茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1286回【ブラジルW杯:悔しさの物語】連続ツイート
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3.125%。何の数字だろうか。ワールドカップに出場したあるチームが、優勝する確率。ドイツが優勝することで、アルゼンチンの夢は破れた。しかし、出場32カ国のうち、31カ国は破れ、たった1カ国が優勝した。つまり、一つの「うれしい」に対し。31の「悔しい」がある。
2014-07-14 08:23:01うれしさと悔しさと。競争が行われる領域では、悔しいという感情の方が普遍的である。ひとりの作家が芥川賞を受ければ、そこには一つの「うれしい」があるが、その背後には、何千、何万という小説家志望の若者の「悔しい」がある。つまり、世の中の圧倒的多数は「悔しい」なのだ。
2014-07-14 08:24:22競争をする場合に限らない。何かをしようとしたら、必ず「悔しい」の方が普遍的である。先日、ある講演会の際に「お手玉三つ同時に出来る人?」と聞いたら、10%も出来なかった。つまり、90%の人がお手玉を三つ同時やることに挑戦したとしたら、当分は悔しいが続くはずだ。
2014-07-14 08:26:18うまくできることなど、本当に少ない。トップアスリートは、金メダルをとった時でさえ、「もっとうまくできたはずだ」という、悔しい思いを抱いている。今回のワールドカップで優勝したドイツの選手だって、ふりかえってみれば、あそこのプレイはうまくできたはずと、悔しさがあるはずだ。
2014-07-14 08:27:44ワールドカップのMVPとなったメッシ選手は、今、きっと悔しさのかたまりだろう。チームを優勝に導くことができなかった。最後の、フリーキックのチャンスも、ボールがゴールよりも上に浮いてしまって、枠内に入ることができなかった。彼の胸の中には、悔しさの感情があるはずだ。
2014-07-14 08:28:50日本代表を応援していた私たちにとっても、大きな悔しさ、世界との壁を感じたワールドカップだった。しかし、考えてみれば、以上のように、この世では、本当は、達成の「うれしさ」よりも、達成できない「悔しさ」の方が、普遍的な感情なのである。そう考えると、気が楽になる。
2014-07-14 08:29:58挑戦する者にとって、「悔しさ」とは、毎日呼吸する空気のようなものである。基本は悔しいのであって、ただ、時々、達成の「うれしさ」が稲妻のように訪れる。しかし、本当に真摯に上り続けるものにとって、圧倒的に多くの時間は、むしろ「悔しさ」によって彩られているのだ。
2014-07-14 08:31:00もっと、悔しさに向き合っていい。悔しさを受け入れることを、学んでもいい。私たちは、どうしても、勝者の喜びにフォーカスを当てがちだが、この世で本当に普遍的なのは、敗者の「悔しさ」の物語なのだ。できない、ということの無念な気持ちをバネに、挑戦しつづける日々でありたい。
2014-07-14 08:33:01今回のワールドカップは、できない、という「悔しさ」の物語の大切さを、私たちに教えてくれた。ブラジルよ、ありがとう。そして、ピッチの上を必死に疾走して、やがて悔しさの大切なレッスンを私たちに教えてくれた31カ国の選手たちよ、本当に、心から、ありがとう!!!
2014-07-14 08:34:10