中学生でも読めるフーコー『性の歴史Ⅰ』(第五章「死に対する権利と性に対する権力」の部分)

フランスの哲学者ミシェル・フーコーの著作である『性の歴史Ⅰ知への意志』を中学生でも読めるように要約したもパート10です。最後です。
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zutabukuro @ClothSack

中学生でも読めるフーコー『性の歴史Ⅰ』プロジェクト、第五章「死に対する権利と死に対する権力」の部分を連投しますかね~。いよいよ最終章です。長いので、今日と明日の分割します。

2014-05-18 21:18:24
zutabukuro @ClothSack

長い間、王様の力を特徴づける特別な権利の一つとして、生殺与奪権(生と死に対する権利)がありました。これは古代の家父長権(子供の命を親が自由に扱ってよいとい権利)から発達したものでしたが、時代が進むにつれ反論・反撃の権利に限定されていきました。(続く)

2014-05-18 21:18:48
zutabukuro @ClothSack

例えば、王様の国が攻撃されたとき兵士を戦争に行かせ死なせる権利や、王様自身が攻撃されたときその犯人を死刑にする権利などです。   この生殺与奪の権利ですが、実は不平な権利です。なぜなら、この権利は殺すか生きたままにしておくものだからです。(続く)

2014-05-18 21:19:10
zutabukuro @ClothSack

つまり、実際は殺す権利であって、死に対するだけの権利だということになります。王様がいた時代の税金を徴収し後は好き勝手にさせておくという権力の動き方では、このような権利でなんの問題もなかったのでしょう。 (続く) 

2014-05-18 21:19:31
zutabukuro @ClothSack

ですが、17世紀以降、西洋世界の権力のメカニズムは変化していきました。それは、王様がいた時代のように徴収を中心とするのではなく、性の告白に見られたように、力を産出し、増大させ、調整するものになったのです。(続く)

2014-05-18 21:19:54
zutabukuro @ClothSack

この権力のメカニズムの中心には、もう死に対する権利を置くことはできないでしょう。死は力を産出せず、増大もさせず、調整もできないのですから。   そこで、新たな権力のメカニズムの中心になっていったのが「生」です。(続く)

2014-05-18 21:20:15
zutabukuro @ClothSack

生は、産まれるものであり、人口数や仕事の熟練度という形で増大可能で、出生率や行動のコントロールという形で調整することが可能だからです。なお、生は抽象的なので、具体的に権力のメカニズムの中心になってくるのは、生きている体、身体ということになるでしょう。 (続く)

2014-05-18 21:20:31
zutabukuro @ClothSack

新たな権力のメカニズムの中心が「生」である、ということを示す例として、戦争と死刑を挙げることができます。   まず、戦争についてみてみましょう。王様がいた時代の戦争は、王様が自分のために起こすものでした。(続く)

2014-05-18 21:20:50
zutabukuro @ClothSack

新たな権力のメカニズムの時代にである近現代の戦争は、ある国は危険だから国民の生命を守るために戦争をしてやっつけてしまおう、のように国民の生存(生命)のためになされるということにされているのです。(続く)

2014-05-18 21:21:09
zutabukuro @ClothSack

また、現在の戦争を象徴する大規模な虐殺も、権力の対象が「生」であり、生のレベル(人口や民族)で物事を考えていることの証拠といえるでしょう。なぜなら、そのような行為は、相手を生のレベル(民族や人口)で、破壊することを目的とするものだからです。(続く)  

2014-05-18 21:21:47
zutabukuro @ClothSack

次は死刑を見てみましょう。昔の王様がいた時代、死刑は今とは比べ物にならないくらいおこなわれていました。しかし、現代社会を見てみるとその数は少数です。権力が生を中心としているので、その反対である死という刑罰はやりにくいのでしょう。(続く)

2014-05-18 21:22:10
zutabukuro @ClothSack

それでも死刑はありますが、その理由は犯罪が重大だからではなく、犯人の生が他の生に有害だからという理由です。   これまでのことを見ていくと、死なせるか生きるままにしておくという古い権利に代わって、生きさせるか死の中へ廃棄するという権力が現れた、と言えるでしょう。(続く)

2014-05-18 21:22:34
zutabukuro @ClothSack

この違いは、どちらの時代も好ましくないこととされている自殺を見るとよくわかります。古い時代なぜ自殺がいけないかというと、死は王様の権利であって個々人のものではなかったからです。それが今なぜ自殺がいけないかといえば、それは生を経営・管理する上で勝手に死なれては困るからなのです(続く

2014-05-18 21:23:22
zutabukuro @ClothSack

さて、生に対するこの権力は、17世紀以降二つの形態で発達してきました。二つの形態と言って、それらは離れているわけではなく、磁石のN極とS極のように二つの極を作り、お互に関係しあています。   まず発達してきたのが、規律を中心とする「人間の身体の解剖学―政治学」です。(続く)

2014-05-18 21:23:45
zutabukuro @ClothSack

これは個別の人間の身体を中心したもので、それらの有用化を求める運動です。小学一年生のころを思い出してみましょう。そのころは、無駄な動きが多く、イスに長時間座っていると疲れてしまい、先生の言うこともそれほど聞かなかった、と思います。(続く)

2014-05-18 21:24:01
zutabukuro @ClothSack

しかし、今の我々は違います。無駄な動きはほとんどなく、イスに長時間座っていてもそれほど疲れず、先生の言うことをよく聞きます。このように、人々を規律化し、言うことを聞いてもらい、効率的に動いてもらおう、というのがこの運動なのです。(続く)  

2014-05-18 21:24:23
zutabukuro @ClothSack

少し遅れて、18世紀の半ばに発達してきたもう一つの極が、調整する管理を中心とする「人口の生―政治学」です。こちらは種としての身体を中心としたものだといえます。つまり、人間という種の繁殖や誕生、死亡率、健康水準、寿命、などに注意し、それらをコンロールしていこうという動きです(続く)

2014-05-18 21:24:42
zutabukuro @ClothSack

17世紀以降、前者を象徴する規律制度(学校、学寮、兵営、工場)と後者を象徴する用語(出生率、寿命、公衆衛生、居住、住居)の政治・経済場面での使用が爆発的に増加していきました。(続く)

2014-05-18 21:25:00
zutabukuro @ClothSack

これは、王様的な死に基づく古い権力が消え、身体の行政管理や生の損得勘定に基づく新たな権力である、「生―権力」の時代の始まりをつげるものと言えるでしょう。   この二つの流れは、18世紀においてより明確なものになっていきました。(続く)

2014-05-18 21:25:19
zutabukuro @ClothSack

規律の側では、軍隊や学校、技術習得、教育、社会の秩序に関する議論が増大しました。人口の調整管理の側では、人口統計学や住民の収入や富に関する経済学が発達していったのです。(続く)

2014-05-18 21:25:36
zutabukuro @ClothSack

また、その当時、実践を重要だと考える観念学派という哲学の一派が、二つの権力技術を整合させ、その一般理論を作ろうと企てました。   ですが、これはあくまで抽象的なレベルです。(続く)

2014-05-18 21:26:33
zutabukuro @ClothSack

事実、二つの権力の技術の関わりあいは、理論的なレベルというよりも、具体的・実践的な構成や配置の形でなされ、後の巨大な権力のテクノロジーにつながっていきます。(続く)

2014-05-18 21:26:55
zutabukuro @ClothSack

長らく登場していなかった、「性的欲望の装置」もこのような具体的な構成、配置の一つであり、しかも、最も重要なものの一つなのです。   このような「生―権力」は、疑う余地がないほど、現代社会における中心的な経済システムである資本主義の発達に不可欠なものでした。(続く)

2014-05-18 21:27:26
zutabukuro @ClothSack

資本主義は、工場へ身体を管理・規律化された形で組み込むこと、簡単に言うと工場で真面目に働いてもらうことと、人口現象を経済的プロセスにはめ込むこと、つまり労働者の数や消費者の数を経済に組み込むことで成立するからです。 (続く)

2014-05-18 21:27:45
zutabukuro @ClothSack

加えて、資本主義は規律と人口が成長・増大すること、その強化と同時にその使用可能性と従順さが必要でした。資本主義に必要だったのは、労働者の技術や元気(生)が増大しつつも、言うことを聞いてくれるようにするような、権力の方法だったのです。(続く)

2014-05-18 21:28:01
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