simesaba0141氏の「放射線治療の歴史」

またまた診療放射線技師のsimesaba0141氏のお話。放射線治療の歴史は、被爆影響の歴史でもあるということでしょう。 「放射線の影響が(全く)わかってない」と仰る方もいますが、simesaba0141氏のツイートで、先人は薄い紙を重ねるように知見を積み上げてくれたこと、そして「分かってることは少なくない」ことがわかるんじゃないかと思います。
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simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

 今回は、放射線治療の歴史について連ツイします。例によってトンデモない長文になってしまいました…。

2014-05-17 22:37:05
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  人類に対して初めて放射線を用いた治療が行われたのは、1896年レントゲン博士がX線を発見したのは、1895年ですから、翌年には、もう放射線を治療に応用しよう、と言う考え方があった事が解ります。

2014-05-17 22:37:24
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  ちなみに、乳癌治療が最初だったようで、鼻の癌ではありませんでした。ごめんなさい。と言う事は、放射線に皮膚などを傷害する力がある、と言う事は、既にこの頃から知られていたのだと理解できます。

2014-05-17 22:37:48
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  X線は初期にはサーカスの見世物として大人気を博していましたから、本当に無知とは恐ろしいものです。そう言えば、エジソンはX線管球の開発に没頭しましたが、健康を害して中断しています。そして、その時の助手は、後年悪性腫瘍で亡くなっています。

2014-05-17 22:38:08
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  話がいつものように横道にそれますが、X線が発見されたのは、レントゲン博士がクルックス管と言う真空管の一種で、あれこれ実験を重ねて居たおり、ある日、電源を切り忘れて黒い布をかけて帰ろうとしたところ、傍らに置いてあった鉱石が光った、と言う逸話があります。

2014-05-17 22:38:56
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  この時、実は物質の最小単位は、まだ元素である、と考えられていました。つまり、陽子と電子の存在は、まだ発見されて居なかったのです。従って、レントゲン博士はクルックス管に、どうやって電気が流れるのか、と言う理屈を一切知らぬまま、X線を発見したのです。

2014-05-17 22:39:40
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  もちろん、クルックス管の開発者であるクルックス自身が、そんな事は露知らずに実験を重ねており、実は彼もまた、自分が開発した装置から、謎の光が発せられている事を、レントゲン博士よりも前に把握していました。

2014-05-17 22:39:56
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  しかし彼は、それが未知の現象であるとは全く考えず、単なる偶然だろうと考えて居ました。X線の発見には、レントゲンに先駆けて、少なくとも二人の先駆者が居た事が知られています。しかし、いずれも歴史に名を残すことはありませんでした。

2014-05-17 22:40:23
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  そんな訳で、電子というものが存在する、と言う事実が明らかになったのは、X線発見の2年後。そしてまた、世の中には天然の放射線を発する物質がある、と言う事が知られたラジウムの発見は、X線の発見より3年後の事だったりするのです。

2014-05-17 22:40:42
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  この辺りの科学史は、知れば知るほど面白いし、単純な発見や発明の裏に、結構ドロドロした人間関係も垣間見えるのが面白いところです。

2014-05-17 22:41:13
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  さて、ある日、キュリー夫妻を訪れて、放射性元素を含んだ鉱石を研究のために譲り受けながら、それをポケットに入れたまま、すっかり忘れて放置していたうっかりさんが居ます。数日後に、彼は胸に不可解な、直りの悪い潰瘍が出来ている事に気づきます。

2014-05-17 22:41:33
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  彼の名はベクレル。そう、放射能の単位に名を残すベクレルは、実は、おそらく人類最初の、皮膚における急性被曝症状を受けた患者でもあったのです。

2014-05-17 22:42:26
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  こうして、先にあげたサーカス団員や、X線管開発者、そしてベクレルのような科学者に相次いで深刻な健康被害が発生した事で、ようやく放射線と言うものが、人体に対して有害である事が整理され始めます。

2014-05-17 22:42:43
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  それと時を同じくして、その障害事例が、健康な組織よりは、癌化を来たした組織に起こりやすい、と言う知見も蓄積され始めます。そして癌化した細胞を培養し、様々に条件を変えて放射線を照射する事で、どういう条件が揃えば、癌細胞はより多く死滅するのか、

2014-05-17 22:42:59
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  そのメカニズムが、よりはっきりと理解されるようになって行き、今日のような放射線治療の形態が固まり始めて行きます。また、その過程で、全てのがん細胞に放射線が有効ではなく、細胞によって効き方に差があることも解って来ました。

2014-05-17 22:43:31
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  ところで、いま私は「がん」と敢えてひらがなで書きましたが、これには意味があります。がんには、主に皮膚組織に由来する、漢字で書く癌と、筋肉や神経の鞘に出来るものがあり、これをひらがなの「がん」と呼称します。

2014-05-17 22:43:46
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  そして、一般論として後者の方が、放射線が効きにくい傾向にあります。もっとも一部の悪性リンパ腫のように、どのがんよりも放射線が効きやすいものもあって、一筋縄では行きません。もちろん、個体差もありますし。

2014-05-17 22:44:50
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  そうした難治性のがんには、別の種類の放射線を治療に用いる事もあります。一般に極めて高価ですが、お医者様に相談なさる事をお勧めします。もちろん、何度も言いますが、放射線の効きには個体差もありますので、一概には言えないと言う事はご理解下さい。

2014-05-17 22:45:05
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  さて、そう言うわけで個体差もある訳ですが、人間にとって恐らくは幸いな事に、照射後数日~数週間後に症状が現れるようなもの、いつも私が言っている早期(急性)反応は、数Gy(便宜上Svと読み替えても大丈夫です)と言う極めて大きな線量が必要となります。

2014-05-17 22:45:59
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  最も低い線量で影響が現れるリンパ球の死滅も、0.25Gy、つまり250mGyから影響が出始めます。しかも、これは極めて短い時間に、集中して浴びなければ症状は出ません。少なくとも1mGy/秒(1000μGy/秒)と言ったレベルでは全く心配は要りません。

2014-05-17 22:46:16
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  低線量被曝とは、一般的に100mGy=100mSv(便宜上)を言いますが、これには時間の単位は含まれて居ません。しかし、最大線量が大きくても、秒単位に直して100mGyより充分に小さければ、まず症状は出ないと見て、安心して結構です。

2014-05-17 22:46:36
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  但し、だからと言って放射線が安全だ、などとは決して思わないで下さいリスクが避けられるならば、避けるに越した事はありません。要は、これもいつも言っている事ですが、正しく知って、正しく恐れる。これが基本中の基本であると言えるでしょう。

2014-05-17 22:46:55
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  どなたかが貴重な事を言っておられましたが、放射線の危険度は量と密接な関係があります。その量は、更に時間の長短によっても左右されます。バケツで水を浴びれば、体がびしょ濡れになる事は必至です。

2014-05-17 22:47:13
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  ですが、同じ量の水でも、霧吹きで長い時間をかけて浴びれば、不快感はともかくとして、体がびしょ濡れになる事はまずありません。この例え話には、ちゃんと意味があります。体が少量の水に濡れても、体温で水が乾くように、低線量被曝には、防御機構が働くのです。

2014-05-17 22:47:27
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141

@simesaba0141  それが「回復」と呼ばれるものです。これは、DNAなどを持つ高等生物に備わっている高度な防御機構であり、ウィルスのような単純な生体(ウィルスを生体と言えるかどうか、はありますが。)とは、この回復の仕組みが全く異なります。

2014-05-17 22:47:41