1 最近、放課後になると「用事があるから」と、 先に帰ってしまう彼女が気になっている。 今日もまた、断られてしまった。
2014-05-31 19:24:51その後姿を見送りながら、心の中で深いため息を吐く。 右腕の時計を確かめると、午後4時。 5時からのアルバイトのため、俺は一人帰路に着いた。
2014-05-31 19:25:32❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*
2 甘さ控え目のカフェラテを吸い上げながら、 窓際の席からぼんやり外を眺めていると、 すごい勢いで自転車を漕いでいる女の子が見えた。
2014-05-31 19:26:17あれはうちの高校の制服……と思っていたら、 目の前の歩道を左から右へと通り過ぎていったのは、可愛い後輩の千鶴ちゃんだった。
2014-05-31 19:26:50「なんて言うか、すごい顔してたなあ」 思わず声が出てしまうくらい、千鶴ちゃんの顔は必死な感じだった。 写真に撮れたら面白いだろうけど、一くんに怒られそう。
2014-05-31 19:27:29氷が崩れて耳にも涼。 ここはエアコンが効いていて心地良い。でもこれに慣れてしまうと、体力が落ちる。 僕はバッグを肩に引っ掛けて、席を立った。
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3 スーパーでお買い物をすませ、それを持っておばあちゃんの家に行く。 原田先生に紹介された秘密のアルバイト。 それは、先生の家の近所のおばあちゃんの夕飯作りをする、というもの。
2014-05-31 19:28:41一人暮らしのおばあちゃんが、先日右腕を骨折してしまったので、 1ヶ月くらい、夕飯を作りに行って欲しいと頼まれたのだ。
2014-05-31 19:29:03先生は学校以外でも、優しいんだなと思って、私はすぐに引き受けた。 最初はお手伝いのつもりで通っていたのだけど、おばあちゃんはそれでは気がすまないから、とアルバイト代を出してくれることになった。
2014-05-31 19:29:24私はそれで、斎藤さんにプレゼントを買うことに決めた。 もうすぐ、お付き合いを始めて節目の時がくるから、 感謝の気持ちを形にしてみようと。
2014-05-31 19:29:39❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*
大した金額でもないのだが、継続は力なり。 使い道がないと貯まっていくものだ。 部活動に必要な道具を買おうとしても、 目ざとい姉が両親に先に報告するものだから、有難く使わせてもらっている。
2014-05-31 19:30:53一足早く社会人になった兄曰く、 将来のために貯蓄することは男子には特に必要なことらしい。 俺の通帳には同じ数字がずらりと並び、一度も引き落とされた跡がない。
2014-05-31 19:31:17そういえば、一体どのくらいあるものだろうか。 アルバイトを始めた時期を思い出しながら歩く。 明るいショーウィンドウを覗き込んでいる男女とすれ違いさまに聞こえた会話が妙に耳に残った。
2014-05-31 19:31:47「付き合いだしてもうすぐ1ヵ月だし、お揃いのアクセとか買おうよ?」 「いや、まだ1ヵ月だし。 おまえこの先も、2ヵ月、3ヵ月記念とか言って、毎月何かねだるつもりだろ!?」
2014-05-31 19:32:21女性が男にぴったり寄り添って、猫なで声でうまく甘えていた。 最近やっと、彼女のことを名前で呼ぶことができるようになった俺には、 少し刺激的な光景だった。
2014-05-31 19:32:57