間学校を休んだ。俺はメンタルが超弱いらしい。⑤

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しかしメンタルさえ崩さなきゃ面白いキャラしてるとよく言われるので、一年の頃の友達の何人かは今でも絡みにきて、一緒に弁当を食べてくれる。今日もそんな感じで昼休みは一緒に二年でも同じクラスになった一年来の友達と弁当を食べようと教室の真ん中ら辺に座って包みを広げた。 「いただきます」⑥

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と、今から俺に食べられる命へ挨拶して弁当箱を開いた。すると。 母が作っ た弁当の中でも一切見たことのなかった─────さくらでんぶでかわいらしく描かれたピンクのハートと目が合った。 「････････････････････」 絶句。 しかもさくらでんぶ以外におかずは見えない。⑦

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おい。 まさか俺の弁当はウケ狙いな上に中身もスカスカなのか････？ 一体これで午後をどう乗り切れと。 つーか冗談でも笑えねえ。 硬直している俺を見てどうしたものかと俺の弁当箱を覗いた友達もブツを見て唖然としている。 そして何回も俺の顔と弁当を交互に見て、にやにやと笑っていた。⑧

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と、俺はついに気づいた。俺が手に持っている弁当箱の蓋はいつも使っている金属製ではなくプラスチック製だった。つまりこれは俺の弁当箱ではないということで、俺の弁当ではないということだ。「まさか･･・・」 こんなふざけたことをするのは一人だけだ。 俺には───一人だけ天敵がいるのだ。⑨

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『当たって砕けて不連年』 ＃１－２

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屋上は閑散としていて殺風景だった。 架空の世界では当然のように主人公などがこの場を利用し、幼なじみと美少女転校生のハーレムを構築したり、授業をサボり昼寝の場として用いたり、版権によって使い込まれている地として名高い。が、屋上で走り回ると下階にバタバタと足音が轟き騒音となるのだ。①

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基本的に屋上は一般生徒は立ち入り禁止でありがっかりする生徒も多い。そんな悩める屋上事情などお構いなしに錆びた柵の上に佇む男がいた。強風にあおられ痩躯が揺られる。バランスを崩せば地面へと真っ逆様にも関わらず雄大に海に浮かんでいるように──そいつは風の上にリラックスして漂っていた。②

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その穏やかな背中を見て、俺は自分の弁当をハートにされた事実をぐつぐつと頭で煮立てた。ますますもって怒りがこみあげ、落っこっちまえという思いもあいまり、柵の上の十字架に向かって叫んだ。「おい地口！お前勝手にお前の趣味悪い弁当と俺の弁当すり替えやがったな、一体なに考えてやがる！」③

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するとそれを皮切りに、一気に十字架は力を抜き後頭部から屋上の床に落下した。さすがの俺も心配になる程の勢いで頭を叩きつけたので若干引いたが、当の本人はけろっとした様子で   「ごめん、聞こえなかった。もっかい」   と、だるそうに仰向けになりながら半目で俺を見た。 とぼけおって。④

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「お前･･･俺の弁当とこの弁当とっかえただろ」 「うんおいしかったよ。君のお母さんは君思いのやさしいお母さんみたいだね」 「んなこと聞いてねえ！どういうつもりだよって聞いてんだ！」 「どういうつもりって」 何でそんなことを聞くんだろう、と純粋に疑問に目をぱちくりさせる地口。⑤

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そして子供のように微笑んだ。 「こーゆーことしたら君から話しかけてもらえるかな、って思ったから」 「･･････････････････････････････」 気持ち悪ぃ････････。 この地口寸志は、人をバカにしてるようで人との繋がりをその実大事にする気持ち悪い奴だ。⑥

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本当もうむかつくほど黙ってれば見られるくらい顔は整っているのだが、というよりイケメンなのだが、人格のキモさや協調性のなさが祟って友達と呼べるやつなどこいつにはいない。こいつはいつもひとりぼっちだ。 だからか知らんがいつもこんな風に俺に嫌がらせか冗談かわからない茶々を入れてくる。⑦

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ふと地口は再び柵に立った。先ほどと同じように作業に戻るように事務的に柵の上で十字架になる。 「早まれ」 「落ちないよ平気、心配しないで」 ････いや俺はお前にそのまま飛び降りろと言ったんだが。ヤツは呑気に平衡感覚には自信があるんだよね、と笑う。 「一つ、お願いがあるんだけど」⑧