~人へ~

zero(@allplusnothing)のtwitter詩集。保存用です。
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alchemist @allplusnothing

〈窓〉窓は沢山おしゃべりします。開いた窓、閉じた窓、灯りのついた窓、暗い窓。みんなてんでに誰彼かまわずおしゃべりしあっているのです。人が部屋に入ると窓は途端にその人を代弁しようとします。窓から漏れる明かりでその人のことを色々伝えようとします。でもすべてはでたらめなのです。

2014-10-18 16:31:35
alchemist @allplusnothing

〈ライト〉先の見えないあなたの人生に、先が見えるという錯覚を与えるために今日も自動車の先端であなたの前方を照らします。本当は何もないはずの闇の中に標識や建物や人間やあらゆる幻想を映し出します。あなたはきれいに騙されてくれる、自動車なんて一つの夢の製造機でしかないのに。

2014-10-18 16:29:05
alchemist @allplusnothing

〈街灯〉長い間あなたのことを待っていました。そしてこれからもあなたのことを待ち続けます。私はただあなたの行方を照らすだけ。挨拶を交わすこともなく疲れたあなたが通り過ぎていくのを見ているだけ。あなたには決して気づかれなくていい。気づかれても知らないふりをして二人は決して出会わない。

2014-10-18 16:24:43
alchemist @allplusnothing

〈灯り〉今や町の灯は、自然や人間よりも疲れた人に優しい。人工的なものの中で夜中まで仕事をする人にとって、灯りは単なる光ではなく、温もりであり、誰かがそこにいることの証明でもある。灯りは表情を持たずただ照らすだけでいかなる解釈も強要しない。灯りは平等で、人はそこに温かさを読み取る。

2014-10-18 16:19:37
alchemist @allplusnothing

〈ストレスⅡ〉ストレスは固体でも気体でも液体でもない。確固とした形を持たず、かといって低みがあっても流れ落ちず、またすぐに飛び散って行かない。物質の運動とは根本的に違った移ろいを示すのがストレスであり、例えば少しずつ点ぜられる死のようなものがのたうって果てるようにうごめく。

2014-10-12 16:33:36
alchemist @allplusnothing

〈ストレス〉動き続ける感情はそれでも軸を見失わない。軸の周りに等しく釣り合っている感情の流れに、なかなか揺れやまない衝撃を与えると軸自体がずれ始める。ストレスはこの軸の動揺から生じる。軸が位置を再び固定するまで人は生み出される酸に焼かれ、やがて軸が酸を防ぐところでストレスは消える

2014-10-12 07:57:19
alchemist @allplusnothing

〈使命Ⅱ〉使命は公的で権力的なもの。生活は私的で無力なもの。使命によって無力な私的領域が殺されていくなんて紋切型を僕は信じない。使命は極めて私的で葛藤を伴うもの。生活は限りなく公的で様々な人々を情緒的に動かすもの。私的な使命も強力だし、公的な生活も無力である。

2014-09-27 05:09:17
alchemist @allplusnothing

〈使命〉自分のつまらない存在を価値のある存在へと高めてくれた使命。夥しい機能の集積する一角に重要な位置を占める、価値の複合体の中に混ざることができる。そうして僕は使命に従って、自分の小さな存在や他人の小さな存在を殺していく。大きなものを実現することは、小さなものを捨てるようで救う

2014-09-27 04:55:21
alchemist @allplusnothing

〈現実Ⅱ〉多くの人が口をそろえて言う価値観をとりあえず「現実」として捉えてみた。現実は既に根拠を失っており、ただ惰性と力だけが慣性のように残っていた。現実は怠惰で横柄で、でも逆らうと罰を受ける。だが、とりあえず現実に取り入っているとおこぼれに与れる。現実はわがままな暴君みたいだ。

2014-09-26 06:47:17
alchemist @allplusnothing

〈現実〉「これが現実だ」と示されるものはすべて夢か嘘ばかりだった。現実はどこにも存在せず、経験をもとに推測してできあがった幻想が現実のような顔をしていた。僕には僕の現実がある。君には君の現実がある。二つの現実は大きく異なっていて、でも平均を取ってしまうと両方とも壊れてしまう。

2014-09-26 06:42:30
alchemist @allplusnothing

〈傷〉美しい花が咲いた。自然界の傷のようだった。美しい音楽が鳴り響いた。時間を引き裂く大きな傷のようだった。美しい女性を見た。人間の共同体の避けがたい傷のようだった。美しい幻想を見た。意識が作り出す傷でしかない。そうしてこの世の美しいものは全て傷だから、傷は全て美しい現象です。

2014-09-05 03:50:19
alchemist @allplusnothing

〈泳ぐ〉泳ぐのが上手な魚は泳ぐのに適したフォルムで泳ぐことだけを考えて泳いでいく。そもそも僕は泳ぐのに適しないフォルム。泳ぐことだけを考えてみようとしても、無駄に大きな鰭があちこちにぶつかるし、水が体のいろんな部分で余分な抵抗に遭う。僕はそれでも泳ぐのが上手になりたい魚もどき。

2014-09-05 03:44:02
alchemist @allplusnothing

〈暴力〉あとに残った。原因はあったのかもしれないし理由はあったのかもしれない。それでも結果だけが全てであるかのように残っていく。重く混乱を呼ぶ暴力は、歴史の始まりのように、先立つものなど何もなく、その後に全てが重く吹きだまる。吹き溜まりからは何も生まれない。無の吹き溜まりだ。

2014-08-28 05:05:23
alchemist @allplusnothing

〈自己愛〉自然と満ちてくる朝の日の光のようなもの。嘘も本当にしてしまい、幻も現実にしてしまう、自己を次の自己へとつなぐもの。だが独善的で、自らの生命としての尺度しか用いないもの。他者からの否定を跳ね返し、跳ね返しきれないとき自己愛は壊れる。そして他者の光が灯り、自己愛は葛藤になる

2014-08-21 06:31:52
alchemist @allplusnothing

〈ユニフォームⅢ〉サラリーマンのスーツは着れる社会だ。社会はこんなに薄っぺらく、こんなに汚れやすく、こんなに扱いやすい。家に帰ればすぐさま社会を脱ぎ捨てる。だが彼は戦慄するのだ。衣服という余りにも近い生活そのものに社会が現れてしまっていることに。スーツはもはや自分だけのものでない

2014-08-16 06:02:42
alchemist @allplusnothing

〈ユニフォームⅡ〉サラリーマンのスーツには彼の全ての生活が象徴されている。理由もよく分からない手続であったり、画一化されたスマイルであったり、それでもいつでも清潔に保たれる態度であったり。サラリーマンのスーツはとても悲しい。地図のない社会に迷い込んだ人間の毅然とした情熱でいっぱい

2014-08-15 15:01:23
alchemist @allplusnothing

〈ユニフォーム〉似たようなスーツを着て、似たような革靴を履いて、似たようなバッグを抱えて、僕らは一体何を揃えたかったんだろう。揃えたいものなんて何一つなかった。むしろ揃えたくない内側の秘密を傷のように抱えながら、本当は全てを揃えたくないから、せめて外見だけを同一化の供犠に捧げてる

2014-08-15 14:53:56
alchemist @allplusnothing

〈労働Ⅳ〉労働はびっしり葉を茂らせている。僕は一番低みにある陰にまみれた一枚の葉。労働は強い風に負けないようにどんどん巨木になり他の巨木と競い合っている。高みにある葉は厳しくそして優しい。陰にまみれた僕の絶望的な努力に優しく重なり、僕は報われた喜びに泣いてしまう。労働は賤民を作る

2014-08-13 06:40:33
alchemist @allplusnothing

〈労働Ⅲ〉僕がいつものように散歩していると、道には道のリズムがあり、雲には雲のリズムがあり、空には空のリズムがありました。散歩をするということは、そういったリズムに自分を合わせて行くことです。いつも労働するときは、これと同じで、自分以外のリズムに自分を合わせていく共鳴があります。

2014-08-12 05:54:24
alchemist @allplusnothing

〈労働Ⅱ〉今日も労働の川が流れている。とめどなく流れ、海へ流れ込み、蒸気となり雲となり雨となる労働の川だ。人々は一定の方角を向きながら、思案し屈折し岩にぶつかり、労働を下流へ下流へ流していく。目的は全て暫定的で、究極の目的は一体何なのか、それは川を構成する分子一つ一つにより異なる

2014-08-11 19:21:07
alchemist @allplusnothing

〈労働Ⅰ〉誰一人頼るもののいない土地で、郵便配達夫の信書を配る労働を見た。私の孤立も一つずつ配り終えて欲しかった。果てしない悲しみに襲われ海岸を歩いているとき、漁夫が魚を降ろす労働を見た。私の悲しみなどこの大量の魚の中の一匹に過ぎなかった。労働は人間の内面の停滞を動かしてくれる。

2014-08-11 06:41:12
alchemist @allplusnothing

〈遺書Ⅷ〉私は社会の歯車となることで、歯車としての主体性を持って歯車として成長していった。それは、歯車でない役割を果たすときにも活きるものだった。呼びかけに答え更に呼びかけていく茎の生長、しかも世の大多数と同質で豊饒な生長。私は庶民としての水平性と愛情で起伏と抑揚のある世界を見た

2014-08-09 02:58:17
alchemist @allplusnothing

〈遺書Ⅶ〉私はもはや孤独ではなかった。孤独は一つの感情に過ぎなくなった。私を血縁で繋ぐ家族、私と笑顔を交換し合う友人、かつて愛し合った人たち、様々な風景を見せる自然、成長と発達をもたらす仕事、人生で起きる体験は全て私を孤独ではいさせなかった。人生はあまりにも愛情で満たされていた。

2014-08-06 06:24:04
alchemist @allplusnothing

〈遺書Ⅵ〉社会は一つの驚きとして私の中に開口部を作った。私に先立って時間と空間が人々の呼びかけを届けていた。私は途端に増えた人称を受け入れるために、平板だった感覚を耕して種をまいた。種は芽を吹き木になり二人称と三人称に木陰と木の実を届ける立派な大樹となった。作り作られる循環の中で

2014-08-06 06:19:26
alchemist @allplusnothing

〈遺書Ⅴ〉最も身近な感覚は疎外感だった。だが疎外された私を許すか許さないかで場は大きく分かれる。学校や社会は許さなかった。だが文学や哲学は許してくれた。私は文学や哲学に、疎外されたまま居場所を求めたし、文学や哲学に棲みつくための条件が疎外だった。私は文学で自らを許すこともできた。

2014-08-05 07:05:38