アンダー・ザ・ブラック・サン #3

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【アンダー・ザ・ブラック・サン】#3

2014-06-20 22:28:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これまでのあらすじ:悪のカブキ組織の襲撃に遭ったディプロマットとアンバサダーを救出したユカノとエーリアスは、彼らを伴って西へ車を飛ばし、岡山県に入る。目的地はエンシェント・ドラゴン・ドージョーだ。)

2014-06-20 22:34:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ユカノはかつてニンジャスレイヤーとともにこの最初のドラゴン・ドージョーを訪れ、現代におけるドラゴン・ニンジャ・クランの在り方を模索する誓いを立てた。その際、ドージョー跡地に不穏な兆候を発見していた。外部からのニンジャ侵入者の痕跡である。彼女は再び世界を巡り、ある仮説に至る)

2014-06-20 22:37:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(キョート城は消滅しておらず、それにまつわる何らかの存在が、何らかの目的をもって暗躍しているのではないか?キョート城を建造した張本人であり、ディセンション現象の加速を憂う彼女にとって、避けては通れぬ案件だった。エーリアスにとっても重大だ。エーリアスの試練はキョート城に端を発する)

2014-06-20 22:42:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ラマの力を借り、峻厳な山道を進んだ一行は、風穴洞でザゼン休息をとり、キンカク・テンプルの謎とヤマト・ニンジャの悲劇的探索行に思いを馳せた。キンカク・テンプルのカツ・ワンソーを滅ぼす鍵、即ち黄金の林檎こそが探索行の目的であったと……。なんたる謎めいた伝説か。だが話を進めようぜ!)

2014-06-20 22:49:11
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風穴洞からやや上がった地点で、彼らはラマと別れねばならなかった。「帰りもよろしくね」ユカノはラマ一頭一頭の頬を撫で、アイサツしていった。この山道でラマは放たれたまま過ごし、自ら餌を探して、あるじの帰りを待つことができるのだという。1

2014-06-20 23:02:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こっからは?」エーリアスは岩壁を見上げた。「ニンジャ脚力……いや……ニンジャ腕力の出番ッてわけ?」「そういう事になります」ユカノは頷いた。「ハーケンとか、カラビナを使っていくんだよな?経験が無いんだけど……」「詳しいですね。不要です」「ニンジャだから?」「そう」 2

2014-06-20 23:05:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユカノはエーリアスの表情にやや語気を強める。「ニンジャならば岩壁の裂け目に指を掛け、クナイを突き立て、登る事ができるものです。自身の力を信じなさい」「アンタらは?」エーリアスは双子を見た。「クライミングの経験はないが、問題無し」「ザイバツのマスターニンジャだったな、クソッ」3

2014-06-20 23:11:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「要はカラテだ」ディプロマットは身体のストレッチを行う。「いつでも行けます」アンバサダーがユカノに頷いた。ユカノはエーリアスに優しく言った。「しっかり助けてあげます。じきに慣れます。ね」「本当か」「遠くに雨雲が」ユカノが遠い空を指し示した。「今しかないですよ」「どうにでもなれ」4

2014-06-20 23:16:57
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……60分後!「ハァーッ!ハァーッ!」エーリアスの手が岩棚のふちにかかり、己の細い身体を苦労してリフトアップすると、仰向けに転がり、荒く息を吐いた。「ハァーッ!」「たいしたものだ」先に待っていたアンバサダーが飲料水のボトルを手渡した。それからディプロマット、ユカノが続いて来た。5

2014-06-20 23:24:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「天候が心配です」ユカノは近づく黒雲を物憂げに見た。「ペースを上げようぜ」親指を立てたのはエーリアスだ。「調子に乗ってないか。平気か」ディプロマットが訝しんだ。「慣れだ。そして慣れた」「本当だな」「問題ない。大変な事はさっさと終わらせちまおう」「わかりました」ユカノは頷いた。 6

2014-06-20 23:26:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……30分後!「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!」エーリアスは抉れた岩壁に指を挿し込み、おぼつかないクナイを足の下に、氷粒を含んだ風の中で耐えていた。「ニンジャの試練……」エーリアスはぼんやりと呟いた。周囲を影めいた存在が登ってゆく。仲間達か?否、それはかつてありし影……。7

2014-06-20 23:34:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(エーリアス=サン!)「ハァーッ……ハァーッ……」(エーリアス=サン!)ドラゴン・ドージョーへ至る道は、それ自体がニンジャの試練……サンシタのドージョー破りや野盗の類は近づく事すらかなわず、入門志願者をふるいにかける……試練……「ウワーッ!」「エーリアス=サン!」8

2014-06-20 23:38:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユカノの叫びが耳に飛び込み、エーリアスは重力の消失を覚えた。一瞬の事だ。エーリアスは命綱と格闘するユカノの苦悶の表情を見上げた。命綱?自分の腰に繋がっている。宙ぶらりんだ!エーリアスは我に返った。「イヤーッ!」クナイを岩壁に突き刺し、身体を保持した。「オーケイだ!オーケイ!」 9

2014-06-20 23:41:57
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「支えます、大丈夫」ユカノは苦痛に耐えながら笑ってみせた。「私はドラゴン・ニンジャですよ」エーリアスはなんともいえない感慨に襲われた。岩壁に張り付いた姿勢で数秒。それから気力を奮い立たせ、再び登り始めた。黒雲はいよいよ近づき、神域を侵す者たちを威圧する。 10

2014-06-20 23:48:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、黒雲よ、控えおれ!汝が阻まんとするは、この地の主、ドラゴン・ニンジャその人なり!風雪は徐々にその勢いを弱め、さらに30分ののち、一行は遂にその頂きを見出したのである!ゴウランガ!彼らは白い霞溜まりの中に神秘的な建造物の輪郭を見出した!ゴウランガ! 11

2014-06-20 23:58:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一行はこの偉大な冒険の達成を喜びあい、ドラゴン・ドージョーに向かって駆け出さんばかりだった。だがすぐにエーリアスが、そしてユカノが、表情を曇らせた。彼らは顔を見合わせた。ユカノは頷き、「イヤーッ!」枯れ木めいて並ぶ古代石柱を垂直に駆け上がって、ドージョーの様子に目を凝らした。12

2014-06-21 00:04:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼らを警戒させたのは、アトモスフィアである……清冽な湧き水に垂らされた重油の一滴めいて、重く濁った存在感を、彼らのニンジャ第六感は感じ取っていた。ユカノは手を翳して目を細める。質実剛健なドラゴン・ドージョーの外壁、鬼瓦、中庭……ナムサン!中庭に複数のテント!異物である! 13

2014-06-21 00:07:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

土に突き立てたニンジャ幅広剣に体重をもたせかけ、物憂くボンボリの光の揺らぎを見つめる大柄なニンジャは、伝令のニンジャが駆けてくる物音を先に察していた。「申し上げます!申し上げます!」「そう騒がずともよい」ベオウルフは伝令を睨んだ。「首尾を言え」「スパルトイ=サン、帰還!」 15

2014-06-21 00:22:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「小僧がか?他の連中はどうした」ベオウルフは大儀そうに立ち上がり、天蓋を出た。ドージョーの白砂を蹴立てて歩く偉丈夫に、伝令は追いすがった。「プリースト=サン、マーチヘア=サンは……その……帰還せず!スパルトイ=サンも負傷をしており……」「霊薬のストックは?まだあるだろう」16

2014-06-21 00:32:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アッハイ……」伝令は言葉を濁した。霊薬は奇怪きわまる半獣のニンジャの背より生ずる。ディムライトは胸の悪くなるような生き物であり、ゆえに、その為だけにテントがひとつ、用意されている。しかし文句を言うものは誰もいない。ディムライトの生やすキノコの霊薬はキャンプの生命線だ。 17

2014-06-21 00:36:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドラゴン・ドージョーに設置されたこの拠点の居住性は決して良くはない。では、彼らの帰るべき地はどうか。……比較は難しい。時間の流れと切り離された超常の空間に身をおくことは、決して快いものではないからだ。「運べ!」奴隷が数人、負傷したニンジャを抱え、ディムライトのテントに向かう。18

2014-06-21 00:41:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オ……オオーッ!オオーッ!畜生ーッ!」負傷ニンジャが叫び声をあげている。スパルトイだ。ベオウルフは苦笑し、ディムライトのテントにエントリーした。「何にやられた。ドラゴン・オートマトンか?」「違うッ!人形にこの俺が、遅れを取るかッ!」辮髪のニンジャはのたうち回りながら答えた。19

2014-06-21 00:45:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「うるさくてかなわん」ベオウルフは腕を組み、奴隷医師にあごをしゃくった。「霊薬を処方せよ」「アイ、アイ……しかしこのペースで消費するとですな……」奴隷医師はテント内中央でドゲザめいてうずくまる存在を厭わしげに見た。その背、脊髄沿いに、奇妙に光るキノコが生えている。まばらに。20

2014-06-21 00:48:32
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