#お好み焼き屋浜風 まとめ２【艦これSS】

紅吏珠名 @chrishna_c2

私、浜風には上に１２人の姉と、下に６人の妹がいます。 上から順に、陽炎、不知火、黒潮、親潮、早潮、夏潮、初風、雪風、天津風、時津風、浦風、磯風。私を挟んで、下が谷風、野分、嵐、萩風、舞風、秋雲。以上19名が陽炎型駆逐艦の姉妹です。シ〇プリとか目じゃありませんね。#お好み焼き屋浜風

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子供の頃から言葉通りもみくちゃにされながら育った私でした。上には弄られ、下には弄られ。だからこんなに胸が膨らんでしまったのかと思うと複雑な思いです。長女の陽炎姉さんと次女の不知火姉さんには特に。よく非行に走らなかったと、あの頃の自分を褒めてあげたいですね。#お好み焼き屋浜風

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姉妹の姿に人生の底辺を見てきたので、大抵のことにはへこたれない精神力が身に付きました。そんな幼児体験。姉妹の絆って意外と侮れません。#お好み焼き屋浜風

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鎮守府の艦娘として、女の子の姿で生まれ変わってまだ日の浅い私には、はっきり言って女の子とか姉妹とかそういう自覚がありません。姉たちは焦らなくてもいいよと言ってくれるのですが。そのことが胸の裡のしこりとなっています。#お好み焼き屋浜風

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そんなこんなで、ひとつ下の妹の谷風がお店に遊びに来ています。「よいではないか。よいではないか」谷風とは齢も近いので、19人の姉妹の中で一番気心の知れた間柄ということになるのでしょうか。こら。後ろから抱きついたりして仕事の邪魔をしないでください。#お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「ねーちん、初々しい反応だねえ」この子、見た目は美少女なのに中身は変態オヤジです。最低です。妹じゃなかったらセクハラで訴えています。我が姉妹ながらこの子、誰に似たんですかね。#お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

谷風を引っぺがし、お店の手伝いをさせることにしました。この子、意外と器用です。58機の艦載機と12機のB17による攻撃により投下された137発もの爆弾を神業的な操艦により総て回避したという、勝見駆逐艦長のエピソードがこの子に不思議な力を与えているのでしょうかね。#お好み焼き屋浜風

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もしかしたら店番くらいなら任せられるかもしれません。本人が飽きて途中で投げ出さなければの話ですが。#お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

そろそろ、お店にも人手が欲しくなってきたところです。 谷風に手伝いを任せることも考えたのですが、最近あのダメ提督のもとでレべリングに励んでいる真っ最中だそうで、お店には出られないと言っていました。#お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

現状、龍驤さんが非番でかつ気が向いた時に手伝いに来てくれるのですが、あの子は関西風お好み焼きしか作らないのが玉にキズです。それ以外は完璧に仕事をこなしてくれるのですが。広島風お好み焼きのお店で関西風を作るとか、各方面に喧嘩を売ってるんですかねあの板は。#お好み焼き屋浜風

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そんなわけで、店先にアルバイト募集の張り紙を貼っておきました。 お好み焼き屋浜風では、明るく元気なアルバイトを募集しています。#お好み焼き屋浜風

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期せずしてアルバイトの面接を受けたいという子が見つかりました。特型駆逐艦の電さんです。なんでもお忍びでアルバイト代を稼ぎたいということらしく、ハキハキと受け答えのできる明るい子で、まるっきり知らない子でもないので即採用にしました。#お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「お仕事内容については色々とお勉強してきているのです。えっへん！」 では私はキッチンから見ているだけにしますので、その修行の成果を見せてください。「がってんなのです！」 私はまったりブ〇ックサンダーを食べながら、電さんの仕事ぶりを拝見することにしました。#お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

食材の仕込みも終わり、お昼時にさしかかる頃。さっそく今日のお客さん第一号がいらっしゃいました。 「いらっしゃいま――」 「おかえりなさいなのです。お兄ちゃん！」 ずいぶんと斬新な挨拶ですね。お客さんに向かってお兄ちゃん呼ばわりとは。#お好み焼き屋浜風

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「さぁさ、お席についてくださいなのです！」 まるで本当のお兄さんに甘える妹のように。お客さんの服の裾をつかみ、席に案内しています。 そのまま席に着かせると電さん、なんとお客さんの膝の上にちょこんと座りました。#お好み焼き屋浜風

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なんというか同性の私が見てもドン引きするくらいこの子あざといです。お客さん怒って帰ってしまいませんかね。 「いやぁ。突然妹ができたみたいでお兄さん嬉しいなー」 おや、お客さん。まんざらでもない様子ですね。#お好み焼き屋浜風

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「店長さん。オーダー入りましたなのです！」 あれもこれもおすすめなのです。と目をキラキラさせながら勧めるので、お客さんは困りながらも断りきれなかった様子。 キッチン担当は私の役割なのでテキパキと用意を済ませ、お好み焼きの具の入ったボウルをテーブルまで運びました。#お好み焼き屋浜風

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「じゃあじゃあ、腕によりをかけて作らせていただくのです！」 「よーしお兄さん、電ちゃんの本気を見させてもらっちゃうぞー」 「電の本気をみるのです！」 伝家の宝刀、二刀流のヘラが抜かれます。いまこそ彼女が勉強したという、達人の技が見られるかと思いきや。#お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

電さんは、お好み焼きの具の入ったボウルを、そのまま鉄板の上に乗せ、ぐつぐつと煮込みはじめました。 私は大きくため息をつき、仕方がないと電さんからボウルを取り上げ、代わりに調理を担当することにしました。#お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

熱々の鉄板の上を具材が躍ります。焼けた麺をひっくり返し、残った溶き汁を流しこみ、焼きあがった生地を乗せ、全体にまんべんなく火を通します。お好み焼きの香ばしい匂いがお店の中にたちこめています。 「ではでは最後の仕上げなのです！」 ここまで調理したのは私ですけどね。#お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「電特製、なのです焼きなのです！」 なのです焼き。それは、お好み焼きのソースの上にマヨネーズで「！すでのな」と文字を書いたものでした。 何の変哲もない、それだけのメニューだったものに新しい価値を加えてくれたものです。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

夢心地になってお好み焼きが調理されるさまを眺めていたお客さんはそこで我に返り、電ちゃんのお好み焼きは美味しいよと涙を流しながら食べていらっしゃいました。#お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「お兄ちゃん。いってらっしゃいなのです！」 お客さんは大変満足そうな顔でお店をあとにしました。 しかし、お好み焼きに使うマヨネーズをほんの少し増量するだけであんなに満足していただけるなんて、よほどマヨネーズが好きな方なんですね。#お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

電さんがアルバイトを始めたきっかけは、簡単に言うとお金のため。誰かにプレゼントしたい物があるから、そのためにお金がほしいのだそうです。同じお金でも、鎮守府からいただくお給金では意味がないのだと。こんな健気な子にプレゼントされる相手は、とても幸せだと思います。#お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

ですが、どうやら基礎の基礎から教え込む必要がありそうです。 「あわわ！？　お、お皿さん、落ち着くのです！」 基本的にミスが多い。接客以外の仕事が全然ダメです。掃除をすればエントロピーの法則に従って物を散らかす。食器を運ばせればご覧の有り様。#お好み焼き屋浜風