古鷹青葉を見守る衣笠さんbot #23

更新二十三回目のまとめです。 第六戦隊の深海棲艦との熾烈な、熾烈な戦い。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

敵の空母ヲ級から次々と艦載機が発進するのが見える。艦載機はすぐには古鷹ねーさんに向かわず急上昇していく。上空で編隊を組むためでもあるし、高空から加速度をつけて爆弾を投下して威力を増す急降下爆撃のためでもある。雷撃機も古鷹ねーさんを狙うのに最適なコース取りのために一旦離れていく。

2014-05-14 21:41:23
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

敵の艦載機が古鷹ねーさんへの攻撃準備を整えるまでもう幾ばくも無い。 「古鷹ねーさんッ!逃げてッ!」 声を張り上げ古鷹ねーさんに呼びかけるけれど、古鷹ねーさんは振り向きもしない。敵艦の砲撃で大破しているというのに、半壊した主砲とかろうじて残っている左舷側の対空砲を空へ向ける!

2014-05-14 21:48:12
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

敵艦載機はまだ上空にとどまっており、古鷹ねーさんの対空兵装の射程外。しかし一瞬でも隙を見せればすぐさま牙をむくだろう。 ドウン! その時、狙い澄ました戦艦ル級の砲撃!古鷹ねーさんはそれを油断なく回避するけれど、姿勢が崩れる!そこへ、雲霞のごとき敵爆撃機の急降下!

2014-05-14 21:54:05
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

古鷹ねーさんはひるまず主砲と対空砲を構えるけれど、とても太刀打ちできる数じゃない。けれど、私の目の前で古鷹ねーさんにこれ以上指一本でも触れさせるもんですか! ドズンドズンドズン! 三基六門の20.3㎝連装砲を一斉射する。装填されているのは空中で破裂し無数の破片を飛び散らす三式弾!

2014-05-14 21:59:55
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

今まさに急降下爆撃のコースに入らんとしていた敵急降下爆撃機の鼻先に到達した六発の三式弾が、眩い光と共に破裂する。対空兵器で迎撃されることなど想定もしていなかったのだろう、燃える破片を次々に浴び、敵艦載機はあるいは爆撃コースを外れ、あるいは推進力を失って墜落していく!

2014-05-14 22:05:25
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「ほらッ、もう一発ッ!」 すぐさま装填した次弾をさらに一斉射する。敵艦載機が密集していてくれたおかげで、面白いように命中する。けれど、三式弾の炸裂を逃れた爆撃機が編隊を組み直して再び爆撃コースを探る。さらに、上空を見上げていた古鷹ねーさんに低空から雷撃機が迫る!

2014-05-14 22:11:59
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

上空の目標と海面近くの目標とでは三式弾を発射してから目標に到達するまでの時間が異なるため、雷撃機を狙うには三式弾の時限信管の調定時間を変える必要がある。けれど、今悠長にそんなことをしている時間はない。なにより、低空を狙ったら傷付いた古鷹ねーさんにも三式弾の破片が当たってしまう!

2014-05-14 22:17:18
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

投下された魚雷を、傷付いた足で古鷹ねーさんが回避する。このままじゃジリ貧だ。早く敵の懐から逃れてほしいけれど、戦艦ル級と重巡リ級eliteが狙いも定めず砲を乱射し、古鷹ねーさんに逃げる隙を与えない。そうしている間にも敵爆撃機の編隊が新たな急降下爆撃コースを定め、降下を開始する!

2014-05-14 22:22:46
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「こんッの!」 三式弾を撃ちまくるけれど、古鷹ねーさんを襲う雷撃と砲撃は防げない。自分の無力さに思わず視界が滲む。その時! 「古鷹ッ!」 加古の叫びに古鷹ねーさんが振り向く。そして何かを確認して左へ急回頭する。敵艦に背中を向け、狙ってくれと言わんばかり。けれど敵艦の砲撃は来ない!

2014-05-14 22:29:01
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

単縦陣を組み、古鷹ねーさんと同航戦の形をとっていた敵艦が砲撃をやめ、古鷹ねーさんとは逆の方向に次々と回頭していく。一体なぜ?と目を凝らすと、古鷹ねーさんと敵艦隊の間に割り込むように水面下を走る四本の酸素魚雷の影が見えた。奇妙なことに、放射状にではなく四本が一列に並んで走っている!

2014-05-14 22:37:46
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

敵艦隊は、自分たちの進行方向少し前方を斜めに横切るように次々と通過していく四本の魚雷を回避するために右に回頭したのだ。その態勢をとると古鷹ねーさんと距離が離れ、さっきまでとは角度も変わるために古鷹ねーさんを砲撃で狙うのは容易ではない。 「次!吹雪撃てッ!」 「いっけぇッ!」

2014-05-14 22:43:30
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

バシュ!バシュ!バシュ! 加古の号令に合わせて今度は吹雪が酸素魚雷を発射した。61cm三連装魚雷発射管3基9門を一本ずつ、時間差をつけて同じ射線上に走らせる!目標はもちろん敵艦隊のやや前方、命中させることが目的ではなく古鷹ねーさんと敵艦隊の間に魚雷の障壁を築くための雷撃だ!

2014-05-14 22:50:34
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

背後を警戒しつつ古鷹ねーさんが合流してくる。合わせて一斉に回頭し戦場から離脱を図る。古鷹ねーさんの艤装の被害は近くで見ると正視にたえないほどひどかったけれど、幸い推進系には被害はなく速力は落ちていない。今のうちに皆で脱出をと思ったその時、背後から轟音が聞こえた。 「なんなの!?」

2014-05-14 22:59:40
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

吹雪に続いて魚雷を放った叢雲が、驚愕とも動揺ともつかない声を上げた。振り向くと中破していた敵の軽巡ト級が魚雷を食らって今まさに轟沈するところだった。けれど叢雲は最初の青葉や吹雪と同じく敵艦隊の針路を防ぐ射線で魚雷を放ったはず。つまり、あの軽巡は自分から魚雷に突っ込んだのだ!

2014-05-14 23:05:15
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

そして、魚雷の壁に軽巡ト級がこじ開けた穴から雷巡チ級が飛び出し、私たちの追撃にかかる。なんてこと!あいつらは仲間を犠牲にしてまで私たちへ追撃するつもりなのだ。さらに、古鷹ねーさんへの攻撃の機会をつかめず爆弾や魚雷を抱えたままだった爆撃機と雷撃機も、機首を巡らせ私たちに追いすがる!

2014-05-14 23:11:46
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「みんな、行って!」 背後に向き直り後進で退却しながら、艦隊の殿をつとめるべく速力を落とす。残弾が不安だけれど、艦載機の攻撃は三式弾で防ぎ切れるだろう。また雷巡の主砲は豆鉄砲だ。雷撃だけに注意していればなんとかなる。いいえ、私がなんとかしてみせる!そう私が決意を固めた、その時。

2014-05-14 23:20:23
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

後進する私の目の前に、私より敵艦や敵艦載機に近い位置に、大破している古鷹ねーさんの小柄な身体が割り込んだ。 「何やってるの!?早く逃げて!」 「私が殿をやるから、衣笠こそ逃げて」 私の叫ぶような声に対し、古鷹ねーさんの声は戦場には不釣り合いなほどいつも通りで、冷静だった。

2014-05-14 23:25:41
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

ああ、ああ。このひとは。もう、このひとは! 「ダメよ、古鷹ねーさん大破してるのに!私が、私が残るから!ねーさんは逃げて!」 「私なら、大丈夫。雷撃機の攻撃パターンはつかめたし、機関も無事だから回避も問題ないよ」 そんなことじゃない。目の前にいるのに、言いたいことが全然伝わらない。

2014-05-14 23:32:35
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

これ以上古鷹ねーさんに傷付いてほしくないのに。今度こそ、私が古鷹ねーさんを守りたいのに。力尽くでも古鷹ねーさんを殿にはさせない。そう決意して古鷹ねーさんの顔を見る。そして、私はその顔に、すべてを悟りきったような、もう思い残すことはないと言うかのような透き通る微笑みを見出した。

2014-05-14 23:40:04
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

私の背筋をうすら寒いものが駆け抜ける。まさか、まさか、まさか。古鷹ねーさん、まさか青葉と仲直りできたからそれだけでもう十分だとでも言うつもりじゃないでしょうね。再び皆を、青葉を守って沈めるならそれで本望だとでも言うつもりじゃないでしょうね。そんなの、そんなの絶対に許さない!

2014-05-14 23:44:54
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「古鷹ねーさ――」 「急降下爆撃、四機来ますッ!」 見張り員の妖精さんの声で私は我に返った。反射的に舵を切って投下された爆弾を回避する。そのせいで古鷹ねーさんとの距離が離れる。 「お願い!古鷹ねーさん下がって!」 私の叫びは、次々と上がる水柱の轟音にかき消される。

2014-05-14 23:49:46
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「古鷹さん……?」 私の叫びが耳に入ったか、艦尾から煙幕を展張していた青葉の震える声が轟音の隙間を縫って聞こえてきた。その短い呼びかけに込められたあまりの痛ましさに、胸がぎゅうっと苦しくなる。 「いいから走れ!」 「でも……ッ!」 加古が青葉の腕をつかんで前を向かせる。

2014-05-14 23:56:36
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

白い雷跡を引きながら敵雷巡の雷撃が迫る。それを回避し三式弾のままだろうと構わず敵艦へ反撃する。古鷹ねーさんの周囲に水柱が上がるたびに心臓が縮み上がる。敵機の攻撃がやまない。必死に応戦する。少しでも敵機が減るように。少しでも古鷹ねーさんに攻撃がいかないように。ただただ、祈るように。

2014-05-15 00:09:11