[福島県民健康調査甲状腺検査とそれに基づく手術は、過剰ではない]
- karitoshi2011
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6月10日の甲状腺評価分科会で、鈴木真一氏は、渋谷健司氏の「過剰治療ではないか」との批判に答えて、「(5-10ミリの小さな癌でも)臨床的に明らかに転移をしている、明らかに声がかすれるという人は治療する必要がある」と発言しています。
2014-06-12 19:51:34鈴木氏の発言を素直に読めば、福島では5ミリから10ミリの微小癌の子どもで「明らかな転移、明らかな嗄声(声のかすれ)」を症状にもつ患者がいることになります。
2014-06-12 19:53:35この点について、甲状腺微小癌の危険因子として嗄声に注目した論文があります。@sivadさんのツイートで教えられた以下の文献です(Abstractのみ閲覧可能)。以下訳出しました。
2014-06-12 19:57:28Sugitani et al. “Symptomatic versus asymptomatic papillary thyroid microcarcinoma”, 1999. ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10426589
2014-06-12 19:59:10元論文 本文もリンク先がありました。
Symptomatic versus Asymptomatic Papi
Microcarcinoma: A Retrospective Analy
Outcome and Prognostic Factors
Ilary Thyroid
sis of Surgical
IWAO SUGITANI AND YosHIHIDE FUJIMOTO
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj1993/46/1/46_1_209/_pdf
(訳1) 甲状腺微小乳頭がんの死亡率は一般にとても低い。ただし、患者の中には広範なリンパ節転移や遠隔転移をきたす例もあり、予後不良のケースも存在する。
2014-06-12 20:00:19(訳2)我々は甲状腺微小乳頭がんの予後因子(prognostic factors)を明らかにするために、178人の微小がん患者について、その臨床側面、外科治療の方式、予後を過去に遡って調査した。
2014-06-12 20:01:06(訳3)10年間特定死因生存率は96%であった。外科治療後に遠隔転移の症状を示した4人のうち3人が当疾病(甲状腺微小がん)により死亡し、残りの1人は局所再発により死亡した。
2014-06-12 20:02:43(訳4)(甲状腺微小乳頭癌における)最も重要な危険因子は、診断時における臨床的にはっきりとしたリンパ節転移、および反回神経麻痺による嗄声(声のかすれ)であった。
2014-06-12 20:05:43(訳5)遠隔転移のすべて、およびすべての癌死は、頸部リンパ節腫大、反回神経麻痺のどちらか、もしくは両方を患った自覚症状有りの甲状腺微小乳頭がん患者30人の中から生まれていた。
2014-06-12 20:07:16(訳6) この二つの症状(リンパ節腫大、反回神経麻痺による嗄声)が見られなかった148人の患者の予後は、極めて良好であった。
2014-06-12 20:08:11(訳7) 自覚症状のある甲状腺微小乳頭がんの患者では、甲状腺全摘出、さらにRI治療を行っても予後の改善は見られなかった。
2014-06-12 20:09:08(訳9) しかし、甲状腺微小乳頭がん患者のうち自覚症状のある者の中には、積極的外科治療が効果をもたないハイリスク集団に属する患者がいると結論付けられる。
2014-06-12 20:13:42Abstractの訳をまとめたのが下図です。「明らかな転移、明らかな嗄声症状をもった微小癌」との鈴木真一氏の発言と併せて見る必要があります。 pic.twitter.com/6GyoEV5T3q
2014-06-12 20:18:01ベラルーシでは、3ミリから9ミリの微小癌でも、被膜外浸潤が8%、局部転移47%、肺転移3.7%であり、数ミリの段階で進行癌に発展したケースが見られました(Demidchi, et al. 2002)。 pic.twitter.com/taUkkylFP7
2014-06-12 20:20:33福島健康検査を「過剰診断」、「過剰治療」と批判している方々は、ここで示したSugitani et al. 1999の事例やベラルーシの事例をよく考慮した上で発言し、かつ自己の発言には責任をもって頂きたいと願います。
2014-06-12 20:21:15この文献の執筆者の一人、スギタニ イワオ 氏は
杉谷 厳 氏であると推測されます。
日本甲状腺外科学会
http://square.umin.ac.jp/thyroids/officer.html
杉谷 巌
日本医科大学 内分泌外科