Masaaki Suzuki(@quovadis166)さんのブランデン話

Masaaki Suzuki(@quovadis166)さんによるブランデンブルク協奏曲の解説です
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

バッハの町ライプツィヒよりこんばんは!この町は今サッカー一色。誰もバッハには興味なさそうです。かく言う私も、今回はバッハではなく、ゲヴァントハウスオケとハイドン『天地創造』がお仕事。次なるバッハは、調布のブランデンブルク全曲なので、今日から1曲ずつお話しいたしましょう。

2014-06-14 07:02:48
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

さてブランデンのお話その1。バッハがケーテン時代に書きためた作品から6曲を選び、1721年にブランデンブルク辺境伯に献呈したのがブランデンブルク協奏曲。その6曲はすべて異なった楽器編成で、演奏するには何とも不経済。でもとても象徴的な意味が込められている。#調布のブランデン

2014-06-15 06:47:38
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

第1番ヘ長調は、2本のホルンと3本のオーボエ、そして3度高く調弦したピッコロ・ヴァイオリンのソロが登場。ホルンは宮廷、オーボエは庶民を象徴する、というのが米国のマリッセンの説。1楽章で両者全く異なったモティーフで始まるが、徐々に歩み寄って最後は共通になるのがミソ。#調布音楽祭

2014-06-15 06:57:00
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

このブランデン第1番1楽章は、カンタータ第52番『偽りの世よ、我汝に頼らず』のシンフォニアに転用されているので、これが現世の構造を象徴していることは確か。もっとも、現世は偽りの世に違いないが、第1番を閉じる宮廷舞踏メヌエットの優雅さは、王侯の権威が神に由来すればこそ。#調布音楽祭

2014-06-15 08:29:15
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

Open Air Worship at Marktplatz Leipzig! Magnificat resounding in entire city. 聖トマス教会の礼拝が、マルクト広場で!マニフィカトが町中に鳴り響く! pic.twitter.com/aWBWpFZsrC

2014-06-15 18:55:26
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

ブランデン話その2。第2番は超絶技巧F管トランペットの登場で難曲として有名。皆さんこれはトランペットのソロの曲だと思われているが、実はオーボエ、リコーダー、ヴァイオリンも対等のソロ楽器。一説に寄れば、これらは当時の町楽士全員が学んだ基礎楽器だったとか。#調布音楽祭

2014-06-16 03:32:41
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

ところでバッハの他の曲には一度もF管Trpは登場しないのに、なぜここで?と素朴な疑問。ひょっとするとケーテンでは、フランス風に短3度低いピッチで演奏していて、このTrpパートはF管ではなくD管(ニ長調)で演奏できたかもしれない。ピッチの話はややこしくて、すみません。 #調布音楽祭

2014-06-16 03:56:05
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

バッハの同僚トランペット吹きは、この絵のG.ライヒャが有名。今回調布では、名手ギー・フェルベが同じ形の楽器で挑戦する。しかしライヒャは、高い音を出した翌日心臓発作で死んでしまったので、ギーには気をつけてもらわなきゃ。 #調布音楽祭 pic.twitter.com/193DdkxSm1

2014-06-16 04:17:16
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

ブランデン話その3。ここでは徹頭徹尾3へのこだわり。表題にも黒々と「3」、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが3本ずつという異様な編成。肩置きチェロを用いると、写真のように9人の横型弦楽器が見事に並ぶ。(+Vo&Cemb) #調布音楽祭 pic.twitter.com/SXCa83IB27

2014-06-17 06:08:01
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

しかし大きな謎がひとつ。これほど3にこだわるなら、当然3楽章であるべきなのに、第2楽章はたった1小節の終止形しか書かれていない。ここでは短い即興演奏のみをすることが多いが、3に拘るならやはり重々しい2楽章があるべきでは? #調布音楽祭 pic.twitter.com/FKvXU5IOv3

2014-06-17 06:15:31
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Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

そこで(もうBCJファンはご存じでしょうが)バッハ唯一の「3」にまつわる器楽曲を編曲して、優美な第2楽章をお届けいたしましょう。ただし今回チェロは縦型を用います。1楽章では9人全員にソロがあり、3楽章では正しく目が回るようなプレスト。これこそブランデンの醍醐味。#調布音楽祭

2014-06-17 06:22:24
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

閑話休題。ゲヴァントハウスオケで天地創造のリハが続いている。このオケは正しくJ.S.バッハが指揮していた大学生コレギウム・ムジクムが発展して、Große Konzertというシリーズになり、やがて織物会館(Gewandhaus)を会場としたので、今の名前になった。名門オケは違う。

2014-06-18 06:55:30
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

ブランデン話その4。第4番では圧倒的な超絶技巧ヴァイオリンが主役で、エコー・フルートと呼ばれるリコーダーが華を添える。冒頭は楽しげな3拍子のモティーフで始まるが、途中からいきなりヴァイオリンが駆け巡り、第3楽章フーガ途中のソロでは、見ている方も腕が痙攣してしまう。#調布音楽祭

2014-06-19 07:56:28
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

ブランデン話その4続き。特に興味深いのは第3楽章。そもそも協奏曲の原理にフーガ形式はそぐわない。しかしバッハの手にかかるとそれが見事に融合してしまう。駆け巡るパッセージがフーガの中に共存して燃え上がるのは、オルガン用のフーガホ短調BWV548に似ている。 #調布音楽祭

2014-06-19 08:04:46
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

ブランデン話その5。チェンバロソロで有名な第5番。これも実はヴァイオリンとフルートが一緒にソロ群を作る。そのせいか伴奏には第2Vnはなく、合計7人で演奏することになっている。冒頭は、一度聞いたら決して忘れられないレレファファララレレドレドシラソファミ! #調布音楽祭

2014-06-22 08:29:25
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

第5番大規模な第1楽章は山あり谷あり、ソロ楽器の掛け合いがともかく楽しい。そして神秘的な和声が蠢く部分を経て、最後の山場。オケの人はコーヒーを飲みに行けるくらい長い休みとなって、チェンバロの一人舞台に。バッハは新しいチェンバロが手に入ってよほど嬉しかったのだろうね。#調布音楽祭

2014-06-22 08:36:32
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

ついにブランデン第6。こんな変な編成は他のどこにもない。何しろヴァイオリンなし、ヴィオラ2本とチェロのソロ。伴奏にガンバが2本とヴィオローネ。バッハがヴィオラ好きだった事は確か。例えばペルゴレージをドイツ語の詩編51に編曲した時には特別なヴィオラパートを付け加えた。#調布音楽祭

2014-06-23 17:47:22
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

ブランデン話その6続き。思えばバッハがリューネブルクから帰ってきて、初めて就いた職もワイマール宮廷のヴィオラ弾き。特別な思いがあるのも当然だ。それにしてもここではVn顔負けのヴィルトゥオーゾ。しかしカンタータの中には、1曲もヴィオラのソロがないのはなぜ?#調布音楽祭

2014-06-23 17:56:36
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

ブランデンその6続き。カンタータ中にはチェロ・ピッコロという楽器のソロが数曲あるが、これは横型の楽器だった可能性大なので、ヴィオラの代わりだったのかもしれない。6番はBachの調’B’-Durなので、自分の文字に好きな楽器を合わせて、渋い音色で自画像を書いたのかも。#調布音楽祭

2014-06-23 18:05:56
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

ブランデン話総括。思えばこの曲集は本当に風変わり。他の曲集と違って、わざと共通点を避けてすべて異なった編成・構成・響き。これは正しく社会が持つDiversityを象徴しているように思える。ひとりひとりは、本当に違った音色を奏でるが、それで世界の全体が成り立っている。#調布音楽祭

2014-06-23 18:18:08
Masaaki Suzuki @MSuzukiBCJ

ブランデン総括の総括。今回はこの6曲を、バッハの思いの濃い6番で始め、だんだん人と楽器が増えて、最後に宮廷の祝賀会的第1番で大団円。めでたしめでたし、と行きましょう。それでは、皆さん、我が町調布でお待ちしております。chofumusicfestival.com/cmf2014/ #調布音楽祭

2014-06-23 18:34:35