@ATOR86さんによる艦これ二次創作 「航空戦艦は空を征く」

@ATOR86さんによる、艦これ二次創作です。
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副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

ヘリで高速展開する航空戦艦の話を思い付いたので誰ぞ書いてくだち。

2014-06-14 10:06:42
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

空中機動する航空戦艦のお話、何故か僕が完成させてしまったんだがどこにどうしたもんだろうか…。

2014-06-14 15:05:09
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

静かな海の上を、ギラギラと輝く太陽に照らされながら緑と茶色で塗られた場違いなヘリが飛ぶ。 普段なら完全装備の兵士が8人は乗れるUH-1のキャビンは、たった3人…より正確に表現するなら「2人の女」と「1人の男」、そしてそれ以外の空間ほぼ全てを「その女たちの艤装」が埋め尽くしていた。

2014-06-14 16:15:25
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「龍驤の部隊はまだ健在だろうか。」 両のスライドドアを取り外して吹きさらしになったキャビン、その左の開口部に腰掛け、軽量タイプのヘルメットとゴーグルを着装した女が呟いた。 落ち着いた声の中に緊張と焦りが浮かんでいる。

2014-06-14 16:15:47
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「大丈夫だよ日向。あの人結構しぶといから。」 反対側の開口部に、同じ格好で腰掛けていた女が応える。左の女とは対照的に、こちらの声には楽観的な響きが混じっている。 その根拠に乏しい返事に日向は半ば呆れた声で返す。 「伊勢はいつも楽観的だな。いや、今回ばかりはそうであって欲しいが…」

2014-06-14 16:15:57
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「降下5分前!」 背中合わせでヘリの両側に座っている女たち、その背中と、何より彼女たちの背負う「艤装」にスペースを奪われ窮屈そうにしていたもう1人の搭乗者…降下長が大声をあげ、二人の会話を打ち切った。

2014-06-14 16:16:29
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

日向はヘリの前方に目を向ける。 ヘリの向かう先には紺碧の海にぽつぽつと固まる小島。 そしてその周辺には絶えず爆発の光が閃き黒煙が上がっていた。

2014-06-14 16:16:47
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

とんだ貧乏籤やった。 遮蔽物にした島影に身を寄せ、敵弾から隠れながら、龍驤は心の底から自分の不幸を呪った。 遠征帰りに敵艦と遭遇する事は茶飯事とは言わずも珍しい話ではない。しかし今回はその相手が異様だった。

2014-06-14 16:18:03
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

重巡級主体に戦艦級2、軽空母級1を含むという、遠征艦隊を相手にするにはあまりに大人気無い敵艦隊。 航空戦力こそ龍驤の奮闘により拮抗できたものの、主力が駆逐や軽巡という遠征艦隊は為す術なく戦艦級や重巡級のアウトレンジ攻撃を喰らい、航路半ばにある小さな島嶼に隠れて砲火を避けていた。

2014-06-14 16:18:29
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「龍驤、逃げ込んだはいいけどここからどうするクマ?!」 龍驤の右隣で14cm単装砲の弾倉を交換しながら球磨が尋ねる。 艦隊が遮蔽物として隠れている小島には、艦隊から先制して追撃して来たであろう重巡級3隻が継続的に砲弾を撃ち込み続けている。

2014-06-14 16:18:53
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

航空攻撃は龍驤の航空戦力を警戒してか今の所来ていない。 しかし遅れて前進している戦艦級がこちらを射程に捉え、砲撃を撃ち込んで来るのは時間の問題とも言えた。

2014-06-14 16:19:04
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

ボルトリリースボタンを押して初弾を装填。小島から砲を出して水平線に見える重巡級に射撃。 暫く間があった後重巡級のシルエットが僅かに傾ぐ。しかしそれ以上の事は起きず、再び小島に砲弾が降り始める。 「遠過ぎて球磨の砲じゃ当たっても効かないクマー!」

2014-06-14 16:19:21
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「どうもこうもあらへん!弾も少ないし火力負けしとるから撃ち合いなんて出来ん!」 「ちくしょー!夜なら深雪スペシャルであんな連中イチコロなのによぉ!」 球磨の反対側で12.7cm連装砲を抱えて深雪が悔しげに叫ぶ。

2014-06-14 16:19:42
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

彼女たち駆逐や軽巡の得意とする近接雷撃…深雪曰く「深雪スペシャル」…は、至近距離においては格上の空母級や戦艦級すら一撃で屠る程の力を持つが、それには敵の懐に飛び込む必要があり、視界の効かない荒天時あるいは夜間に限定された戦法だった。

2014-06-14 16:19:58
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「何とかスペシャルは諦めぃ!今は真っ昼間で、その上どピーカンや!それより頭下げとき!吹っ飛ばされるで!」 龍驤が怒鳴った直後、彼女たちが盾にしていた島に一際大きな爆発が起きた。爆風が島の反対側に居る遠征艦隊を襲い、数秒後に巻き上げられた土砂と海水の雨が降り始める。

2014-06-14 16:20:14
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「やっべぇ…今のは戦艦級の砲撃だぜ龍驤の姉御。」 「小島諸共吹っ飛ばされるクマ…。」 「逃げ足だけはあるから尻尾まいて逃げるのが一番なんやろけど…」 潮水の雨に打たれながらちらと足下を見る。大破した五月雨が水面に半ば沈んで横たわり、荒い息を吐いていた。

2014-06-14 16:20:26
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

戦艦の主砲の直撃を受けて航行できなくなったところを龍驤が援護、球磨と深雪が両脇を抱えてこの島影に逃げ込んだのだ。 武装を減らし、代わりに聴音機や長距離通信機を積載したのが幸運だったのか誘爆などは起こしていないが満身創痍である事に変わりはない。

2014-06-14 16:22:08
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

彼女を伴って撤退する以上艦隊の低速化は避けられず、敵の砲から逃れる事は難しかった。

2014-06-14 16:22:46
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「龍驤さん、皆で逃げて下さい。私は大丈夫ですから…」 「アホ抜かせ。そんな真似が出来るかい。」 五月雨の提案を瞬時に却下し、龍驤は自分の巻物で五月雨の顔に降る雨を遮ってやる。 「既に救援要請は出してあるし部隊も動いとる。戦艦2隻が来てくれるそうやで。」

2014-06-14 16:32:59
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「…えっ。」「戦艦?」 龍驤の言葉で場に流れたのは好転の兆しへの喜びではなく戸惑いの声だった。 「戦艦って…。到着するの何時になるクマ?」 「金剛シスターズって今全員別の海域ですよね?」

2014-06-14 16:33:11
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

彼女たちの懸念は言葉こそ違うが同一のものだった。一般的に戦艦は鈍足であり、今求められている緊急展開には全く向いていない。 例外的に金剛型巡洋戦艦…通称金剛シスターズが戦艦でありながら30ノットを超える高速機動を行えるが、彼女たちは今任務で別の海域に前進しているはずだ。

2014-06-14 16:33:23
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

何より、輪を広げ、我を包囲しつつある敵艦隊を目の前にしながら鈍足な味方の戦艦の到着を待つという選択肢そのものがあまりに悠長な話に思えた。 「ウチも提督にそう言った。間に合わんって。ただ…」 龍驤は通信機の受話器から聞こえた声を思い出した。

2014-06-14 16:34:16
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「あいつは『1時間だけもたせろ。絶対間に合わせる』って言うたんや。大丈夫や。」 「オーゥ。信頼の厚いこって。愛だね愛。」 「このタイミングで惚気を入れて来るとは大した余裕クマ。」 「の、惚気ちゃうがな!何言うてんのキミら?!」 深雪と球磨の視線に龍驤が顔を真っ赤にして否定する。

2014-06-14 16:34:26
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「龍驤さん、旦那様から通信ですよ。」 「だからちゃうって言うとるやろが!意外と余裕やねキミ!」 くすくす笑う五月雨の渡す受話器を引ったくり、耳に当てる。 その顔が真顔になり、一瞬怪訝そうに眉を顰めたあと「了解」とだけ返し通信機を五月雨に返す。

2014-06-14 16:34:41
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「姉御、提督、何だって?」 「正直に言うクマ。救援間に合わないって言われても今更驚かないクマー。」 「んー。いやな。」 深雪と球磨の問いかけに、龍驤は相変わらず眉を顰めたままで、 「『あと5分で着くから周辺の航空戦力の引きつけだけ頼む』やて。」 「「「5分?!」」」

2014-06-14 16:34:57