福島原発事故による甲状腺被曝線量はどれだけか?―Cyborg0012さんによる『国連科学委員会(UNSCEAR)2013年報告書』の検証

 2011年3月11日の東日本大震災にともなう福島原発事故によって、放射能汚染が広範囲に広がり被曝による健康被害が懸念されています。健康被害をどう考えればいいのでしょうか。  以下では、そのために、2014年4月2日に原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)によって公刊された福島原発事故の放射線に関する報告書の内容を検証してみましょう。とくに甲状腺被曝に焦点があてられます。  甲状腺被曝線量はどのくらいなのか、小児甲状腺癌のリスクはないのか、チェルノブイリの被曝線量と比較できるのか。Cyborg0012さんによる考察のまとめです。(全58ツイート)(2014年5月31日作成)   続きを読む
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cyborg001 @cyborg0012

福島小児甲状腺がんの「識別可能な増加リスク」に言及した『国連科学委員会2013年報告書』の重要性について(1) 連投ツイート、失礼いたします。

2014-05-31 01:49:50
cyborg001 @cyborg0012

2013年10月25日、国連科学委員会が68会期国連総会に、福島第一原発事故による放射線被ばく影響に関する調査報告を提出した。2014年4月には、科学的基礎となる添付資料(Appendix)が追加された311頁の報告書(以下UNSCEAR2013年)が公表された。

2014-05-31 01:51:32
cyborg001 @cyborg0012

UNSCEAR2013について大手マスコミ各社は「福島原発事故による健康被害はない」との論調で報道していた。

2014-05-31 01:53:51
cyborg001 @cyborg0012

しかし、以下の国連の広報がまとめるように、UNSCEAR2013報告書は「福島の小児甲状腺癌については識別可能な増加は低いながらもありうる」としている。大手マスコミはこの点を(恐らく)意図的に避けた報道に徹していたように見受けられた。 pic.twitter.com/azTOpwOB0M

2014-05-31 02:34:13
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cyborg001 @cyborg0012

これから見ていくように、国連科学委員会が小児甲状腺癌の「識別可能な将来的な増加リスク」に言及し、少なくともその「蓋然性」を認めた意義は、極めて大きいと考えられる。

2014-05-31 02:35:52
cyborg001 @cyborg0012

周知のように、チェルノブイリ原発事故では、Nature論文を受ける形でWHOが1993年にチェルノブイリ事故による小児甲状腺癌の発生を公的に認めた他は、1996年に至るまでIAEAやUNSCEARは因果関係を10年間も頑なに否定し続けた。

2014-05-31 02:37:04
cyborg001 @cyborg0012

これに対して、福島原発事故では、事故から3年の段階で放射線影響に関する国際専門機関が「識別可能な増加」、もしくはそのリスクの蓋然性を事実上(公式的見解として)認めたのである。

2014-05-31 02:38:49
cyborg001 @cyborg0012

福島の小児甲状腺癌の将来的増加リスクに言及したUNSCEAR2013年報告書の意義は、それが放射線影響を低く見積もる傾向にある学者集団の手によるものであるだけに、より重要であり、かつ深刻である。

2014-05-31 02:40:08
cyborg001 @cyborg0012

国連科学委員会のこの報告書によって、(遅まきながらも)小児甲状腺癌について「予防原則」に基づく政策的介入の権威的根拠が示されたと考えることもできる。「風評被害」を盾に一貫して予防原則の適用を拒んできた権力側はブザマにも梯子を外された恰好である。

2014-05-31 02:40:58
cyborg001 @cyborg0012

以下、UNSCEAR2013年報告書について、(1)甲状腺被曝線量評価、(2)甲状腺癌の発症リスク、この2点の論点に絞って連投ツイートをさせて頂きます。少し長い論考ですので、今回は(1)の連投ツートになります。(2)は次回となります。

2014-05-31 02:42:30
cyborg001 @cyborg0012

なお、このツイートに際して、平沼ユリさん、Study2007さん、島薗進さんのツイートや論考から多くを学ばせて頂きました。感謝申し上げます(むろん、誤りがあれば、すべて責任は私のものです)。

2014-05-31 02:43:34
cyborg001 @cyborg0012

(1)小児甲状腺被ばく線量評価について。 UNSCARE2013では、被曝線量評価は個人ベースではなく、地域別・居住地別平均線量(district-settlement average absorbed doses to the thyroid)で試算されている。

2014-05-31 02:46:20
cyborg001 @cyborg0012

被ばく評価のユニットは個人ではなく、地域となる(地域の平均線量)。地域線量は、当該地域に住む1才児、10才児、成人の平均被曝量で推計されている。なお、 「1才児」とは0-5才児の代表、「10才児」とは6-19才の代表を意味する(UNSCEAR2013, p. 86)。

2014-05-31 02:48:48
cyborg001 @cyborg0012

専門的になるが、被曝線量評価の手法であるが、避難民についてはATDM(放射能大気放出・移動・沈着モデル)、それ以外の被曝者については地域別の測定土壌沈着量が使用されている(p. 86)。

2014-05-31 02:49:59
cyborg001 @cyborg0012

注目すべき点は以下。UNSCEAR2013では、福島原発事故時3月26日から30日にかけて原子力安全委員会が実施した30キロ圏外1080人の小児甲状腺スクリーニング検査、および放医研シミュレーションは、(言及はされているものの)推計の科学的根拠としては採用されていない。

2014-05-31 02:51:49
cyborg001 @cyborg0012

話題が逸れるが、原子力安全委員会の甲状腺スクリーニング検査は、IAEAが11年6月に安定ヨウ素剤配布基準を50ミリSvに引き下げることを念頭に行われていたことが公表資料で示されている(以下図)。 pic.twitter.com/oBl1nqbPZs

2014-05-31 02:53:50
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cyborg001 @cyborg0012

また、空間線量率の他に着衣表面のBG値を実測値から差し引いていたことや、マイナス正味値のケースを検査結果から消去するなど、被曝評価に恣意的な操作が加えられていた点なども指摘されている。

2014-05-31 03:02:04
cyborg001 @cyborg0012

さすがのUNSCEARも、この杜撰な簡易検査(原子力安全委員会でさえも、この検査結果から個人被曝線量評価を導くことは不可能としている)、とりわけ政治的配慮が濃厚なこの検査結果を、被ばく線量評価の科学的根拠としては採用していない。

2014-05-31 03:02:59
cyborg001 @cyborg0012

それでは本題に入る。UNSCEAR報告書における福島の子どもの甲状腺被曝量の推計結果を以下に示す。事故時避難地域の子どもの平均が最大80ミリGy、20キロ圏外で避難対象外の子どもの平均が最大50ミリGyと評価されている。 pic.twitter.com/WnQiMhiYyc

2014-05-31 03:06:24
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cyborg001 @cyborg0012

とくに、20キロ圏外の35,000人の子ども(0-5才)については、平均45ミリGyから55ミリGyの甲状腺被ばくを受けたと推計されている(UNSCEAR2013, p. 253)。

2014-05-31 03:09:52
cyborg001 @cyborg0012

安定ヨウ素剤の配布基準は、IAEAで50ミリGy、WHOでは10ミリGy(1999年WHO勧告)である。UNSCEARが35,000人という具体的数字をもってヨウ素剤配布基準に匹敵する甲状腺被ばく(45-55ミリGy)を受けた子どもに言及している意義は大きい。

2014-05-31 03:11:18
cyborg001 @cyborg0012

また、これら推計は地域別平均線量であるので、平均被ばく線量を上回る子どもがいる可能性も指摘されている(UNSCEAR2013、p. 192)。

2014-05-31 03:12:32
cyborg001 @cyborg0012

以下の被ばく線量マップ(UNSCEAR2013, p. 187)では、いわき市などの原発南西方向の地域別・小児甲状腺等価線量が平均50-70ミリGyとして評価されている(以下図参照)。 pic.twitter.com/LTWoSFOKm5

2014-05-31 03:16:03
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cyborg001 @cyborg0012

より詳細なデータ。1才児平均線量換算で、警戒区域(20キロ圏内)では平均15ミリから82ミリの地域、計画的避難区域(飯館村など)では平均47ミリから83ミリGyの地域、その他福島県の地域では平均33-52ミリGyの地域が該当する pic.twitter.com/tuTh6IcHKw

2014-05-31 03:22:08
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cyborg001 @cyborg0012

また、上記表に示されているように、宮城、群馬、栃木、茨城、岩手県(東日本)の平均甲状腺被ばく線量は2.7-15ミリGyと推計されている。それ以外の日本全土は2.6-3.3Gyと評価されている(すべて1才児の平均換算である)。

2014-05-31 03:24:45