「ザ・アタック・オン・ネイキッド・ミドル・エイジド・メン」#2

テキストカラテ・ドージョー @mpb_karate

大気汚染の進んだネオサイタマは、太陽の光を浴びることが滅多に無い。それでもこの街が闇に包まれないのは、大衆に消費行動を促す欺瞞めいたネオン看板のせいである。それは丁度、化粧で醜さを誤魔化すエンシェント・オイランによく似ている。 1

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強い光は、闇を一層濃くする。ブッダがこの街の闇に手を差し伸べないのは、強い光に目が眩み、闇の中まで見通すことができないからであろうか？たとえば、繁華街の路地裏に連れ込まれた豊満な女が、今まさにヨタモノによるファック＆サヨナラの餌食になろうとしていることも、彼には見えないのか？ 2

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「ンアーッ！」顔を殴られた女の悲鳴は、欺瞞めいた合成マイコ音声広告に呑まれて消えた。「嫌です、やめてください」「ダイジョブダッテ！すぐ嫌じゃなくなるからさ」笑うヨタモノのサイバーサングラスには『死んだら終わり』の文字が点滅している。 3

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サイバーサングラス男は、女の衣服を引きちぎった。「ンアーッ！」女の豊満な胸があらわになる。モヒカンの男とナイフを持った男が、それを下卑た表情で品定めするように眺めている。「最初は俺でいいよな」「アッハイ」「アッハイ」サイバーサングラス男の問いかけに、二人は肯定の返事をした。 4

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サイバーサングラス男はベルトを外し始めた。彼らの行動を止めようとする者は誰もいない。そう、そんな人間は、誰も。 5

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その時である。「ファック＆サヨナラに対抗して…ファック＆ファック！」「ア？」暗闇の中から聴こえる声に、ヨタモノ達は一斉に反応した。聴こえたのは、特徴的な足音である。ヒタヒタと、まるで、ネオサイタマのコンクリート大地を裸足で踏みしめているような。 6

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表通りから差し込むわずかな光が、近付いてくるそれの姿を映し出す。確かに素足であった。しかし足だけが特別なわけではない。彼はその体に衣服を纏っていなかったのだ。突き出た腹、怒張した下半身。そして中年男性めいたその顔には…メンポである！ 7

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「ア？オジサン、何？」「酔っ払ってんの？」「スッゾ？スッゾ？」幸か不幸か、バリキドリンク過剰摂取の影響により、ヨタモノ達はそのメンポが何を意味するのかは理解できない。ナイフを持ったヨタモノが、全裸中年男性に近付いた。 8

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「オジサン、どうしたの？俺達の遊びに入れてほしいワケ？そんなおっ立てちゃってさ」全裸メンポ中年男性は、近付いてくるナイフ男をじっと見つめている。「テメッコラー、何か言えよッコラー」楽しみを邪魔されたヨタモノは、不遜な態度の中年男性にナイフの切っ先を向ける。 9

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しかし次の瞬間、ヨタモノは奇妙な事に気付いた。先ほどまで手に持っていたナイフが、見当たらない。いや、違う。ナイフだけではない。ナイフを持っていた右手自体が、ケジメされているではないか！「アッ、アイエエエ！？」手を失ったヨタモノは叫び声を上げた！噴水めいて噴き出す血液！ 10

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では、そのケジメされた手はどこに行ったのか？読者の中にニンジャ動体視力を持つ者がいれば気付いただろう。そう、彼の手は、全裸メンポ中年男性の手の中に、先程までと同じ形で存在しているのだ！ナムサン！本人も気付かないほどの速度で、手をもぎ取ったというのか！？ 11

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「アイエエエ！？」「ナンオラー！」「ス、スッゾオラー！？」訳も分からずスラングを飛ばすヨタモノ達。彼らが見ている前で、全裸メンポ中年男性はオジギをした。「ドーモ、ネイキッドです」 12

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ネイキッドの放つ異様なアトモスフィアにより、ヨタモノ達はようやく事態を理解し始めた。「ニンジャ…」「ニンジャナンデ…？」手をもがれたヨタモノは、手のあった部分を残った左手で押さえながらただ喚いている。彼らの見ている前で、ネイキッドはヨタモノの手をナイフごと…自分のケツへ！ 13

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「これがフィストファックじゃ！」おお、ブッダ！ネイキッドは…そのナイフを、その手を…ケツの中に…ブラックホールめいて極限大挿入したというのか！？「「「アイエエエ！？」」」あまりに冒涜的なその光景に、ヨタモノ達は揃って失禁！ 14

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対するネイキッドは、メンポの奥で恍惚の表情を浮かべながら、その全身を青白く発光させ始めた。そして、ズボンを脱ぎかけていたサイバーサングラスのヨタモノに、その股間を極限大怒張させながら近付いていく。「そしてこれがファック＆ファックじゃ！」 15

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「オゴゴーッ！」「死んだら終わりに対抗して…イくならお尻！貴様もお尻でイクんじゃぁ～！」「アバッ、アババーッ！」…先程までファック＆サヨナラされそうになっていた女は、豊満な胸をむき出しにしたまま、この現実とは思えない光景を眺めていた。 16

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精神に激しい負荷が掛かり過ぎた彼女の本能は、眼前で起きていることの理解を避けたのである。逃げなくては。急速に冷静な思考を取り戻した彼女は、這うようにしてその場を後にした。…「ヤメロー！ヤメロー！」「ヨタモノに対抗して…出たモノ！」「アバババーッ！」 17

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ヨタモノ達の叫び声は、欺瞞めいた合成マイコ音声広告に呑まれて消えた。彼らの悲鳴を聞いているのは、ただ、ニンジャのみである。…ただし、そのニンジャは一人とは限らなかった。「オウ、悪いなァ、お楽しみの所」 18

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嘲るような口調でネイキッドに背後から声を掛けたのは、白めいた灰色のニンジャ装束を着たニンジャ。その胸には、クロスカタナのエンブレム…ラオモト・カン率いる暗黒ニンジャ組織、ソウカイヤのニンジャである！「ドーモ、初めまして。ワナメーカーです」 19

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「グフフ、ドーモ、ワナメーカー＝サン。ネイキッドです」ちょうどモヒカン男との強制ハッテン前後行為を終えたばかりのネイキッドは、なおも股間を怒張させたままアイサツした。「間違いねェ、テメェだ。俺がとっ捕まえなきゃならねェ野良ニンジャってのは」ワナメーカーは顔をしかめて言った。 20

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ワナメーカーは、つい数時間前ソウカイヤからミッションを受けたばかりであった。ここ数日、このネオサイタマで、全裸にメンポの中年男性が何度も目撃されている。更に、ハッテン前後の後殺されたと思しきヨタモノが複数発見された。 21

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ファック＆サヨナラは、このネオサイタマではチャメシ・インシデントである。しかし男が、しかもこの短期間で複数被害に遭うというのは実際珍しい。これらの情報を結びつけた上からの指令。即ち、ソウカイヤのテリトリーで好き勝手するその変態ニンジャをスカウトするか、爆発四散させること。 22

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こんな異常者をスカウトしてどうするつもりなのか。ネイキッドの周りに倒れたヨタモノ達を眺めつつ、ワナメーカーは訝しんだ。噂の死神によってシックスゲイツが次々と倒され、ラオモトの懐刀であるダークニンジャまでもが戦闘不能。人員不足が故のスカウトであろうか？ 23

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「面倒臭ェから手短に説明するぜ」ワナメーカーは考えるのをやめた。「俺はソウカイ・シンジケートから来た。テメェのそのクソみてぇな性欲を、このネオサイタマの秩序の為に使ってやろうって話だ。俺と来るか、ここで死ぬか、どっちか適当に選べ。7秒以内に」 24

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ワナメーカーは7秒待った。ネイキッドはニヤニヤ笑いながら、その目をぎらつかせているだけ。よし、殺そう。ワナメーカーは決心しカラテを構えた。こんな変態はさっさと爆発四散させて、上に報告したらその後はオイランと前後しよう。 25