#変態不知火さん 『I can't live without 〝you〟』

高峯みやび @sukamelancholy

最早日課となったキス島への出撃、そして一戦して撤退の繰り返しで、私は私自身の練度を兎に角上げる事に執着した。そして練度が上がれば上がる程に私は戦闘の〝慣れ〟を感じていた。悪い意味ではなくって、例えば弓を引く速度だとかそういうのを冷静に早く出来るようになった。 #変態不知火さん

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索敵、発見からのアウトレンジ攻撃。常に早く、そして正確な射撃を。残存勢力は徹底的に追撃する。そうする事で艦隊の脅威を減らす。これこそが空母としての役割と信じて。随伴艦として名乗りを上げてくれた榛名さんも、私が成長している事を実感しているのか、とても喜んでいる。 #変態不知火さん

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きっと榛名さんの目には、私は艦隊の為に、そして世界の為に練度を上げて役立ちたいように見えているみたい。その実、私はただ提督――誠士郎さんの傍に居たくてその証の指輪、ケッコンをしたいからここまで練度を上げているだけなのに。 #変態不知火さん

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負い目を感じていないかと言えば、それは嘘になる。でも、私は弱い。だって不知火ちゃんやビスマルクさんは指輪を持っていて練度の上限を超えているし、戦闘だって私よりも遥かに強い。……そして、あの、加賀さんも。 #変態不知火さん

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あの日、加賀さんに資格がないと言われて泣いてから、私はあの人に追いつき、そして追い越したいと思うようになった。そして誠士郎さんを好き勝手に弄ぶ加賀さんに、勝ちたい。誠士郎さんを奪いたい。だから、何度も戦闘を繰り返して、練度をあげてきた。 #変態不知火さん

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そして……今日。何度も何度も繰り返したキス島への出撃が実を結んで、ついに私は練度の上限へと達した。補給すら忘れて、帰投してすぐに執務室へ行けば手袋を机に置きそれに顔を押し付けるかのようにしている不知火ちゃんだけが居た。ビスマルクさんはいないみたい。 #変態不知火さん

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「あの、不知火ちゃん」私が声をかけると、不知火ちゃんは顔を上げる。「はい。如何なさいましたか」……私が声をかけるまで何かもぞもぞしていた気がするけれど、忘れる事にする。「誠士郎さんが何処にいるか、知っていますか？」「司令ならば今……」 #変態不知火さん

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「……」「おお、龍鳳。戻って来たのか」……加賀さんと、誠士郎さんが執務室に入ってきて、私が出撃していた間何をやっていたのかを察してしまった。奥歯を噛み締めてしまいそうになるが、誠士郎さんの前だから、絶対にしない。「あの、提督。私……ついに到達したんですっ！」 #変態不知火さん

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そう言うと誠士郎さんはおお！ と驚いて頭をなでなでしてくれた。「そうか、ついに到達したのか。これまでよく頑張ったな」男の人の手。誠士郎さんの手。撫でてくれる。気持ちいい。もっとして欲しい。…………誠士郎さんの後ろに居る、加賀さんが居なければもっと楽しめたのに。 #変態不知火さん

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『I can't live without 〝you〟』 #変態不知火さん

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誠士郎さんが折角なでてくれているのに、加賀さんが視界に居ては素直に喜べない。私は毎日頑張ったのに、あの人の存在で気分が損なわれてしまう。……私、嫌な女だな。そんな事を思いながらも、誠士郎さんの胸へ飛び込む。「これからは、ぎゅーもちゅーも解禁……ですっ」 #変態不知火さん

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「あ、あはは……頑張ったのは、認めるが」苦笑いを浮かべて、誠士郎さんはなでなでを続けてくれる。……確かに私の事をもっとちゃんと見てくれるって言ってくれたのはつい最近だし、まだ誠士郎さんの中で私はただの艦娘に過ぎないのかも。……でももう挫けない。 #変態不知火さん

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誠士郎さんの服を掴んで、私は彼の瞳を見つめる。──綺麗な瞳。何処までも吸い込まれていって、このまま一つになってしまいたく……はっ。いけない。見とれている場合じゃない。「あの、練度の上限に達したから……。誠士郎さん。指輪を」「左の小指にしなさい」遮る邪魔者の声。 #変態不知火さん

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「左の、薬指ですっ、」「駄目よ。誠士郎、彼女に渡すのは左の小指にしなさい」「……何よ、この雰囲気」後から入ってきたビスマルクさんが私と加賀さんを見て困惑する。「二人とも、喧嘩をやめてくれ。俺は──」「薬指ですよねっ！」「小指にしなさい」 #変態不知火さん

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落ち着け、と誠士郎さんは私たちに掌を見せて、離れた。「いいか、あくまでも決めるのは俺だ。龍鳳の努力は知っているし、好意を寄せてくれているのも嬉しい。だから――」その続きを言おうとした瞬間、加賀さんが誠士郎さんの首を掴んで床に叩きつけた。 #変態不知火さん

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「私の言う事を聞きなさい誠士郎」「誠士郎さんに何するんですかっ！」「司令っ！」「誠士郎！」一瞬の出来事に、私や不知火ちゃん、ビスマルクさんは呆気に取られ、そして首を掴んだままの加賀さんを止めようとする。それなのに力が強くて全然離れない。片手だけなのに、何て力。 #変態不知火さん

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「なんの、つもり、だ。加賀、さん」「いいから。誠士郎、私の言う事を聞きなさい」「こと、わる……ッ！」誠士郎さんがそう言うと、首を掴んだ手がギリリ、と音が聞こえる程に力を込めた。誠士郎さんが、誠士郎さんが殺されちゃうっ！ #変態不知火さん

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させない！ 絶対にさせない！ 私は加賀さんに思い切り体当たりした。流石に私の体当たりでは加賀さんも耐え切れずに床に転がった。「何で、何でですかっ！ 私と誠士郎さんが薬指でケッコンするのがそんなに許せませんか！？」「……そうよ」表情を変えずに私を睨む加賀さん。 #変態不知火さん

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「これ以上誠士郎がケッコン相手を増やすのは許さない」「どうしてですか！ 加賀さんは薬指に指輪をしていないじゃないですか！」「そうね。だから？」「……えっ？」「だから何？ と聞いているの。彼が私に渡した指輪の意味は彼も同じの筈。それを誠士郎は破ろうとしている」 #変態不知火さん

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「司令、大丈夫ですか。呼吸は出来ますか」「あぁ……平気だ」不知火さんに助けられながら起き上がる誠士郎さん。そしてビスマルクさんも加賀さんに食って掛かる。胸倉を掴んで壁へと押し付ける。「貴女ね……ッ！ 誠士郎を殺そうとするなんていい度胸じゃないッ！」 #変態不知火さん

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「今すぐに貴女を殺してあげましょうか？ その方が良いわよね！？ そうよ、その方がいいわ。誠士郎を殺させはしないんだからッ！」凄い剣幕で怒るビスマルクさんを、誠士郎さんが止める。「エリザ、怒りを抑えてくれ。俺は生きてる。大丈夫だから」「でもっ！」「……頼む」 #変態不知火さん

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PAYDAY 2 Official Soundtrack - 13. Clean Getaway: youtu.be/oSCC2stxVyc @YouTubeさんから #変態不知火さん

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「もう……ッ！」乱暴に離してビスマルクさんは誠士郎さんの前に立ち、加賀さんを警戒している。不知火ちゃんは加賀さんをじっと見つめ、絶対に目を離さないようにしている。「それで、誠士郎。指輪はどうするの」「……」加賀さんの問いに、誠士郎さんはちら、と私を見る。 #変態不知火さん

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「俺は……薬指の指輪を渡す」そう言った瞬間、加賀さんはまるで猛獣のように瞬時に飛びかかり、けれどビスマルクさんと不知火ちゃんに取り押さえられる。私も慌てて誠士郎さんの前に立ち、彼女から離れるようにする。「そう、それが誠士郎の答えね。良いわ、今すぐ殺すわ」 #変態不知火さん

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「間違えるなよ加賀さん。右手じゃあないぞ。左手の、薬指だ。俺は龍鳳を三人目として受け入れるからな」「そう。そうなの。殺してあげる」「やめなさいよッ！ どうしてそこまで怒るのよッ！」「離しなさい。彼を殺すのに邪魔だわ」……なんで、どうしてなの。どうしてこうなるの。 #変態不知火さん