すりすり

怪奇の種の八雲より、20話目の『すりすり』で御座います。
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小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

19話で話した『落ちてくる』と、少し時期が被る出来事である。 「えっ? 」 丁度階段を下りている時に、その声は聞こえた。 キッチンからだろう、足を向けると家人が不思議そうに床を見渡していた。

2014-06-07 01:45:40
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

「どうしたの? 」 「今、足にすりすりされたんだけど…。」 猫か? と思って捜してみたが、当家の猫は皆一室に集まって寝ていた。 気のせいだろう、と話は落ち着き、今度は私がキッチンに立つ。

2014-06-07 01:45:58
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

暫くすると膝下にふわふわとしたものが軽くぶつかってくるような感触がした。 猫を飼っている人ならば判ると思う。 頭を押し付けてきて、そのまま胴へと、全身を足に擦り付けてくる動作。 まさにその感触がした。

2014-06-07 01:46:15
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

火を使っていたので危ないと思い、足元に視線をやると何も居ない。 キッチンを見渡し、廊下に出て確認する。 家の猫はまだ部屋で眠っていた。 家人の誰かがこれに遭遇するというのが1週間ばかり続いたが、ある日忽然とそれは無くなった。

2014-06-07 01:46:57
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

居なくなると少し淋しいような気もする。 それが証拠に誰もが口を揃えて言った。 「見えない猫、居なくなったね。」

2014-06-07 01:47:28