深海長門外伝

深海棲艦の長門(深海長門@艤装解除白面骸鬼(指輪)@nagato_bs_)の提督が執筆した日記、深海長門の外伝を纏めました。 ※一部グロ表現があるので、苦手な方はお気を付け下さい。
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深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

月も出ない真っ暗な海・・・静寂はついさっきまであった。だが、今はその静寂を突き破り、激しい砲撃音が聞こえてくる。 あちこちに水柱が立ち、鉄屑が海面に漂っている。 そして叫ぶ少女たちの声。 #深海長門外伝

2014-05-25 21:17:22
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

「砲雷激戦、用意ッ!!」 ツインテールでリボンが印象的な少女は艤装から酸素魚雷を発射した。 狙う相手は深海棲艦。人類最大の敵。そして奴らと互角に戦う事が出来る少女たちこそが艦娘と言われた者たちだ。 #深海長門外伝

2014-05-25 21:21:46
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

そしてリ級の艤装の弾薬庫に火が行き渡ったのか、凄まじい爆発となった。敵は跡形もなく黒焦げになって大きな煙が月のない夜空に昇っていく。 「よしっ!仕留めたわ!次!次!」 少女の名は陽炎型駆逐艦一番艦陽炎。 優秀な駆逐艦の1隻だ。 #深海長門外伝

2014-05-25 21:30:25
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

陽炎は次の敵を狙おうとしていた。 実績があり、練度も高い彼女はこの艦隊を支える1人だ。秘書艦の経験もある。 だが・・・そんな彼女はハッとする。その声に。そして恐れていた事が巻き起こる。 「危ない!!」 「!?」 #深海長門外伝

2014-05-25 21:34:28
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

油断だった、いつもならこんな事にはならないはずなのに。 だが、慢心をしていたのは事実。勝利に浮かれ次の勝利にしか目がなかった事が・・・。 深海棲艦の1隻の砲撃が陽炎の背を襲った。 艤装の半分が砕け、彼女の背中はひどい火傷状態になっていた。 #深海長門外伝

2014-05-25 21:37:57
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

皮どころか肉すらえぐられている・・・。 リ級の時のお返しとも言える有り様だ。状態としては中破扱いだが、ほとんど大破に近い。 「大丈夫ですか、陽炎」 そんな彼女を心配して一人の少女が駆け寄る。 #深海長門外伝

2014-05-25 21:42:34
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

「だ、大丈夫よ、不知火・・・こんくらいへっちゃらっへっちゃらっ・・・アハハ」 苦笑いを浮かべる陽炎を観て、不知火と呼ばれた少女は呆れていた。 「とても大丈夫には観えません」 「で・・・でも。大丈夫なのよっ・・・」 #深海長門外伝

2014-05-25 21:46:09
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

不知火はため息を吐く。周りを見回せは他の艦娘たちが深海棲艦を一掃したのか、海は再び静寂を取り戻していた。 だが、静寂は気休め程度にしか過ぎない。奥に進んで深海棲艦の親玉を倒さない限りはまた送り込まれる事だろう。 #深海長門外伝

2014-05-25 21:48:28
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

だが、ここに大破に極めて近い中破の陽炎が居る。 彼女をこれ以上戦わせるのは大変危険だ。それにここに置いていくわけにも行かない。誰か一人をここに残す事にしてもそれでは戦力を2人も欠けた状態で戦うのも危険だ。 #深海長門外伝

2014-05-25 21:50:53
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

だとすれば答えは一つ。引き返す事だ。 引き換えせばいい、そうすればまたこの海に戻って戦えるのだから。 仲間を大事に想うのもまた艦娘だ。 「旗艦である重巡に知らせてきます」 「あっ・・・待っ・・・痛ッ!!?」 #深海長門外伝

2014-05-25 21:53:08
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

不知火を止めようとしたが、それを遮るかのように激痛が走る。 やっぱりこれ以上は無理なのかしら・・・。 悔しい想いに心が押し潰されそうになる。 慢心さえしなければこんな事にならなかったはずだと。 #深海長門外伝

2014-05-25 21:54:48
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

すると向こうから怒鳴り声が聞こえてきた。その声は不知火だった。いつもはあんなに大声も怒鳴る事もないはずなのに。 今回はいつもと違いすぎる・・・何故だ? 怪訝に思う陽炎の前に不知火が戻ってきた。 いつもより険しい表情となって、さらに暗く・・・。 #深海長門外伝

2014-05-25 21:58:14
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

「どうしたの・・・」 「指令が・・・」 「指令が?」 「そんなのは関係ない、気にする事もなく突き進めと・・・」 「・・・そう」 不知火が怒鳴っていた原因はこれだ。 彼女たちを指揮をする者、提督。 不知火たちは指令と呼んでいるのだが。 #深海長門外伝

2014-05-25 22:01:06
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

そんな指令が負傷した陽炎の事を気にするなと言ってきたのだ。 こんな事ならいつもは言わないはずなのに・・・。 いや、少し前からおかしかった。 他の艦娘との噂では次の戦いで勝利する事が出来れば階級が上がるという事を。 それを気にしての事だろうか? #深海長門外伝

2014-05-25 22:03:08
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

「中破進軍って奴ね・・・いいわ、行きましょ」 「いいのですか、陽炎!?今は命令無視をしてまでも」 「これは・・・私の失態よ。それなら自分で汚名返上するしか・・・」 「ですが・・・」 #深海長門外伝

2014-05-25 22:05:10
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

「命令だもの・・・それは絶対なの。私たちに逆らう権利なんてないわ・・・そうでしょう?艦船で人の力なしには動けなかった私たちに自分で動かせる手と歩ける足をくれたのよ・・・だったら、その恩があるから・・・戦わなきゃ、皆のために・・・」 #深海長門外伝

2014-05-25 22:08:33
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

彼女たち艦娘が戦う理由の一つがこれである。自由をくれたのだ、人間が。 人間と同じ事を、体験を、経験を・・・その素晴らしさを与えてくれたのだ。 それなら、恩を返そう・・・このすべてを懸けてこの海を護る事を。 #深海長門外伝

2014-05-25 22:10:27
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

この事は艦娘なら誰もがわかっている事だ。決して歴史に刻む事のないだとしても誓ったはずだ。不知火も例外ではない。 「わかりました・・・護ります、あなたを。不知火が護ります!」 そう言い、陽炎を優しく抱き締める不知火。 想いは、決意は固まった。 #深海長門外伝

2014-05-25 22:12:59
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

艦隊は奥に突き進む。 そして艦隊は羅針盤に導かれ、たどり着く。 タ級を旗艦とした深海棲艦の艦隊に。 何度もこういった編成での敵と戦ってきたのだ、今回も速攻で勝負が決まるはずだと。 #深海長門外伝

2014-05-25 22:15:23
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

旗艦の戦艦の合図で戦いが始まった。 艦娘と深海棲艦による同時砲撃。 海は一気に荒れ、まさに戦場と化した。 さっきまでの戦いとはさらにその上を行く激戦だ。 そんな戦いの中でも不知火は陽炎の傍を離れる事はなく、戦っている。 #深海長門外伝

2014-05-25 22:19:47
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

いつものような速度は出せず、陽炎を放っておくわけにも行かないので存分に戦えない。 せめて敵がこっちに来る事がなければいいのだが・・・。 陽炎は思った。 足手まといになっている事に。不知火は自分を庇ってくれるのは嬉しい。 #深海長門外伝

2014-05-25 22:22:11
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

だが、それと同時に彼女を危険に晒しているという事が胸が締め付けれる想いだった。 無事に勝利して生き残れたとしても心の傷が大きく残りそうだ・・・ああ、私は何故、油断なんて・・・。 「!!」 陽炎は気配に気付いた。 海面の下に何かが居る事に気付いた。 #深海長門外伝

2014-05-25 22:24:37
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

深海棲艦だ。敵駆逐艦だ。 そいつは海面を突き破ると同時に魚雷を発射した。 距離が近すぎる、避けられない。 だったら!! 「・・・ッ・・・陽炎!?」 陽炎は不知火を力の限り、体当たりをした。ぶっ飛ばされた不知火の目に飛び込んできたのは光景は・・・。 #深海長門外伝

2014-05-25 22:27:31
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

魚雷に直撃した陽炎の姿。 炎が体のあちこちに燃え上がり、広まっていく。 炎の熱が彼女を容赦なく包み込もうとしている。 体を振るっても火は消えない、絶望が消えない・・・。 そして・・・艤装に火が付き、弾薬庫の火薬が誘爆した。 #深海長門外伝

2014-05-25 22:33:09
深海長門@白面骸鬼(指輪) @nagato_bs_

巻き上がるキノコ雲・・・完全に彼女の体を炎に包まれた。 「陽炎・・・陽炎!!」 不知火は叫ぶ。 海面に倒れ込み、少しずつ沈んでいく陽炎に駆け寄りながら・・・。 何度も叫ぶが陽炎には届かない・・・ただ、陽炎のは微笑んでいた。 まるでこう言っているようだ。 #深海長門外伝

2014-05-25 22:35:37
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