二日目、昼の記録 - 選定のオルディナンス

2014/05/18から2014/05/20までの、〈勇者〉と〈神具〉の語らいの様子です。
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クレアーヘリオン @Clairherlion

目が覚めると、布団の中にいた。だから一瞬、自分の部屋に戻ったのかと思った。僕らしくなく、がばっと勢い良く跳ね起きて、それで、きのうの広間に間違いないと悟って、脱力する。

2014-05-18 00:08:37
ニゲルニグ @niger_nig

「よう、おはよう」 少年の手で広間に戻され、朝になった。 何故かいつの間にか布団が敷かれてそこにくるまって寝るもの達がいた。 いつのまに、どうやって、こうなった。斧はその疑問を飲み込んで声をかける。 「よく眠れたかい、『勇者』さん達」

2014-05-18 00:29:12
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

並ぶ六つの台座がひとつ。そこには柱時計が在った。ひとを見下ろすようにそびえる時計。黙々と時を刻む大きな時計。黄金と白銀とが緻密に組み合わさって。宝石と水晶とが星のごとく端々を飾って。植物の緑と幾つもの花冠を、衣裳のように帯びた柱時計が、そこに佇む。昨日と同じく。

2014-05-18 01:28:41
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

柱時計の中腹部が扉のように左右へ開閉し、そこから少女人形がそっと身を乗り出す。窺うように周囲へ視線を飛ばして。淡々とした様子で。

2014-05-18 01:28:46
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

「……今日が<二日目>という大切な時間であるということは、Cは聞いています」昨日とは違って人形は、無表情に、無感動に言葉を紡ぐ。硝子の瞳で、純白の布団6つとそこに眠る人間たちを見下ろす。

2014-05-18 01:28:49
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

少女人形の見た目の雰囲気は、変わらない。愛くるしいお人形のような風貌。精巧に精緻に形作られ、美しいことはもはや当たり前であろうという程に整った顔立ち。もちもちとした白い肌は、艶やかで。

2014-05-18 01:28:54
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

ただし、腰まで届く髪の色は金ではなく、こげ茶色になっていた。服も、黒の上着と同色のスカートに、白のエプロンというそれではなかった。全体の雰囲気が白で統一され直している。

2014-05-18 01:29:07
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

袖が花弁のように広がった白のブラウスに、編み上げられたコルセットを身に着けて。ふんわりと膨らんだ白のフリル付きスカートを穿き、頭には筒のようなかたちをした、白のつば付き帽子(トップハット)を被っている。ハットには、うさぎの耳のようなもふもふ飾りが、ピンと立っているのが特徴で。

2014-05-18 01:29:17
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

装いを新たにし、表情に感情の乏しさを漂わせる少女人形、6人の勇者たちを柱時計の窓から見下ろす。ひとりずつ。「……」ふと、ある人間でその視線が止まった。黒髪を切りそろえた人間の女に、人形の目が向いて。

2014-05-18 01:29:20
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

「……?」自分でも分かっていないような表情で、人形は小首を傾げた。瞬きひとつせず、感情の無い硝子の瞳で人間を傍観する。「……あり、が……と……?」無意識にぽつりと紡いだような、囁き。声にも顔にも、相変わらず表情はなくて。

2014-05-18 01:29:29
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

やがて視線は女から外され、人形は6人全員へ向けて静かに告げる。「おはようございます、勇者さま方。今が目覚めるその時です」抑揚の無い声で、指示された動きを繰り返すからくりのように。目覚めの挨拶を。

2014-05-18 01:29:46
キュセル @ozQuseL

方々から、時を告げる『声』が響く。如何なる因果によるものか。広間には、昨日までは無かった布団一式が都合6セット、並べれられている。そのうちの一つの寝具が、小刻みに振動を始める。 「情報開示。次元の収束を確認しました。エオン、起きて下さい。キュセルはエオンに起床する事を要求します」

2014-05-18 01:39:40
キュセル @ozQuseL

何故か、機械的な音声が寝具の中からしていた。布団の端から、切っ先が少し見えている。漆黒のフランベルジェである。小刻みに振動している。ガタガタ震えながら布団から徐々に這い出してくる。刃が床に触れて金属音を響かせているが、刃毀れ一つしていない辺りは流石に神具であると言わざるを得ない。

2014-05-18 01:44:58
人間《ディアドラ》 @actSkbz

――果たして姿は、夜の時のままであった。白く艶やかな髪は床につくほどに長く、その双眸には虹の煌めきを宿し。聞こえる声らに、伏せていた眼をそっと押し開けて。 「……セシリオ様、朝です」 ひたりと、その冷たい掌を少年の頬に宛て、アステーリアは囁く。

2014-05-18 02:03:22
人間《ディアドラ》 @actSkbz

アステーリアの体勢は昨夜と変わる事なく、――つまり、膝上には少年の頭が乗せられていて。傍らに置かれた自身を一瞥する。 ――寝苦しそうな息を吐いた少年を見兼ねて、片手は彼の手を確と握ったままだ。それから微動だにせず、ただ星を視ていた。 「良い朝と存じます。――皆々様、お揃いで」

2014-05-18 02:03:26
人間《ディアドラ》 @actSkbz

並べられ、少年も横になっている白く少し厚みのある布のような何か。もぞりと動くものが幾つかあり、一瞬は瞠目したものの、少年のように白く薄い少し厚みのある布のような何かを被っていると考えれば納得がいった。 普段とは視点が違う。辺りを見回したものの、視線は再び少年の寝顔へと向けられ。

2014-05-18 07:17:07
人間《ディアドラ》 @actSkbz

ひたりと宛てていた手は放れ、未だ夢の中である少年の頭を撫でる。言葉は無いまま、ほんの少しだけ、口元に微笑を浮かべて。

2014-05-18 07:17:20
クレアーヘリオン @Clairherlion

「……おはよう」 聞こえた朝の挨拶に、うつろな声で応える。寝ぼけている、と、そう聞こえるだろうか。 枕元を手さぐりする。結い紐を探す。寝る前に解いて置いたそれは、師が僕にくれたものだ。忘れてしまった僕に、もう一度結い方を教えてくれたときに、もらったものだ。見当たらない。

2014-05-18 09:24:29
クレアーヘリオン @Clairherlion

寝乱れた髪や左腕の包帯を直すのも後回しにして、枕や敷布団をひっくり返して、探す。そんなに時間はかけずに、諦めた。なくしてしまった事実を受け入れた。壊れた鎧の左肩もここにはなかった。 少しずつ、僕(クレアーヘリオン)がなくなっていく。誰のせいでもなく、僕の判断で、僕が捨てらていく。

2014-05-18 09:24:44
クレアーヘリオン @Clairherlion

考えが浅かったのだと思いながら、それをなくすことで僕が困るかと自問すれば、否だった。なくしても構わないと、『僕』が判断していた。だから、こんなにもあっさりと、なくしたんだ。 『クレアーヘリオン』が少しずつ欠けていく。手櫛で髪を梳く僕は、表情を失っていた。僕は、そんなに、強くない。

2014-05-18 09:24:54
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「探し物でございますか、クレアーヘリオン様」 声はひそひそと、静かに。少し耳をそばだてないと聞こえにくいかも知れない。膝に頭を預ける少年を気遣っての大きさ。 「……クレアーヘリオン様?」 恐らく少女には見慣れぬ姿が声を掛ける。虹の煌めきは緑を宿して、首を傾げた。

2014-05-18 09:37:30
クレアーヘリオン @Clairherlion

二回目に呼ばれてようやく気がついた。白い髪に移ろえる緑色の目の女性が、同じく白いセシリオの頭を膝に乗せていた。『怪物』という言葉がよぎる。僕らは心に巣食う魔のことをそう呼ぶことがある。『緑色の目』は、何だったろう。頭を振る。今はどうでもいいことだ。 「……きみは、アステーリア?」

2014-05-18 09:54:21
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「是、アステーリアです」 小さく頷く。緑の双眸は榛を見詰めて。 「……そうでした。アステーリアは今、仮初の姿(アバター)を顕わにしております」 傍らに、白い革張りの書は在る。そこに虹の煌めきは宿っていない。 「アステーリアは改めて問います。探し物ですか、と」

2014-05-18 09:58:10
ミシェル @tfhMichelle

目を開けると真っ白だった。 寝起きの回らない頭で数秒考えて、目の前の真っ白はシーツの色なのだと気付く。 頭上でぽつぽつと飛び交う声をぼんやり聞き流しながら、再び瞼が閉じられていく。 眠い、眠い。まだ寝ていたい。

2014-05-18 10:00:47
クレアーヘリオン @Clairherlion

「うん……ううん。今はもう、探してないよ」 手櫛の指先が、後ろ髪の短い部分に触れる。結っておけばわからないと師が言った。つまり、下ろしていればわかる程度には、見えるのだろう。 「夜に、置いてきちゃったみたい」 消沈した声。無表情は変わらず、笑みは戻らない。

2014-05-18 10:10:47
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