【習作】夜行食堂 第四話 お好み焼き
- crosstaichi
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01 誰にでも故郷があり、家族がいる。 しかしこのダイアロスでは夫婦は居ても家族はなかなか見かけない。 冒険者が街を歩くのが普通みたいになっちまったら、そりゃ親も隠すって話かもしれないが寂しくもあるな。
2014-06-01 01:35:1702 ま、こんななんでも屋みたいな食堂の親父がどうこう出来るわけでなし。 今夜も少ない客にビールのお代わりを差し出しつつ、切り替えた
2014-06-01 01:37:3603 「あ、すいません。 何か腹に溜まる物でビールに合うやつ。 適当にひとつ、あとビール!」 カウンター席のモニコが元気良くいう。 「好きなもんはなんだい?」 「んー…ピザとか!」 「んじゃお好み焼きでも焼こうか?」 「それでー!」
2014-06-01 01:41:1904 ま、俺も食いたくなってってのは内緒の内緒だ。 まず小麦粉と塩、水で作ったタネを取り出す。 少し寝かせないと良く伸びないので注意が必要だ。 生地が常温になる前に鉄板に油をしっかり染み込ませる。 焦げを作らないための工夫だ。
2014-06-01 01:44:4005 その間に空いた部分でキャベツともやしを豪快に炒める。 ぐわっぐわっ! ダイナミックにヘラを使ってかき混ぜ、甘みが出るまで火を通す。 お、結構いい具合だな。 そうしたらクレープみたいに薄くタネを伸ばして焼く。
2014-06-01 01:57:4806 生地に火が通るのは数十秒だ。 生地に火が通ったら、キャベツともやしをこれまたぐわっと盛り付ける。 そうしたらど真ん中に、俺特製のバイソンの筋煮込みをドカンと乗せて半月状に畳んで。 仕上げにソースを塗れば完成だ。
2014-06-01 02:01:0507 「あいよ、お待ち」 湯気がもうもうと立つそれにモニコはかぶり付く。 「ん!んまいよ!」 「そうかー、はいビールな。」
2014-06-01 02:02:3508 「特にこの煮込み! 味が染みててトロトロで…!」 「作り方は簡単だけど手間が、ね」 ちょっと笑って言う。 炊き続ける事四時間とか話したら、食い尽くされちまうから普段は隠してるメニューだからな。
2014-06-01 02:05:1309 「ー! ビールに合うー!」 「んだろ。 まあ好きな物を真ん中にいれるから、うちじゃお好み焼き、って呼んでるのさ。」 他の地方では生地に混ぜ込んで作ったり、重ねてヘラで押し込めたりするやつまあると噂できく。
2014-06-01 02:07:4310 「まあ、作り方が流派みたいになって今では争いになることもあるらしい。 昔うちに来た客が話してたなあ。」 「美味かったらどれが正しいとかないと思うんだけどなー」 とモニコが激しく口に物を詰めながらいう。
2014-06-01 02:10:5811 まあ、そうだわな。 美味い事を求められてて、両方美味しいと思える。 それならそれが正解なんだろう。 間違いじゃない。
2014-06-01 02:12:3512 「マスター!ビールお代わり!」 「お前さんもうそれで終いだよ」 うちの決まりは酒類は3本まで。 モニコは口惜しそうにビールジョッキの中身を舐める。
2014-06-01 02:15:42牛スジ肉の煮込みは圧力鍋でさっくりつくれるけど、最後は煮込み時間! しっかり水を替えて、何度も煮る! 柔らかくなったら砂糖、醤油、酒、みりんで味付け! 甘辛くにつけたらお好み焼きにいれてよし! やや薄味ならオカズによし! まさに便利な常備菜、であります。
2014-06-01 02:21:29