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諫早湾干拓前後の有明海の漁獲統計と解説

松川・佐々木・羽生(2014)「有明海奥部の貧酸素と諫早湾干拓事業の因果関係の検証」がこの5月に出ました。著者の一人の佐々木さんによる漁業統計の解説は、諫早湾干拓事業によって現地の漁師さんたちが追い込まれている苦境を示しています。食料自給率の低い日本で、漁業資源をこれだけ減らすのは奇妙な話です。開門調査が待たれます。
環境 有明海 漁業 諫早湾
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飯島明子 @a_iijimaa1
松川 康夫・佐々木 克之・羽生 洋三(2014)「有明海奥部の貧酸素と諌早湾干拓事業の因果関係の検証」、『海の研究』Vol.23-3, pp.87-110 こちらで読めます。 kaiyo-gakkai.jp/jos/publicatio… #諫早湾と有明海
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 筆頭著者松川さんによる解説文もあるのですが、現在こちらはメーリングリストで揉んで書き換え中。拡散のお許しが出たら出します。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 共著者の佐々木さんによる解説文は拡散許可をいただきました。佐々木克之「 有明海の漁獲量の推移と松川論文で見る貧酸素化との対応」。以下、【佐々木解説文】として内容を連投します。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1【佐々木解説文1】多くの漁民が干拓事業によって有明海の漁獲量が減少したと感じていて、このことを明らかにする開門調査を希望している。裁判では諌早湾漁業の悪化は干拓事業によることを認めているが、(続)
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 (承前)干拓事業の諌早湾を除く有明海漁業への影響については不明という立場をとっている。 松川論文は、2000年のすこし前から、雨量の増加より前に貧酸素が進行していることと、貧酸素の程度が1980年代より悪化していることを示した。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説2】そうであれば、有明海の、とくに貧酸素によって影響を受けると予想される、底層で生活している魚類が干拓事業(1989年開始)と堤防閉め切り(1997年)によって影響を大きく受ける可能性がある。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1【佐々木解説3】そこで、既往資料が整備されている1972年以降の有明海漁業の漁獲量の推移から、松川論文から予想される底層に生息する魚類漁獲量の推移を検討した。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説4】以下に示すように、貧酸素の影響を受けると考えられる底層系魚類の漁獲量は、干拓事業が開始されて以来、一貫して減少している。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説5】タイラギだけ長崎県について示したが、おそらく干拓事業が始まってすぐに長崎県漁獲量が減少し、堤防閉切以後に有明海奥部から島原半島沖の漁獲量が減少したと考えられる。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説6】このことは、松川論文で示す、堤防閉め切りの1997年付近から有明海奥部の底層の酸素濃度が減少し続けていることと一致する。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説7】 1. 魚類漁獲量の減少 まず魚類漁獲量全体を見る。参考に、瀬戸内海漁獲量と比較してみる。有明海の漁獲量は1972年以降の統計資料がある。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説8】魚類漁獲量(図1)を見ると、諌早湾干拓事業が始まった1989年頃から一貫して減少傾向にあり、1997年の堤防閉め切り(点線棒)以後も減少している。 pic.twitter.com/LqT7PRFnQj
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飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 飯島注:『有明海の制定系再生をめざして』(2005、編集委員・佐々木・松川・堤、恒星社厚生閣)に漁獲量資料の図があ りますが、佐々木さんは今回もう少し整理したとのことです。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説9】干拓事業が始まった1989年(図の黒棒)ときの魚類漁獲量は約12000トン、2012年の漁獲量は約3000トンなので、1/4に減少している。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説10】同じ時期の瀬戸内海の魚類漁獲量(図2)を見ると、1989年の漁獲量は25.5万トンで、2005年のそれは15.5万トンであった。1972年と比べて減少率((21.6-15.4)/25.5=0.28)は28%で、72%が残った。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説11】同じ期間で有明海を見ると、減少率((1.229-0.39)/1.229=0.68)は68%で、1989年時点に比べて32%しか残っていない。有明海の漁獲量の減少率は瀬戸内海のそれの2.4倍倍で、大きい。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説12】2. 生態別漁獲量の推移 多々良(1981)は、瀬戸内海の魚類を生態別に以下のように分類している。Aプランクトン食(イワシ類、イカナゴ、イボダイ)、B魚食 浮魚系(アジ、サバ、ブリ、サワラ)、C魚食 中層系(タチウオ、スズキ)(続)
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 (承前)D魚食 底魚(エソ、ヒラメ)、Eエビ・カニ食(ベントス系)中層(イカ、クロダイ)、F エビ・カニ食 底層(ハモ、アナゴ、ニベ・グチ、その他のカレイ、マダイ、タコ、など)(続)
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 (承前)G ベントス食(メイタカレイ、その他のエビ、カニ、シャコ、ウニ、ナマコ、クルマエビ、ガザミ)。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説13】この分類に基づき漁獲量の推移を見た。 A プランクトン食(図3)・・・1980年代初めまでは漁獲があったが、それ以降減少したままである。 pic.twitter.com/P4iy0SyzZa
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飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説14】B 魚食、浮魚系:大きく変動していない(図4) C 魚食、中層種:1989年から一貫して減少して、2000年に入って約1/4になってその後の変化は小さい(図5)。 pic.twitter.com/boMSgV6CRR
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飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説14】D 魚食 底魚(エソ、ヒラメ):1993年から減少して、2000年に入って1/3~1/4の値で安定している(図6)。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説15】E エビ、カニ食・・中層:イカ、クロダイ(図7)・・・イカ+クロダイの漁獲量のほとんどがイカの漁獲量(左目盛)。クロダイ漁獲量は右目盛り。 pic.twitter.com/TN7yjk277O
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飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説16】全体の漁獲量は1990年代前半にピークとなり、その後減少するが、これはイカ漁獲量を反映している。クロダイ漁獲量は1989年から減少傾向となり、1997年以降も減少している。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 【佐々木解説17】イカ漁獲量の大部分は長崎県によるものであり、おそらく有明海湾内ではなく、有明海湾口付近の漁獲と推定している。
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コメント

飯島明子 @a_iijimaa1 2014年6月19日
まとめを更新しました。
Hornet @one_hornet 2014年6月19日
食料自給率を問題とするのであれば、干拓前後の長崎県の農業統計も合わせて考えないと片手落ちじゃないでしょうか?
飯島明子 @a_iijimaa1 2014年6月20日
確かに農業統計は知りたいところです。干拓農地での農業生産高と、干拓農地の農業用水(河川水)の浄化に使っているお金、長崎県における耕作放棄地の比率(全国比)、および調整池のアオコ対策で使われているお金、その差額がどれだけプラス、あるいはマイナスなのか。さらに堤防工事で使われたお金がどれだけなのか。
飯島明子 @a_iijimaa1 2014年6月20日
有明海全体の漁獲高を上回るほどの大きな農業生産高が、限られた干拓農地で生み出されるとは(それも農業用水の浄化費用、アオコ対策費用、堤防工事費用さえ回収できるほどの)、少し信じがたいのですが、食料自給率の面で考えると、漁業と農業を同じと考えて良いかどうか、という問題もあります。農業では、畜産以外は動物性タンパク質を生み出せませんので。
飯島明子 @a_iijimaa1 2014年6月20日
まとめを更新しました。有明海の漁業生産額の図を載せました。
宮本 啓子 @mymtkiko 2014年6月20日
解説ありがとうございます。最初の「有明海奥部の貧酸素と…」論文中では「有明海環境劣化と諌早湾干拓事業の間には因果関係」が課題とされていましたが、今回の論文は有明海の漁獲高と食料自給率を明らかにすること研究目的なのでしょうか。(思いつきです)
飯島明子 @a_iijimaa1 2014年6月21日
mymtkiko いえ、そうではありません。佐々木さんによる解説と図(論文ではありません)は、諫早湾干拓および閉切による漁獲量減少についてのものです。食料自給率については私の意見ですが、これを受けて佐々木さんが漁業生産高の図を送って下さいました。
飯島明子 @a_iijimaa1 2014年6月21日
mymtkiko 食料自給率を上げたいというのが農水省の意向なのだとすれば、漁業の生産高を下げるような政策は矛盾しているのではないか?というのが私の素朴な疑問です。文脈上で混乱をまねいたのでしたら申し訳ありません。
宮本 啓子 @mymtkiko 2014年6月22日
@a_iijimaa1 ありがとうございます。食料自給率は専門分野に入るので漁獲高との関連に興味を持ち、伺ってみました。干拓事業が始まった1989年ごろから生産量(=漁獲高?)が減っているのですね。興味深いです。乱獲の影響はバイアスとして存在しますか?すみません、研究者モードですw
飯島明子 @a_iijimaa1 2014年6月22日
mymtkiko 乱獲の影響は分かりません。ただ、干拓事業以前は漁獲量の年変動が大きかった水産資源も、干拓事業以降、特に諫早湾閉切以降は低い水準に留まり続けている、ということは言えます。
宮本 啓子 @mymtkiko 2014年6月22日
@a_iijimaa1 諫早湾閉切の1997年から2000年の減少というのは、速いスピードですね。開門して様子を調査したいというのも理解できます。この減少スピードだと、急ぐ必要があるのですね。貴重な資料をありがとうございます。
ゴマすりクソバード@たつき監督を返せ! @animefigure3d 2016年11月25日
漁獲高は魚の量以外にも経済的な影響を受けるから、それを補正しない限り客観性を持たないのではないか。提示されたいくつかのグラフにおいては干拓の前から減少傾向があるものが散見される。後継者不足などその他要因を否定できないのではないか。漁獲高ではない魚の量に直結したデータはないだろうか。
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