2014年5月22日

樋口直人さん『日本型排外主義』の紹介

樋口直人さんの『日本型排外主義』(名古屋大学出版会、2014)の紹介です。大雑把な紹介なので、興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。
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Shotaro TSUDA @brighthelmer

樋口直人『日本型排外主義』(名古屋大学出版会、2014)を読み始めた。まだ1章しか読んでないけど、先行研究の整理が丁寧で、すごく勉強になる。それにひきかえ、ぼくがいま書いている文章は……

2014-05-16 20:11:19
Shotaro TSUDA @brighthelmer

とりあえず序章、1章での重要な指摘は、排外主義運動に参加したり、極右政党に投票する人たちを病人扱いする見解は説得力が低いということ。「経済的に追い詰められた非正規労働者がその鬱憤をマイノリティにぶつける」みたいな図式はステレオタイプ的で、理解からむしろ遠ざかってしまう。

2014-05-16 20:15:25
Shotaro TSUDA @brighthelmer

樋口直人さん『日本型排外主義』第2章。「人びとが相互に孤立し、原子化した大衆社会で排外主義運動は起きる」という大衆社会論的社会運動論に対する批判。むしろ、運動の組織化を担う団体およびその資源と、保守系のイデオロギーの影響が重要だという指摘。

2014-05-19 02:50:00
Shotaro TSUDA @brighthelmer

引き続き『日本型排外主義』3章。この章では、排外主義運動への参加者がもともと排外主義と親和的な政治的社会化を経ていることが論じられる。人間関係や政治的な事件、歴史認識との関係のなかでどのように排外主義の素地が作られたのかが運動参加者への聞き取り調査をもとに明らかにされる。

2014-05-19 19:00:04
Shotaro TSUDA @brighthelmer

引き続き『日本型排外主義』4章および5章。4章ではイデオロギー的に排外主義に親和性を有する人びとが実際に運動に参加する要因をフレーム概念を使って考察。ここでの白眉は、イデオロギー的に親和性があっても外国人問題には関心のなかった人たちがどのように排外主義に引き寄せられるのかの分析。

2014-05-20 18:33:04
Shotaro TSUDA @brighthelmer

5章は排外主義運動にネットが持つ意味の考察。ネット以外の情報伝達手段を持つ既存組織に対し、それを持たない排外主義運動がネットを有効に活用している様子が分析される。ただし、政治的な立場を変えるほどの力がネットにあるわけではなく、むしろ「既存の立場を拡張する」役割を果たすという。

2014-05-20 18:34:29
Shotaro TSUDA @brighthelmer

引き続き『日本型排外主義』6/7章。6章では「言説の機会構造」という概念によって右派論壇の言説と排外主義運動の関連性が分析される。近隣諸国への批判や歴史問題という面で両者は親和性を持つ一方、排外主義運動が外国人排斥を強調し、中国よりも韓国に敵意を向ける点で相違点もある。

2014-05-21 19:09:39
Shotaro TSUDA @brighthelmer

そのズレを説明する要因として、6章ではサブカルチャー(マンガ、ムック)の存在が挙げられている。この分析は非常に説得的だと思う。なぜサブカルチャーで中国よりも韓国が敵視されるのかという点について6章では論じられていないが、それは後の章で検討されるのかもしれない。

2014-05-21 19:10:57
Shotaro TSUDA @brighthelmer

7章は外国人参政権の問題に焦点が当てられる。安全保障という観点から移民の問題が論じられるのは日本に限った話ではないが、「国境地帯への在日外国人の大量移住」といった妄想的フレームに沿って外国人参政権が安全保障の問題へとすり替わっていく過程が日本的特性として論じられる。

2014-05-21 19:14:44
Shotaro TSUDA @brighthelmer

8章では、ブルーベイカーの「3者関係モデル」に基づき、東アジアの国際情勢の変化が在日コリアンに対する攻撃へと結びついてしまう構造が分析される。

2014-05-22 20:02:16
Shotaro TSUDA @brighthelmer

3者関係モデルとは、ある国家の政府とその領土内に暮らすマイノリティという2者関係のみを見るのではなく、マイノリティの祖国をも分析の視野に入れたモデル。最近のウクライナ情勢で言えば、ウクライナ政府とロシア系住民との関係のみならず、ロシア政府の動向も分析対象になるということ。

2014-05-22 20:03:20
Shotaro TSUDA @brighthelmer

8章では、日本政府が在日コリアンと直接に向き合うのではなく、第3者たる韓国、北朝鮮の両政府や国連などとの関係に基いて在日コリアンに対する処遇を変えてきたことが論じられる。したがって、韓国や北朝鮮との関係が悪化すれば、そのまま在日コリアンに対する逆風が強くなってしまう。

2014-05-22 20:04:22
Shotaro TSUDA @brighthelmer

ここでの鮮やかさは、2者/3者関係モデルという分析概念が規範概念へと読み替えられていく点にある。集団の動向を分析するための概念が、日本政府が外交関係とは切れたところで在日コリアンと正面から向き合うべきだという(3者関係ではなく2者関係)規範を示す概念へと切り替えられている。

2014-05-22 20:06:27
Shotaro TSUDA @brighthelmer

本書のエピローグでは、与那国島の政治力学に関する分析とともに、同島が外国人に乗っ取られるという虚構に沿って同島が「国防の最前線」へと変化していくマッチポンプ的な過程が分析される。

2014-05-22 20:07:43
Shotaro TSUDA @brighthelmer

補遺は本書の方法論に関する説明。以前にツイートしたライフヒストリーが事後的に構築されてしまう問題についてはここでちゃんと触れられていた。デスヨネー。参与観察を避けた理由として「調査といえども排外主義運動に参加したくなかった」という点に研究者としての倫理を見る。

2014-05-22 20:08:58
Shotaro TSUDA @brighthelmer

最後に総括しておくと、日本の排外主義運動を学問的に研究した著作として、依拠するにせよ批判するにせよ『日本型排外主義』は間違いなくメルクマールになる一冊だと思う。分析枠組みが明示され、論旨も明快であることから、 研究書としてはかなり読みやすいと思う。

2014-05-22 20:10:20
Shotaro TSUDA @brighthelmer

本書の最大の問題は価格(4200円)。科研費の出版助成を受けるとこういう価格設定になるのはやむをえないと思うが、学生に買わせるには抵抗がある。方法論の勉強にもなるし、価格がもっと安ければゼミ等で使いたい大学教員も多いのではないだろうか。廉価版の発売が待たれる。(おしまい)

2014-05-22 20:11:50

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