田口寛之さんによるPerfumeの575〜J-POPのメリスマ〜相対性理論の話

編集者/音楽ライターの田口寛之さん(@dolphinicity)によるJ-POP分析。起点はPerfumeのiida calling ver.4.0。
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Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

よし、これから『Q10』見るぞ☆ とその前に。えー、次のツイート、冗談通じますように! 検索でヒットしないようにちょっとだけ誤記しようかなw ぼくの好きな2アーティストについて。

2010-11-07 02:44:09
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

【速報】あの天才ミュージシャン藤本敦夫 @atsuofujimoto とParfumeがコラボ作品を発表! http://iida.jp/calling/#635029

2010-11-07 02:46:19
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

Perfumeファンの方に怒られませんように…。最近知ったんですこのウェブアプリ。すごく面白いです。これで遊ぶだけで、リリックのなんたるかについて、わかることがあるかも。たとえばこう→ http://iida.jp/calling/#636314 元が5・5・7なわけですが。

2010-11-07 02:54:38
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

七五調って都都逸になりかねないけど、そこはヤスタカ中田、2小節目頭「7」の頭の8分休符が効いててダサくない。さらに、音引き(=ー)を使うと符割りを変えられる。藤本さんの「ぶっとんだ!」を引用させていただいたさっきのでも1箇所。俺は「がーとんだ」より「がとーんだ」のほうが好きかな。

2010-11-07 03:02:03
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

昔CDジャーナル誌で書かせていただいたんだけど、これ http://iida.jp/calling/#636314 の原曲は、5・5・7でありながら付点8分音符のリズムでザ・TKソングになっているのがいいなと。日本語の歌の歴史に接続/ハック/更新している(その3つが矛盾してない)

2010-11-07 03:09:02
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

この曲発表前後に『HEY!3』に出演したとき(YouTubeにあるかもだけど探すの面倒くさし)、松っちゃんがまさに示唆的ないじりをしたんだよね。「いっとしっさと~♪」ってこれみたいなリズムで茶化して歌った。 http://bit.ly/bTUPUo

2010-11-07 03:36:16
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

”そうではない”ことを際立たせる、いいいじりだった。てかさっきのツイート、七五調だからって即都都逸になるわけない、っていうかおれの中で都都逸を勝手に超広義にしちゃってました。すみませんそこだけ忘れてください(勝手再)。単に、ふつうは七五調らしいリズムに着地しかねないという話。

2010-11-07 03:48:54
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

七五調らしいリズムとは? たくさんありすぎる。浪曲とか、都都逸的な伸縮を加えた一連のものもそうだけど、ぼくが関心のあるポップスの話で言えば、戦後の日本語のもろもろの地口(って言うんだって。いま検索して知った)

2010-11-07 03:58:10
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

5 or 7音のブロックの中では伸縮させず、ブロック間では、ときに一息入る(とくに5の後)。地口の例:「当たり前だの クラッカー」「恐れ入谷の 鬼子母神」「あたりき車力 車引き」「四角四面の 三角野郎」 岸野さん、昔ライヴのとき「四角四面のステージに ちょいと出ました (続く

2010-11-07 04:06:20
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

フラクタル野郎」って言ってた。三角よりずいぶん複雑でらっしゃるw で、歌謡曲のメロディ(符割り)は、この地口的な等間隔の(ゆえにグルーヴする)七五調の、音の伸縮のバリエーションとしてあった感がする。というか現代人のはしくれとしてのぼくの耳には、そう聞こえる部分がある。

2010-11-07 04:10:03
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

よく指摘されるとおり、阿久悠の書いた歌詞はかなり七五調。「一日二杯の 酒を飲み」(「時代おくれ」)は符割りが平たい例で、「あなたお願いよ 席を立たないで」(「ロマンス」)はシンコペーションの効いたモダンな符割りの例。どっちも、7音、5音のブロックがベースになってる。

2010-11-07 04:26:08
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

思いついた順に書いてるからアレだけど、そういう意味じゃ、Perfume「575」は相当平たい符割りですね。だからこそ、例のアプリが成立してる。ブロック内の文節の切れ目とか意識しなくても、音数があってればぜったい変にならない。

2010-11-07 04:37:15
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

ちなみに、裏拍強調バージョン。音数のしばりを無効にしちゃってるけど。 http://iida.jp/calling/#636333 裏拍強調と、もうひとつ重要なのが、これだと1音節2音符の”プチメリスマ”が生じる。Jポップに残ったコブシの末裔。2つ目の「こ」と「ろ」の部分ですね。

2010-11-07 04:55:12
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

@bornfromsilence 超お久しぶりです! そして超忘れたころのレスですが、浜崎あゆみの歌の特徴って、この1音節2音符の”プチメリスマ”がよくも悪くも頻出することかと。これって、聴く分にはときにしつこいけど、カラオケで歌うときとか、相当”歌い甲斐”がある部分になるかと。

2010-11-07 05:03:26
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

このプチメリスマ、ありものの「歌詞+メロディ」に歌い手の解釈として簡単に足せるものでもあるけど、ときにその曲の強固なアイデンティティにもなる。たとえば久保田利伸「MISSING」とか、チェッカーズ「I Love You, Sayonara」とか。

2010-11-07 05:07:59
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

プチメリスマは、歌い手がもっと簡単に加えられる「目標の音高のちょっと下からしゃくりあげる」装飾音符的なのとは別。それはこの2曲の例の通り。理屈っぽく書いちゃったけど、プチメリスマは歌謡曲・Jポップにとって、とっくの昔からある要素。むしろ、ない曲のほうが少ない。

2010-11-07 05:12:04
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

ちなみにプチメリスマがない例は、ポルノグラフィティ。あの符割りの細かさで、かつ全音符に1音節が対応しているゆえに、独特の性急な感じが出てた(例:「アポロ」)。単に「早口」っていうよりね。あと、相対性理論(とくに初期)。プチメリスマのなさ+表拍アクセントが、彼らのメロディの(続く)

2010-11-07 05:18:41
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

テイストを相当作ってたと思う。たとえば「スマトラ警備隊」。『シフォン主義』1曲目のあの曲を聴いたときは衝撃だったけど、あのぶっきらぼうさ、少女感は、「喉をフィジカルにコントロールする必要がある」プチメリスマがメロディにあったら成り立たなかっただろう。

2010-11-07 05:27:00
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

相対性理論に、「童謡みたい」と感想を持つ人もいる。それは的を得ていて、童謡はシンコペーションもないものが多いし、プチメリスマもそんなにない。ときに、あっても子どもは歌いきれず無視したりする。なぜなら、子どもは喉をコントロールしきれないから。

2010-11-07 05:32:48
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

ともかく、やくしまるえつこの少女性というのは、歌詞「だけ」を見たときのイメージに加えて、こういう五線譜上の具体的な特徴にも支えられたものだっただろう。「だった」と過去形にしたのは、その後、徐々に変化していくから。たとえば、次作『ハイファイ新書』の「地獄先生」。

2010-11-07 05:38:07
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

これはよく言われてるけど、サビ「知らないこと知りたいの」の「な」の発音。エロい。それに加えて言いたいのが、「せんせい」の2回目の「せ」。1音節2音符、プチメリスマだ。そして同型のプチメリスマがリフレインされる(「教えて」「先生」)。「テレ東」だと「アイラービュー」の「ラ」もそう。

2010-11-07 05:43:17
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

喉が動いている。いや、メロディを歌ってる=決まったリズム、音高でそのつど発音してる時点で、喉は動いてるんだけど…このプチメリスマって、「喉動いてる!」って感じ、しません? おれはするんだけど…。で、『シンクロニシティーン』の「人工衛星」のサビは、いよいよそれが全面化する。

2010-11-07 05:49:03
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

『サイゾー』誌の『シンクロ~』レヴューで「2音間のスムーズな移動がメロディの根幹を成す」と書いたのはそういうこと。ほか、「ミス・パラレルワールド」のサビで繰り返させる「パラレル」の「ラ」。こっちは装飾音符的だけど、正確に1音分のしゃくりあげを、「ラ」のたびに正確に反復している。

2010-11-07 05:54:21
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

同レヴューではこう書いた。「今作のやくしまるの”喉の運動”は萌えというよりエロく、エロいというよりフィジカルだ」。字数が限られているので書けなかったけど、この「萌え」→「エロ」→「フィジカル」というのは、『シフォン』→『ハイファイ』→『シンクロ』の流れに対応する(僕の解釈では)。

2010-11-07 05:59:49
Hiroyuki Taguchi @dolphinicity

フィジカル=身体(喉も当然、その一部だ)をフルに使い切って歌う、たとえばディーヴァ系アーティスト。彼女たちの身体性は、アスリートの身体のように、萌えや、ときにエロもはねつける。ある意味フェミニスティックで、やくしまるさんは、あくまでそれ以前と相対的にw比べたときにの話だけど(続く

2010-11-07 06:06:11