悪い男に騙される山城【解】『HAruna's waRD』真最終章其の終宴『悪い男の勝手を許さない者達』Dパート-三位一体-
最上さんと2人きりだというのに、今は喜んでいる場合じゃない。 最上さんの索敵の声に従い、新月がいると思われる方向へと進み続ける。 いまだ戦闘音はどこを向いても聴こえる。 誰かが戦っている。誰かが傷付いている。 もしかしたら今頃誰かが…。 嫌な想像を振り払う。
2013-12-13 23:35:04半壊で彷徨っていた敵艦にとどめを差し、波を越えて最上さんの隣に降り立つ。 最上さんだって無傷じゃない。 最上さんは不死身じゃない。 最上さん、約束して下さい。 思うままに呟く。彼女がこちらを向く。
2013-12-13 23:37:46ふふっ。大好きですよ最上さん。 それじゃ…頑張らないとね、っと! 左手で最上さんの腰を引き寄せ、真横に滑る。最上さんの居た位置を抜けていく銃弾を横目に、右手を上げる。 霧の濃い辺りに向けて発砲。 威嚇にすらなっていない事を理解しつつ、最上さんを抱えたまま跳ぶ。
2013-12-13 23:49:16最上さん…約束ですからね! 最上さんが手繰る航空機が丁度いい位置にいるので足場にして、絶え間なく打ち込まれる追撃をかわし続ける。 着水。 180度身を翻し、左足を軸に右脚を振り抜く。 霧を引き裂いて現れた新月の振り下ろした右腕と交差して、お互いに勢いをぶつけ合う。
2013-12-13 23:54:02最上さんが私の背後で温存しておいた艦載機を空に放つ。 庇うように立ちながら、新月との距離を調節する。 と、顔半分を真っ赤に染めたままの少女の口元が弧の形に歪む。 っ…! ほんのわずかな魚雷の駆動音。 あらかじめこの位置に向けて…!? 最上さんだけはっ…!
2013-12-14 00:00:17最上さんを突き飛ばし、衝撃に備えて身体を丸くする。 ぐっ…! 普段ならばたいしたダメージにもならないのに、今の私には重く響く。 疲労の蓄積は無視できない域に達している。最上さんの言った冗談が現実になるかもしれない。 笑えない。 水飛沫の中で薄く目を開け、新月を探す。
2013-12-14 00:04:20この機を逃すわけがないわよね…! 上! ほとんど決め付けで腕を頭上で交差する。 勘だけは冴えているようで、ハンマーみたいに重い一撃を防御する事に成功する。 が。 膝が崩れた。 ぁ…。 大きく腕をしならせて振りかぶる新月の姿がスローモーで見える。 まず…。
2013-12-14 00:08:56私と新月の間に割って入る姿もゆっくりと見る事ができた。 黒い髪が。いつもは山城のように頼りなく肩を狭めているのに、食事や戦闘の時には大きく見える細い身体が。 羽黒、さん…?
2013-12-14 00:12:09重火器を縦に、羽黒さんが『鬼』の打撃を耐え凌ぐ。 喉から苦悶の声をわずかに洩らしているものの、踏み止まって受け切っている。 とん、と私の肩に軽い衝撃。足場にされた、と認識できたのは新月の真上へと跳んだ親友の笑顔が見えたからだ。 刀を携えて、日向が新月に迫る。
2013-12-14 00:17:43赤い髪を数本絶っただけで、回避されたものの、新月が必要以上に後ろに下がる。表情からは読み取れないものの、本能的に危機感を覚えたのかもしれない。
2013-12-14 00:19:47不完全燃焼って…ちょっと、日向!? 止める間も無く、日向が相手との距離を詰める。 目にも留まらない速さで斬撃を繰り出し、そしてその全てを避けられる。 日向の動きに問題は無い。新月の性能が異常過ぎる。
2013-12-14 00:25:55