艦隊これくしょん三次創作SS 「兵共が夢の跡」
- isuzu_kankore
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戦争は終わった。人類は延々と終わらぬ闘いに嫌気がさし、深海棲艦と和平交渉に入った。 戦争は終わった。海の一部を彼女らの領土として認め、この地球上に人類の他に深海棲艦という新たな人種が生まれた。 戦争は終わった。……だが、「彼女達」そして「彼等」は「残って」いる。 #兵共が夢の跡
2014-05-11 15:37:52これは、「残された」者たちの物語。 彼等が、彼女達が、生きている証。 ーーー艦これ、その後、始まります。 #兵共が夢の跡
2014-05-11 15:41:20「提t…プロデューサー、電話よ!」 事務所を横切る声を聞き、俺はパソコンのキーを叩く手を止めた。 「おう、こっちに回してくれ」 内線で回ってきた電話を取り、要件を聞く。週末のライブに関しての最終確認の電話だった。 #兵共が夢の跡
2014-05-11 15:46:21「ーーーはい、ええ、それで大丈夫です。時間も余裕を持たせて、多少の前後もできるように。それでは」 受話器を置き、先程電話を受けた事務員に苦笑する。 「お前なぁ、気を抜いたらその呼び方出てくる癖直そうぜ」 #兵共が夢の跡
2014-05-11 15:51:18ツインテールの特徴的な、豊満な事務員ーーー五十鈴は、ばつが悪そうに目を逸らす。 「むぅ……やっぱり事務所にいると気が緩むみたいで。外では大丈夫なんだけど」 #兵共が夢の跡
2014-05-11 15:54:07「ふふ、仕方ないですよ。ここ数日は皆修羅場だったんですから。ようやくひと段落、って感じですからね?」 そばに座って会計作業をしていたおさげの事務員ーーー千川ちひろが微笑む。 #兵共が夢の跡
2014-05-11 15:56:27「スタドリ何本使わされたことか」 「いいじゃないですか、他にお金使う暇もなかったですし」 やや恨みを込めて彼女を睨むも、にこにこするばかり。いつもの事である。 #兵共が夢の跡
2014-05-11 15:58:13「ま…その生活も今日で終わりですね。明日からはようやく休日と」ちょうどこっちの作業も終わり、伸びをする。間もなく定時。これまでの作業、今後の準備、全て片付いている。ほぼ1ヶ月ぶりの定時上がり、そして休日だ。 #兵共が夢の跡
2014-05-11 16:02:29「2人でゆっくりしてきて下さいね?」 「なっ……」 「茶化さないで下さい。向こうには大和たちもいるんだし」 五十鈴も俺と予定を同じくし、休暇を入れてもらっている。明日からは2人で大和と武蔵のところで療養するつもりだ。 #兵共が夢の跡
2014-05-11 16:05:30十数分後。 「「お疲れ様です」」 2人揃ってタイムカードを打ち、事務所を出る。 2つ階段を下り、ビルを出る。夕焼けがまぶしい。 #兵共が夢の跡
2014-05-11 16:19:46五十鈴と並んで帰路につく。目的地は今や押しも押されぬ有名プロダクションとなった我らがCGプロの社宅である。 ……数年前の「終戦」を境に、激増した社員のほとんどはここに身を寄せている。かくいう俺もその一人なのだが。 #兵共が夢の跡
2014-05-11 16:23:59「ようやくの休暇か……なんか教育隊を思い出すなぁ」 再度伸びをしながらつぶやく。 「ほとんど泊り込みだもんね。掛け持ちしてたころより忙しくなってるんじゃない、有名プロデューサーさん?」 「よせよ。アレはあいつらの実力だ」 #兵共が夢の跡
2014-05-11 16:27:55……実際、プロデュース業は昔よりはるかに忙しくなった。 プロデュースを手掛けていたアイドルが次々に花開き、予定の調整や裏方の管理、彼女達のケアなどで時間がいくらあっても足りない。今回の休暇も無理矢理捻じ込まれたようなものだ。 #兵共が夢の跡
2014-05-11 16:32:27…いや、正確には、そうでもしないと意識してしまうのだ。自分の中の空虚な部分を。 原因は分かっている。あの"終戦"からだ。 #兵共が夢の跡
2014-05-25 23:29:36今でもふとした時にそれを感じる。 自分の中のもう一つの時計が刻を止め、錆び付いていくのを。 以前それを五十鈴に話したら苦笑された。 「提督はまだプロデューサーとしての自分が残ってるからいいじゃない。私達の時計は一つしかない。それがずっと止まってるのよ」 #兵共が夢の跡
2014-05-25 23:34:14それを聞いた時は罪悪感に襲われたものだ。 俺は提督もプロデューサーのどちらが副かという認識はなかった。どちらも主で自分の生きがいだったわけだ。だが艦娘達は違う。 手に職を得て生活していても、それはただ"生命活動をしている"だけだ。 #兵共が夢の跡
2014-05-25 23:38:04…五十鈴ととりとめのない話をし、社宅に到着する。 「じゃ、また明日。遅れるなよ」 「0600でしょ?プロデューサーこそ寝坊しないでよね!」 俺と五十鈴は隣の部屋だ。お互いのドアノブに手をかけながら言葉を交わす。 #兵共が夢の跡
2014-05-25 23:45:07