加賀さん観察日記 Part15

キタユキ @k_t_y_k

大鯨が飯を作ってくれるとのこと。歪みない♀わりにも補給艦なので、多分料理は上手い方だろう。直属の艦隊にいたハチ曰く「フーカデンビーフカレーが美味しいですよ」とのこと。 フーカデンビーフが何なのかは知らんがとにかく牛らしい。本当に牛が出ればいいんだけど。 #加賀さん観察日記

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大鯨本人に晩飯のカレーの話を降ると、頭に？を浮かべられてしまった。よくよく聞くとフーカデンビーフは別にカレーじゃなくて普通に肉料理らしい。勘違いしていたと謝ると、「仕方ないね♀」と大鯨は笑う。歪みねえ、だらしねえ、仕方ねえの三言を遵守しているだけはある。 #加賀さん観察日記

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妖精哲学は文字通り、艦娘と生涯を共にする妖精達の中で発現した哲学の一派だという。だらしねえの戒め、歪みねえの賛美、仕方ねえの寛容を礎として自身を諌め、他者に敬意を払うことを重んじる。欧米より輸入された思想だそうだが、本場では艦娘より兄貴達に流布してるらしい。 #加賀さん観察日記

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本場の兄貴達の妖精哲学講義は動画で見たことがある。肉体言語による存在意義への問答。互いに意見という名の雄肉をぶつけ合い、更なる高みへと導かれていく様は、まごうことなく哲学であった。大鯨も日々明石と似たようなパンツレスリング…いや、問答を行っている。 #加賀さん観察日記

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明石と大鯨は元々同じ修行場にいたという。勿論妖精哲学の修行場だ。哲学に修行場とはどういうことかよくわからない。だが彼女達の修行場(新日暮里にあるらしい)は何者かの襲撃によって壊滅、皆散り散りになってしまったらしい。犯人は「機関」と呼ばれる団体らしいが、謎だ。 #加賀さん観察日記

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彼女達はストイック故、激しいパンツレスリングが昼夜問わずに続く。あの北上ですら「生理的に無理」と工廠から鎮守府に居を移すぐらい、だ。そして霧島は「ここはいつからロッカールームになったんですか」と半ギレ、鳥海に至ってはノイローゼになってしまった。どうすんだあれ。 #加賀さん観察日記

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おゆはんは大鯨のフーカデンビーフ…のはずですが、出てきたのは餡掛けチャーハンでした。 「これだけ人数がいると、どうしても仕込みに時間がかかって…」 120人分用意するのは確かに骨です。 「あっでもきんぴらはすぐ用意できます！」 いつだってあるのね。 #加賀さん観察日記

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ところで大鯨は、浜風に言われてここにきたというけど、どこで奴と知り合ったんだ。 チャーハンを食べつつ、疑問をぶつけると大鯨は少し困り顔になりました。 「うーん…説明が、少し難しいのですが…ううむ」 彼女は少し顎に手を当てて考えた後、一人納得したように頷きます。 #加賀さん観察日記

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「ゲイ♀パレス」 突然の妖精哲学用語。米が気管に入りかけましたが、なんとか水を飲んで凌っぎました。大鯨は妖精哲学を語るときだけ、急に声がナウい♀息子になるので油断なりません。 ゲイパレス。そこで浜風とであったのか。 そう問いかける前に、風が吹きました。 #加賀さん観察日記

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ここは食堂。殆ど密室です。オープンテラスではないし、飯のタイミングを逃して私と大鯨しかいないので空調もつけていません。だというのに、風が今、吹いています。 「……あれは、私達の修行場が襲撃される、１週間前……」 次第に部屋が暗くなっていきます。なんか始まった。 #加賀さん観察日記

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【loading....every_little_tintin.pnt】 風が強くなりました。皿は浮き、クロスは飛び、食器も椅子もスローモーションで一方向に吸い込まれていきます。思わず机にしがみつきましたが、何故か自分が吸い寄せられてる感覚はありません。 #加賀さん観察日記

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出処のわからない風ですが、行先はハッキリしていました。大鯨です。飛んで行った皿や食器は彼女を中心に渦を巻き、天井近くまで伸び上がっていきます。渦に巻き込まれたものは皆薄ぼんやりと光り、幻想的な光景を醸し出しています。 いつの間にか大鯨がパンツ一丁な以外は。 #加賀さん観察日記

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『待ってください！』 声が響きました。同時に視界は暗転し、かと思うと厚い雪雲と宵に閉ざされた、豪雪を頂きに据える山の連なりが姿を現します。どういう仕組みか知りませんが、食堂全体がプロジェクターになっているようでした。 『どうして逃げなければならないのです！』 #加賀さん観察日記

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場面が変わり、建物の中へ移りました。両脇に鈍色の巨大なオベリ…ロッカーを並べた廊下のあちこちには霜を生やし、蝋燭の灯りすら熱を奪われて白んでいます。 そこを、一人の女が歩いていました。 浜風です。 『お伝えした通り、ですが』 彼女は背を追う者に言い放ちます。 #加賀さん観察日記

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『納得いきません』 浜風を追ってきたのは、大鯨です。が、割烹着ではなく青の反物を羽織っています。 『どうしてこのプラントが破壊されなければならないのですか！』 『龍鳳、ここはいずれ放棄予定だったの。少し早まっただけです』 吠えつく大鯨に、浜風は段々と告げます。 #加賀さん観察日記

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『なら、何故部隊が！』 『……そこまでは、わからない。でも、私の観測範囲に掛かった武器搬入、人員流動のデータは、間違いなくここへの襲撃を予測している』 『そんな……』 龍鳳と呼ばれた彼女は、力なく廊下にへたり込みました。 『どうして皆オカマには厳しいの……』 #加賀さん観察日記

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「私達の居た場所、表向きは妖精哲学道場の新日暮里支部…でも本当は、男性素体から艦娘を建造する実験を行う隔離プラントだったと聞きます」 巨大プロジェクターと化した床の上を、再び大鯨が歩いていました。いつの間に戻ってきたかは知りませんが、相変わらずパンツ一丁です。 #加賀さん観察日記

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聞きます、とはまた他人行儀な言い方だな。今床に映ってる奴はお前じゃないのか？ 「いえ、私はただの被験者にすぎません…これは、私達を取りまとめてくれていたママです」 オリジナルか。 「いえ、リーダーです。彼女が一番強い大鯨でしたので」 チーママのママかよ。 #加賀さん観察日記

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「実際、ママは新造艦献体で生きたまま艦娘になった一人だったので、オリジナルといえばオリジナルかもしれまさん。彼女は竿あり玉なしでしたけど、どんな大鯨や龍鳳より綺麗で、女らしかった…」 そう呟く大鯨の拳は、硬く握り締められています。 「……なのに、ママ……」 #加賀さん観察日記

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再びプロジェクターの映像が動き出します。沢山の大鯨達が和気藹々と洗濯をしたり、車を洗ったり、「おっちゃん」の首輪のある犬と戯れる映像です。それにしても新日暮里にしては外のビジュアルが世界の喉すぎるのですが、本当に今見てる映像は新日暮里のものなんでしょうか。 #加賀さん観察日記

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画面は銀世界に変わり、極限露出ピクニックをしている大鯨達が映し出されした。楽しげにレスリングをしている彼女達の元へ、歩み寄る影が一つ。二つ。三つ。 『あら…』 一人の歪みない大鯨が気配に気づき、目を凝らしました。 『あれはもしや…明石様？』 #加賀さん観察日記

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『明石様？』 『明石様がこられたの？』 『見て！大淀様もいる！』 『風神卍雷神』 『最強とんがりコーン』 『あの御二人が来られるだなんて…ついにつくのかしら、ケツ♀チャクが』 大鯨達はめいめいにらはしゃぎだしました。 『待ってください、後ろにもう一人います』 #加賀さん観察日記

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はしゃぐ大鯨達を、一人の龍鳳がなだめます。この龍鳳の着物は赤で、先程のママではないようです。 大鯨達は一様に目を凝らし、自分達の方へ向かってくる明石・大淀の後ろにいる人物を見極めようとしています。 『誰かしら…』 『駆逐艦かも』 『連れ立ちとは珍しいですね』 #加賀さん観察日記

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プロジェクターの映像は、いかにもジェダイなローブを纏い、しんしんと降る雪の中を進む三人を映し出します。先頭は明石、続いて大淀、三人目は…フードが深すぎてよく見えません。が、明石達よりも頭一つほど小さいので、駆逐艦だということは伺えます。 #加賀さん観察日記

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「浜風さんがママにゲイパレス襲撃を通告した翌日、明石さんと大淀さんがママを訪ねてきました。お二人は妖精哲学の学派の中でも【賢者】と呼ばれる崇高な存在…私達の憧れです。その時私達は何も知りませんでしたから、素直に御来訪を喜んでいました」 ん？お前は知ってたのか。 #加賀さん観察日記