こんにち、カタカナ語による「コミュニティ」という単語を気安く使うことの危うさについて

ある程度のまとまりを持つ社会集団の、職業共同体(生産共同体/生存共同体)=近世から賃金共同体=近代への移行
17
西沢大良 @tairanishizawa

コミュニティ(共同体)という言葉を使って修論を書く若者へ: コミュニティという言葉には気をつけた方がいいなあ。今の建築界がコミュニティと呼ぶのは、たいてい近世集落か近世都市の美化ですよ。近世に集落を拡大させた地域では美化(夢想)が起こり易い。日本がそうだし西欧も別の意味でそうだ

2014-05-29 23:58:13
西沢大良 @tairanishizawa

→ただし近世のコミュニティの実態は、ムゴいものなのです。そのムゴさを知らないと、そのうち近代から近世に帰れって言う人になる。僕はここ数年間、そのことをそこら中で説明してるのよ。でも先々週の学会鼎談でも共同体が美化されてたから、説明してもダメかもね。。。以下はダメモトのツイートです

2014-05-30 00:02:03
西沢大良 @tairanishizawa

→元々近世集落は、農地や漁場や鉱山などの「特殊な土地」に定住するという生存拠点です。「特殊な土地」の生産力に依存して、それを元手に生き延びるという生存戦略が、近世集落に行き着いた(詳細は新建築2011年10月号の西沢論文参照)。ただし近世集落に住んでるのは、実は人間ではないです

2014-05-30 00:04:58
西沢大良 @tairanishizawa

→近世集落に住んでいるのは世帯なわけですが、今の世帯とは別モノです。近世集落の世帯とは、例えば12人家族がいるとして、その12名が集まって1匹の生き物になる、と考える。あるいは12人が牛5頭を飼ってるとして、その17体が集まって1匹になる、と見なされる。(詳しくは柳田国男を参照)

2014-05-30 00:06:36
西沢大良 @tairanishizawa

→そういう一種の複合生物のような存在(世帯)が、近世集落の主体です。だからその主体(世帯)が存続するために、姥捨や枝打ちや嫁入りが行われる。今日1人の命の存続のために片足や片腕を切り落とすのと同じです。近世集落では生存権は個人にはなく、世帯にあるのです。それって最悪ですね。 

2014-05-30 00:07:44
西沢大良 @tairanishizawa

→さらに近世集落のコミュニティとは、その1匹1匹が、数匹集まって形成される化け物のような生命体のことです(学問によっては生産共同体や生存共同体と言う)。この化け物の存続のため、世帯の財産も行動も思想も制限される。ますます最悪だ。(英国近世の自営農民の話は長くなるから割愛します)

2014-05-30 00:08:37
西沢大良 @tairanishizawa

→近世集落のシキタリや法は、この化け物の存続のためのもの(共同体・コミュニティの存続のためのもの)。だから近世集落の財産や権利は共同体に帰属して、個人には帰属しない。商品交換も個人どうしでなく、共同体どうしで行う(共同体が認めた場合は世帯どうしで行う)。やっぱり最悪ですね。

2014-05-30 00:11:02
西沢大良 @tairanishizawa

→このメカニズムを移植したのが近世都市。封建制が成立すると、個々の封建領主が移植を行った。近世都市のコミュニティは近世集落の都市版なので、いわば職業共同体になる。中世のギルドや宗教も、改めて職業共同体の1つになる(だから近世にはアジールがなく、負債や因縁を裁ち切れない。最悪です)

2014-05-30 00:12:16
西沢大良 @tairanishizawa

→近世都市の住民、例えば江戸の町人地の住民は、基本的に近世集落から来ましたね(武家地の連中はラチられて江戸に来た)。ただし近代都市みたいに賃労働(就職やバイト)のために都市に来たわけではないですね。じゃあなぜ来たの?ザックリ言うと次のとおり。これもかなり最悪です。

2014-05-30 00:13:37
西沢大良 @tairanishizawa

→近世集落にいる化け物共同体が、口減らしのため世帯Aの末っ子Aを放出したいと領主に届け出る。しばらくして「そのほう江戸に召し仕える」と言われた末っ子Aは、関所をくぐって江戸に着く。江戸では「人形作りを申し付ける」と言われ人形町に住む。それって今の強制送還+強制労働だ。最悪です。

2014-05-30 00:20:48
西沢大良 @tairanishizawa

→箪笥町であれ牡蠣殻町であれ強制労働の名残りです。銀座もそうです(貨幣鋳造業)。江戸は職業ごと(階級・職業・人種・宗教のどれかごと)にゾーニングされている。西欧の都市は江戸までキッチリしてないが、大きく見れば同じです。西欧では道路名に強制労働の名残りがある。西欧の近世も最悪だ。

2014-05-30 00:21:58
西沢大良 @tairanishizawa

→その受け皿が、近世都市の「階級的なゾーニング」。階級・職業・人種・宗教のどれかごとに居留地を整備する。しかも、そのゾーニングは江戸では堀、西欧では壁で囲われる。それは外敵から都市を守るためというよりも、末っ子Aの脱走を阻止するため。今で言えば刑務所の塀と同じ役割。最悪ですね。

2014-05-30 00:24:36
西沢大良 @tairanishizawa

→末っ子Aは、職業選択や住まいの自由とは無縁の世界にいる。賃労働は皆無じゃないけれど、今の刑務所の強制労働のような単価です。末っ子Aが江戸で人形をつくるのは、たまたま長男じゃなかったから。そして人形町にたまたま余録があったから。全部たまたまです。ロシアンルーレットみたいに最悪だ。

2014-05-30 00:26:54
西沢大良 @tairanishizawa

→そんなの嫌だ〜と言って発狂する末っ子Bもいた。でも集落であれ都市であれ、狂人や引きこもりを抱えた共同体は、生産力を落として疲弊する。だから末っ子Bはお寺に放出される。お寺も職業共同体に改造済みだから、別の強制労働が待っている。西欧では教会が似たことをした。近世の制度宗教は最悪だ

2014-05-30 00:29:43
西沢大良 @tairanishizawa

→もちろん強制労働者たちの間には助け合いや協力が生じる。連帯や職業倫理が生じる場合もある。でもそれは今の刑務所で生じるのと同じです。 以上が近世のコミュニティの実態です。 こんなコミュニティのどこが良いのかなあ。。。まったく理解できないわ。つーか理解しちゃダメだわな。

2014-05-30 00:32:52
西沢大良 @tairanishizawa

→最後にもうひとつ。 以上の近世都市を変形して生み出されたのが、近代都市なのです。だから近代都市では、特定のコミュニティしか生まれない。近世の時点では職を求めて都市に来たから、職業共同体が生じた。近代では賃金(バイトや就職)を求めて都市に来るから、賃金共同体が生じることになる

2014-05-30 00:34:54
西沢大良 @tairanishizawa

→近代都市では賃金共同体(や資金共同体)しかできないんです。総評は典型的な賃金共同体、共産党はソ連からの資金共同体、自民党はCIAからの賃金共同体、新左翼は経済同友会からの資金共同体、官僚は税金共同体、全中は農家の預金共同体、などなど。どこもかしこもそういう共同体になってしまう

2014-05-30 00:36:38
西沢大良 @tairanishizawa

→近代化の初期だからダメな集団ばかりできた、とは言えないよ。最近も同じだもの。オーム真理教は可処分所得の献金共同体、ネオナチは失業者共同体、ネトウヨは低賃金共同体。近代都市を整備し続けると、どんな善意や社会活動も、賃金共同体(資金共同体)に変形させられる。これが近代都市の底力。

2014-05-30 00:39:33
西沢大良 @tairanishizawa

→もちろん、今コミュニティという言葉を使う人のうち、上記の問題を承知して、それでもベターな言葉がないから仕方なく使う人もいる。そういう人は読めば分かるよ(今は分かりにくくても、近代都市の次の都市形態に移行した後に読めば、確実に分かる。今近世の文献を読むと洗いざらいわかるのと同じ)

2014-05-30 00:45:10
西沢大良 @tairanishizawa

→仕方なくコミュニティという言葉を使う人は、新しい言葉をつくった方がいいです。これについては私案があるんだけど、それ説明すると2万字くらいになるから、ツイートじゃ無理です(そのうち新建築に書きます)。 とにかく若い皆さんは、コミュニティという言葉に用心して、修論を書いて下さいね

2014-05-30 00:47:32

以下、@rt_white さんによる、こちらも力の籠った連ツイ。良いクリティークは、別の良いクリティークを生む。良い建築は、別の良い建築を生む。


立石遼太郎 @rt_white

西沢さんの一連のツイート読んだ。みんなフォローしてるだろうからリツイートは省くとして、若い世代が言うコミュニティは西沢さんが鋭く指摘する、歴史的な共同体と全く意味が違う。ってのも、まーだれでもわかるからいいとして、俺があえてツイートするとしたらソシュールの言語観かな。

2014-05-30 01:06:15
立石遼太郎 @rt_white

ソシュールは、同じ言葉でも時代によって意味は変わるってことをきちんと把握し、かなり肯定的に捉えてる。そもそも言葉の意味ってのは恣意的だってのが彼の主張。だから言葉の意味が変わるのは当たり前なんだ。例えばネットって言葉が輸入された当初は、網って意味しかなかったと思うんだけど、

2014-05-30 01:08:43
立石遼太郎 @rt_white

現代では説明するまでもなく、ネットの意味は増えている。ネットワーク構造のことを指したりインターネットのことを指したり…と。むしろネットって聞いてまず網を思い浮かべる人は現代においてはかなり少なくなってんじゃないかなと思う。

2014-05-30 01:10:10
立石遼太郎 @rt_white

ソシュールは言語システム(専門的にはラングっていう)を通時態と共時態という二つの時間観にわけて考えている。通時態はある言葉を歴史的変遷も含めて考える方法で、共時態は歴史を括弧に入れて、今現在、ある言葉がどういう意味を持つかという観点から言語を考えていく方法のこと。

2014-05-30 01:12:22