「ザ・アタック・オン・ネイキッド・ミドル・エイジド・メン」#3
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重金属酸性雨の降りしきるネオサイタマの裏路地を、ひとりの女がほとんど這うようにして歩いている。体のあちこちには殴る蹴るの暴行痕。その服は一部が破かれ、彼女の豊満な胸が露わになっていた。 1
2014-06-05 13:59:31なぜこのような格好を?まだ若いと見えるこの女は、つい先ほどまで、ヨタモノによるファック&サヨナラの被害者になりかけていたのである。ネオサイタマのマッポは、被害者の死体ならば見つけてくれるかもしれないが、今まさに襲われている人間を助ける能力はあまり高くない。 2
2014-06-05 14:03:06しかし彼女は救われた。更なる狂人の乱入により、ヨタモノ達は逆に残らずファック&サヨナラされたのである。まさにインガオホー。古事記に記されしマッポーの世のあらゆる側面を示すネオサイタマにおいては、狂人が更なる狂人に殺されることがあっても、全くおかしくはない。 3
2014-06-05 14:06:37逃げ出すまでの彼女の記憶は曖昧だ。あの時乱入してきた狂人は、どのような姿であっただろうか。全裸の中年男性であったように思われるが、彼女には当時の様子がよく思い出せない。急性NRSの影響もあろう。だが、彼女には元々記憶が無いのである。 4
2014-06-05 14:11:34彼女は、気付けばこのネオサイタマにいた。それ以前に何をしていたかは、いくら思い出そうとしても思い出せない。気付けばこの格好で、ネオサイタマを行くあても無く彷徨っていたのである。今の彼女には、自分の名前さえも分からない。 5
2014-06-05 14:15:30彼女はその場に座り込んだ。震える脚は悲鳴を上げ、最早一歩たりともその場から動くことを許しはしない。トークンも持たない彼女は、数日の間何も食べていなかった。 6
2014-06-05 14:19:59自分はこれからどうやって生きていけばいいのだろう?そもそも、明日まで生きていることができるのだろうか?彼女の頭の中を、様々な不安がユーレイめいてぼんやりと駆け回る。なんとかしないと。でも何をすれば?彼女には、ネオサイタマの事など何も分かりはしない。 7
2014-06-05 14:22:49彼女は壁にもたれかかり、その場で静かに目を閉じた。雨はしめやかに彼女の体を伝っていく。そのバストは豊満であった。 8
2014-06-05 14:29:49「ブッダファック」背中に長弓を背負ったブルーのニンジャ装束のニンジャが、周囲に散らかったワイヤー機構を見回して言った。彼の胸にはクロスカタナのエンブレム。そう、彼もまたソウカイヤのニンジャである。 10
2014-06-05 14:37:06彼の名はヨウカハイネン。連絡が取れなくなったクローンヤクザ及びワナメーカーの様子を見に行くミッションを受けた彼は、つい今しがたこの現場を発見した。「オイオイ、こりゃあワナメーカー=サンの武器じゃねぇか」 11
2014-06-05 14:42:30ヨウカハイネンは、かつてワナメーカーとミッションを共にしたことがある。ワナメーカーは、ザンシンをおろそかにする一点を除けば弱いニンジャではなかったはずだ。何者かと、恐らくはスカウト対象と交戦し、敗北したということか。 12
2014-06-05 14:45:18これ自体は珍しいことではない。スカウトを素直に受けるニンジャはそう多くなく、大抵は力でねじ伏せねばならない。その過程でウカツにより死亡するニンジャも無論存在する。「…しかし、クローンヤクザ共はどこに行きやがった?」 13
2014-06-05 14:48:07ヨウカハイネンは、事務所がワナメーカーから最後に受け取ったIRC通信のログを参照した。ニンジャの名はネイキッド。全裸にメンポのふざけた格好。ブンシンめいたジツを用いる。およそコミュニケーションが通用しない。まだブンシンがいる可能性もあるので、急ぎ救援を。 14
2014-06-05 14:51:39この通信を受けてから、まだ30分と経っていない。その間にワナメーカーを殺し、応援のクローンヤクザすら一瞬で殺すほどの手練れだということか、この変態ニンジャが?「…変態は関係無ぇか」ヨウカハイネンは、かつてソウカイヤにいたイタミ・ニンジャクランのソウル憑依者を思い出していた。 15
2014-06-05 14:56:19ヨウカハイネンは、ソウカイヤの事務所へIRCチャットによる通信を行った。『ドーモ。ワナメーカー=サン爆発四散の模様。クローンヤクザ行方知れず。恐らく殺された』数瞬の後、返事。『ドーモ。了解。ネイキッド=サン始末のミッション引き継ぐこと』「マジかよ」彼は顔をしかめた。 16
2014-06-05 15:02:13ワナメーカーが受注したミッションよりも、難易度は低かろう。相手を連れて帰る必要は無く、見た目の情報も、ブンシン・ジツを使うという情報もある。だが、ワナメーカーの死だけが気がかりだ。ヨウカハイネンのニンジャ第六感は、ほんのわずかにだが嫌な気配を察知していた。 17
2014-06-05 15:05:34とはいえ、クエストを拒否することはできない。『ヨロコンデー』彼は返事をすると、ネイキッドのニンジャソウル痕跡を辿るため、セイシンテキを整え始めた。そして直後、妙なことに気が付いた。「…ソウル痕跡が追えねえ?」 18
2014-06-05 15:08:29ヨウカハイネンは、ニンジャソウル感知の能力に自信を持っていた。野良ニンジャを一週間に渡り追跡した末に爆発四散させたこともある。その彼が、まるでソウル痕跡を感知できない。これはどうしたことか?ヨウカハイネンの嫌な予感がますます加速した。 19
2014-06-05 15:14:30ソウル探知で辿れないならば、すなわちここへ来たのはニンジャではないということになる。しかし、ワナメーカーは確かにニンジャを見たという。そもそも、ただのモータルがいくら束になったところで、ニンジャ一人にすら勝てるわけがない。 20
2014-06-05 15:17:14つまり敵は、ブンシンというよりむしろ、全裸中年男性めいたカラテゴーレムを作り出すジツを持つニンジャだと推測できる。本体はどこか遠くに潜んでいるのだろう。しかし、何のために……。 21
2014-06-05 15:21:24「落ち着け、ヨウカハイネン」ヨウカハイネンは自分に言い聞かせた。カラテゴーレムを用いるニンジャと戦うのは初めてではない。『敵の事や自分の事をを知ったら百回戦っても勝てる』と、ミヤモト・マサシの言葉にもあるではないか。 22
2014-06-09 11:59:37きっと、ワナメーカーの死でビビってしまっているだけなのだ。お前は腰抜けじゃない、セイシンテキを保て。ヨウカハイネンは自分に向けて何度も語り掛け、そして大きく飛び上がると、次の瞬間にはその場からいなくなっていた。 23
2014-06-09 12:00:04