ラバウル少佐日誌:とある艦娘の過去と未来編其ノ捌

艦これ二次創作小説です。とある艦娘の過去捏造注意です。
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檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

(あらすじ: ラバウル基地を襲う数千の敵艦隊。 其の正体は、数年前に深海棲艦に襲われ、壊滅した熱海の住民達であった。 変わり果てた姿のそれ等を率いるブレインは、娘であった木曾までもを仲間にしてしまう) #ラバウル少佐日誌

2014-06-23 23:09:19
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

(彼女の実の姉である球磨型の四人は、深海棲艦雷巡チ級と化した木曾と対峙する。 妹を殺さねば、基地に危害が及ぶ。故に、そこに迷いは無かった) #ラバウル少佐日誌

2014-06-23 23:14:58
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

北上、大井は雷撃の準備動作をとる。 両脚の魚雷発射管に、手を回し「ぐッ!?」「ひあっ!」 しかし、遅い。 雷巡チ級の先制を喰らい、二人の服と艤装が吹き飛んだ。 「木曾!テメエ、クマ達の事が分からねえクマ!?」 球磨の呼び掛けにも、彼女は答えない。(1) #ラバウル少佐日誌

2014-06-23 23:20:24
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

雷巡チ級は、ただそれ以上攻撃の意思を見せず、睨むだけだ。 「にゃにゃ?あっちからは、これ以上するつもり無いみたいだにゃ」 「チッ……黙ってアイツが連れてかれるの、見てろってクマ!?」 喚く球磨に、多摩は静かに首を横に振る。 (2) #ラバウル少佐日誌

2014-06-23 23:26:14
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ここで鉄クズにするんだにゃ。アイツは、養父さんと仲良く海の藻屑だにゃ」 「畜生!」 ばしゃ、と球磨は思いきり水面を踏みつける。 「木曾……!」 『アー、アー。お取込み中のトコロ悪いんだがね、お前達』 その時。 拡声器を通して、甲高い男の声が降り注ぐ。(3) #ラバウル少佐日誌

2014-06-23 23:31:53
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ゲッ……」 その声は、彼女達の司令官にして提督……、 少佐のものだ。 『おい、そこの雷巡チ級。とっとと投降しろ。自害も許さんぞ?戦死は以ての外だ』 雷巡チ級は、疎ましげに顔を上げた。(4) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 00:04:43
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「何考えてんだクマ!」 通信機へ怒鳴る球磨に、 『まあ、見ていろ』 少佐は謎の余裕を見せる。 『このままお前を鹵獲する以外に、最良の選択肢は無い。どういう意味か、分かるな?』 ……チ級は、両腕を基地へと向けた。(5) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 00:33:13
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

『抵抗するのか?ではお前達を沈めた後に、そこの姉共全員を軍法会議すっ飛ばして、拷問に掛けてやらねばな』 煽る少佐に、 「黙レ。かつみヲ好キ放題兵器トシテ酷使シタ、悪魔メ!」 ブレインが指を差し、 『ぐおッ!?』 装甲空母鬼が、艦砲射撃を行った。(6)#ラバウル少佐日誌

2014-06-24 00:47:28
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

支援の艦隊達の内、数人がぎょっとした目でその様子を見やる。 「……莫迦メ。通信機等使エバ、逆探知モ容易ダトイウニ」 装甲空母鬼と視線を交わしつつ、ブレインはぼやき、辺りを見回す。(7) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 00:54:29
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「……然シ、確カニ我々ハ不利ダ」 目の前の軽巡2人、雷巡2人以外、支援艦隊は殆どが正規空母と戦艦だ。 「かつみ、父サンガ時間稼ギヲスル。其ノ間ニさぶまりんノ増援ヲ……」(8) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 00:59:28
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「かつみ?」 雷巡チ級は……否、 木曾は……いいや、 木乃曽実(きのかつみ)は、水面に浮かぶ何かと目を合わせていた。 「木乃、さん……!?どうして、あなたが……!」 目から血を流し、無理矢理戦艦レ級の艤装を取り付けられているこの少女を、曽実は知っていた。 (9)#ラバウル少佐日誌

2014-06-24 01:06:10
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「父さんが迎えに来たんだ。……だから、一緒に帰ろうと思う」 「ダメ……!絶対に、ダメ」 曽実は、首を傾げる。 「確かに、ひとときの幸せが、あの海の底にはあるかもしれない。木乃さんも、木乃さんのお父さんも。だけどそれは間違った幸せだよ」(10) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 01:13:15
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「やっと苦しまずに済むんだ。オレはもう、疲れちまった」 水面に浮く高梨を、曽実は濁った眼で無感情に見やる。 「……木乃さん」 高梨は息も絶えだえに、左腕を上げ、曽実の右頬を、仮面の上から撫でた。 (11) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 01:21:25
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「……私はどれだけ苦しくても、人間のまま、死にたかったな」 ぱしゃりと力無く、彼女の腕は水に落ち、身体も深い水底へと沈んでいった……。 「大丈夫だよ曽実。父さん達は何度沈められても、帰って来れる。身体を機械へ置き換えて、永遠の命を得られるんだ」(12) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 01:27:06
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「……父さん、教えてくれ」 父と目を合わせて、曽実は問う。 その父の顔は、また元の深海棲艦のような外見に見えつつあった。 「オレはどうすればいい」 「父さんとおいで。そうすれば、もう苦しまずに済む」 「……どうしてなんだ?」(13) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 01:34:25
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

曽実の問いに、父は顔を歪める。 「高梨は人として生きたかったって言ってた。オレはあいつの顔が、とても苦しげに見えたよ」 「つまらない事だよ、曽実。人であり続ける事に拘るなんて」 「……父さん」 曽実は、徐に仮面を外した。 (14) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 01:42:28
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「俺はもう、そう思えないよ」 そして全ての艤装を外すと、 「かつみ!?」「「「木曾」」」っち!」 高梨の後を追う。 「教えてくれ、高梨!」 海中で、彼女は叫ぶ。 深い海溝へ沈みゆく高梨へ、手を伸ばして。(15) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 01:46:48
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「どうしてお前は、人でありたかったんだ!こんな醜く、穢れた存在で……!」 レ級は、彼女へ笑みを向けるだけだった。 しかし、その笑みは大抵のレ級が浮かべる道化的なモノでなく、 人らしさの滲み出た微笑みであった。 ……彼女は水底の闇へ、消えていった。(16) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 01:49:36
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ぷはッ!」 彼女が海上へ戻った直後、 『今だ!』「へっ?って!」 「クマー!」「にゃー!」「レズー!」 三人の姉達が、腕脚を掴む。 「な、何のつもりだ姉さん達!?」『後ろを向け、木曾』「何?」 (18) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 01:57:49
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

そこには、重雷装巡洋艦の艤装を持った北上がいた。 だが、その艤装は北上のものでも、大井のものでもない。 より重厚且つ、勇壮な外見をしている。 「木曾っちー、新しい艤装だカミー」 「マジかよ!?」 答えるように、 「ほい」 北上は彼女の背へ艤装を付けた。(19) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 02:01:03
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ぐ……!?」 直後、彼女の背中から全身へ、 「おおおおオアアアアア!」 熱く滾る液が行き渡る感覚が走る。 『どうだ?艤装の浄化効果で、内側から艦娘へ戻してみたが』 「お……おお、いいぜ、凄く良い!」 (20) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 02:06:25
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

口から漏れ流れた涎を新たに生成された手袋で拭き、羽織った外套を翻した木曾は、水面を踏み締め、仁王立つ。 「悪ィな父さん。オレ、やっぱ冷たいとこは嫌だわ」 木曾は不敵に、そして寂しげに笑むと、ブレインの乗る装甲空母鬼へ、両脚と左背面の魚雷発射管を向けた。(続く) #ラバウル少佐日誌

2014-06-24 02:09:15