茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第1244回「いい、じいさん」

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート１２４４回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、所感。

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いじ（１）私が高校生のとき、「リトル・ロマンス」という映画があった。この中で、ダイアン・レーンがハイデガーを読んでいるシーンがあって、私は、自分の好きな女の子は『存在と時間』を読んでなければならない、と決めたのだった。この映画の中に、いいおじいさんが出てくる。

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いじ（２）ダイアン・レーンと、テロニアス・ベルナールが、「夕暮れにその下でキスをすると永遠に結ばれる」という伝説を信じてベニスのため息橋に向かうのであるが、その旅の道連れになるのが、いい感じのおじいさんで、そのおじいさんが自転車に乗るシーンが、好きであった。

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いじ（３）主演の二人は、こんな感じ。content.internetvideoarchive.com/content/photos…　それで、おじいさんも、枯れた、いい感じで、こんな感じであった。「リトル・ロマンス」は、出ている人が、みんないい感じなのである。 pic.twitter.com/wvCvONsuiK

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いじ（４）それで、「リトル・ロマンス」を観た時点では、私はまださほど古典的な映画の名作を見ていなかったのだけれども、とにかく自転車に乗ったじいさんがいい感じだなあと思って、当時インターネットなんてないから、劇場でパンフレットを買って読んだら、その人がローレンス・オリビエだった。

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いじ（５）その時点で、私の映画のリテラシーは初心者だったのだけど、とにかく、『リトル・ロマンス』に出ているいい感じのおじいさんが、ローレンス・オリビエで、歴史に残る名優で、そんな人が、おじいさんになって、自転車に乗ってハアハアいう映画に出るという、そんな流れが素敵だと思った。

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いじ（６）大学生になって、ローレンス・オリビエという名前を手がかりに、いくつか古典的名作を見た。たとえば、エミリー・ブロンテ原作の「嵐が丘」。オリビエはもちろん主人公のヒースクリッフ役で、デモーニッシュで、ワイルドな美男子を好演している。そして、ヒッチコック監督の

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いじ（７）『レベッカ』。ローレンス・オリビエは、この映画で１９４０年のアカデミー主演男優賞を得ている。その頃の彼の風貌は、こんな感じ。シェークスピア俳優としても名声を博したオリビエ。じいさんになってハアハアいいながら自転車乗るのがいい pic.twitter.com/SQUC9u1J9E

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いじ（８）誰だって年とるのはイヤだし、だんだんいろいろ衰えてくるし、いつかは死んじまうし、まあ、仕方がないことだけど、どうせじいさんやばあさんになるならば、たとえばローレンスオリビエのように、自転車はあはあいって乗っている、味のある人になるのがいいなあと思う。

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いじ（９）あと、今はすっかり枯れちゃった感じの人が、若い時の写真を見ると、すげーいい男、いい女だったりした時の、何とも言えない「あの時は若かった」という無駄に豊かな感じが、実は人生なんじゃないかと思う。とにかく、ローレンスオリビエが若いところからじじいになる感じがいいです。

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以上、連続ツイート１２４４回「いい、じいさん」でした。ローレンス・オリビエは、１９８９年に８２歳で亡くなりました。