筍提督と僻地の泊地 (5)

ミサイル駆逐艦<たいせつ>の名を持つ提督兼艦雄兼学生・筍の、何の変哲もない日々を綴る日記。 (ほのぼの(大嘘)日常編・〈のと〉護衛編)
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※こちらは「筍提督と僻地の泊地」の(1)から(4)の続編です。そちらを先に読むことをオススメします。

後朝

筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

「おはようございます」 『おはようございます』 「何時ですか?」 『0703……もう食堂は開いてるな』 「起きますか」 『起きよう』 #僻地の泊地日記

2014-06-24 23:20:54
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

『あの後、眠れたの?』 「ええ、確か……すぐに寝たと思います」 『そっか。俺は寝れなかったよ』 「ずっと起きていらしたんですか?」 『頭が妙に冴えちゃって』 #僻地の泊地日記

2014-06-24 23:25:51
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

「それはまずいですよ。提督はかなりお疲れのはずですが」 『そうだな。春の大海戦、演習、最提さんに関する一連の作戦……仕事だらけな上に、後半は俺も出撃したしな。でも……』 『鳳翔もゆうべが初めてだったとは……』 「うふ」 #僻地の泊地日記

2014-06-25 00:07:48
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

そういうわけで、全く眠れていません。先ほどまでどんな仕事でもこなせそうだった頭が、体を起こした途端に痛みます。睡魔の代わりがコレとは……。 食堂で朝食を出しているのは〇六四五から〇八〇〇までです。身支度はそこそこにして先に腹ごしらえをしに行きます。 #僻地の泊地日記

2014-06-25 00:13:08
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

食堂で鈴谷を探してとっちめてやろうと思いましたが、入れ違いになったらしく彼女の姿はありませんでした。その代わり、隣に<ふぶき>が座って、なんとか元気を取り戻した旨を伝えてくれました。艤装が戻る頃には、いつもの彼女に戻るでしょう。 #僻地の泊地日記

2014-06-25 23:41:00
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

「そういえば、鳳翔さんはどうしたんですか?」 『後で食うって。身支度してんじゃないかな』 「なら待ってあげればよかったのに」 『ウッ』 「ダンナとしての基礎がなってませんよ」 『す、すまん』 イージスが汎用駆逐艦に諭されるとは……。 #僻地の泊地日記

2014-06-25 23:58:37
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

それにしても、朝の支度にしては随分時間がかかっています。一体何をしているのか。 <あやなみ>が来たのとほぼ同時に食べ終えた私は、<ふぶき>をそのパートナーに任せて執務室へ戻りました。 しかし、そこに鳳翔はいませんでした。抜け殻となった蒲団だけが残されています。 #僻地の泊地日記

2014-06-26 00:08:02
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

まだ秘書艦室かと思って覗くと、その部屋の廊下側の扉から鳳翔が入ってきました。 「あら、提督」 『何処にいた? 飯、まだでしょ?』 「シャワーをいただいていました」 『ああ、なるほど』 #僻地の泊地日記

2014-06-26 00:16:10
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

「今日はどうなさいます?」 『さすがにゆっくりしたいな』 「そうですね。四月の下旬から大忙しでしたものね」 『しかしずっとここにいるのも体に悪いな』 『あとで散歩でもするか?』 #僻地の泊地日記

2014-06-26 00:21:18

姉妹の浜

筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

というわけで、鳳翔が朝食を済ませた後に、二人で散歩に出ることにしました。時間を気にせずに泊地を歩くのは久方振りです。 艦娘たちはスケジュール通り動いているため、私の指示がなくても問題ありません。内線は情報部に取り次いでもらうことにしました。 #僻地の泊地日記

2014-06-26 22:58:05
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

管理棟から工廠前の広場を抜けて、海へまっすぐ歩くと、いつも艦娘たちが出撃している埠頭の前に出ます。通常の艦船が停泊できるほど大きく造られています。 その埠頭に向かって左へ曲がると、演習場や、それを見渡せる浜辺と丘に行くことができます。今日はそちらへ行きましょう。 #僻地の泊地日記

2014-06-26 23:05:06
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

少し歩けばすぐに見えてくる演習場では、翔鶴と瑞鶴が、烈風の発着艦訓練をしていました。もともと烈風戦闘隊を二隊揃えていた彼女らですが、この度、三隊目を配備するに至ったのです。だから、これは彼女らではなくパイロットたちのための訓練です。 #僻地の泊地日記

2014-06-26 23:24:59
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

「この前まではまだ黄色い嘴だと思っていましたが、春の大作戦では、既に主力だったんですものね」 訓練を眺める鳳翔の目は、妹らを見守るそれに相違ありませんでした。もし2番艦以降が建造されていたら……。こんな想像も、90年以上前のワシントンの闇の中です。 #僻地の泊地日記

2014-06-26 23:35:26
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

鳳翔が――おそらく無意識に――足を止めたので、私もそれに合わせます。すると彼女は「ごめんなさい」と言って再び歩を進めようとし、しかし視線は演習場に釘付けです。 私に兄弟姉妹はいませんが、気持ちはよく分かります。 『見ていくか』 「え?」 『そうしようじゃないか』 #僻地の泊地日記

2014-06-26 23:39:56
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

私たちは手の付けられていない浜辺に座って、訓練を見守ることにしました。鳳翔のお尻の下には私の軍服を敷きましたが、決して嬶天下の比喩ではありません。 『やっぱり、あいつらも昔とは違うか』 「少なくとも、私が指導していた頃と比べれば、見違えました」 #僻地の泊地日記

2014-06-27 22:52:21
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

「もうお察しでしょうけれど、私はあの子たちを実の妹のように思っています」 『ああ。だろうな』 「あの子たちの練度が上がり、主力部隊の一員になったことは、提督以上に嬉しく思っていたのですよ」 『おいおい、俺だってあいつらのことは手塩にかけて育てたんだぞ』 #僻地の泊地日記

2014-06-27 23:00:22
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

『今じゃ烈風だって満足に配備できるようになった。それを俺は、あいつら以上に喜んだものだ』 「提督は、空母の私たちを愛していらっしゃるのですね」 『空母だけじゃないさ。可能な限り、皆に力を与えたいと思ってるが、どうにも艦娘が多くてな』 #僻地の泊地日記

2014-06-28 21:44:32
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

私が勝手に「僻地」と呼ぶこのリンガも、南方の重要な泊地です。特に第二次大戦時はトラックと並ぶほどだったとか。赤道直下という決して温い環境ではありませんが、様々な訓練をしやすい上に石油産出地も近く、利点は多い。そこに艦娘が集まるのは必然なのでしょうか。 #僻地の泊地日記

2014-06-28 21:50:24
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

発着艦訓練は、烈風から流星改にバトンタッチしたようです。同時進行の、模擬魚雷を使った魚雷投下訓練は、パイロットの腕が問われます。 と言っても、艦攻のパイロットは既に熟練揃い。流れ作業のようにすぐ終わってしまうだろうと思っていると、足音が聞こえてきました。 #僻地の泊地日記

2014-06-28 22:17:54
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

「あれ、二人とも何してるの?」 声を聞いてやっと振り返った私は、ヘリ母艦姉妹の姿を認めました。声の主である<ずいかく>の後ろで、<しょうかく>が「おはようございます」と頭を下げます。 『散歩がてら、泊地を歩き回ってるんだ』 「とてもそうは見えない」 『今はな』 #僻地の泊地日記

2014-06-28 22:23:08
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

『ここ一、二か月ほど、皆の訓練を見てなかった。あの演習だって、どっちかと言うと対テロ戦争だったろ。だから、たまにはいいと思ったんだ。鳳翔も見たかったようだし』 鳳翔は肯定も否定もせず、ただ微笑みます。 「てっきりデートかと思ったよ」 「こら、<ずいかく>!」 #僻地の泊地日記

2014-06-28 22:28:49
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

『で、お前らは何しに来たの?』 「私たちが次に使うことになっているのですよ」 『順番待ちか』 「そ! その序でに、訓練を見に来たわけ。っていうか、私たちの前の空母の訓練は、毎回見てるんだけどね」 『へぇ、そうなんだ』 #僻地の泊地日記

2014-06-28 22:34:34
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