【マジコン規制】なぜ「著作権法」改正で規制強化しようとするのか。
さて,もうずいぶん時間が経ってしまって忘れられているかもしれないが,久々に罰則も含めたマジコン規制への法改正動向 #magicom 行ってみようか(笑)。
2010-11-16 14:56:21#magicom マジコン規制強化に向けての法改正に関しては,報道ないしそれに関するコメントがすでにネット上でも多数見受けられるが,今般とりわけ重要なのが,それらのほとんどが「著作権法の改正」に依らんとしている点を掲げていることだ。
2010-11-16 14:58:52#magicom 著作権法では,周知のように,「技術的保護手段」の回避に関しては,民事(権利侵害)責任(30条1項2号による私的使用目的複製の除外)や罰則(120条の2第1号)の適用がありうる。
2010-11-16 15:02:57#magicom しかし前回までに述べたように,これまでの一般的解釈(行政によるものも含む)では,ニンテンドー DS にあるような「特定信号検知・実行可能の仕組み」は,不競法上の「技術的制限手段」ではありこそすれ,著作権法上の「技術的保護手段」であるとは言えないようだ。
2010-11-16 15:07:22#magicom もう二昔も前,世間で「マルチメディア」が喧しく言われるようになっていた頃,そこで双方向にやりとりされる情報や関連事業について,直截に言えば「どこの役所が縄張りを持つか」がかなり重要な関心事だった。要するに新しくてかつ成長有望な分野の利権を取れるかどうかだった。
2010-11-16 15:13:35#magicom ざっくり分けると,マルチメディアに関しては,工業や技術そして経済に係る部分は通商産業省(現・経済産業省),コンテンツとしての著作物に係る部分は文化庁,そして通信に係る部分は郵政省(現・総務省)が縄張りだ。
2010-11-16 15:16:07#magicom 時が流れて2000年の知財立国宣言以降は,こうした縦割りを解消して横に連携を図ろうという動きの下,知的財産基本法の制定や毎年の知的財産推進計画などで統一的横断的な施策もなされてはいるが,法律や事業者を所管する意味での縄張りはいまだにある。
2010-11-16 15:18:32#magicom 法律で言えば,特許法その他の産業財産権法(不競法含む)は経産省所管,著作権法は文化庁所管,そして電波法や通信事業に係る法律は総務省所管だ。
2010-11-16 15:20:59#magicom さて前置きが長かったがここから邪推の本題。今回のマジコン規制で「著作権法」が挙げられているのは,要するに,文化庁が自分の縄張りでこれをやりたいのではないか,ということ。
2010-11-16 15:21:50#magicom もとより著作権関連事業,とりわけ従来からの分野,すなわち書籍出版や音楽・レコード,映像,放送などは文化庁との結びつきが強かった(放送は総務省との関係もあるが)。
2010-11-16 15:25:49#magicom しかしコンピューター(ゲームも含めて)やインターネットに関する比較的新しい産業分野については,文化庁とのつながりがやや弱く,他方そうした事業者はいくぶん経産省寄りのスタンスにあるようにも見受けられる。
2010-11-16 15:27:38#magicom もしここで文化庁が,自己の縄張りである著作権法の恩恵を受けうる場所にゲーム業界をほぼ丸ごと引き込めたとしたら,そこから得られる利益は少なくないだろう。まして海外に対しても有力なコンテンツたりえるゲームのビジネスだ。
2010-11-16 15:30:09#magicom 今般,一般解釈に従えば「技術的保護手段」回避装置たりえないマジコンについて「著作権法」改正で規制強化するという,到底つじつまの合わない話が通用しているのは,どうもこうした政治的,というか官僚的な背景が見え隠れするようで仕方ない。
2010-11-16 15:33:51#magicom 以前発言したように,まったく可能性がないわけでもない。しばしば権利者が主張するように「ゲームが(著作権法にいう)映画だ」とすれば,DS 等の特定信号検知・可能の仕組みは「違法な上映を防止・抑止する手段」すなわち技術的保護手段とも取れる。
2010-11-16 16:08:36#magicom したがって,マジコンがこの仕組みを回避することをもっぱらその機能とする装置・プログラムだということになれば,その譲渡等は著作権法120条の2第1号に該当すると言えよう。
2010-11-16 16:11:11#magicom ただしこれは結構な力ワザ。権利者が主張して裁判所が容れる可能性のある民事であればともかく,刑事事件では難しいかもしれない。
2010-11-16 16:12:11#magicom そうするとやはり法改正なのだが,可能性として,⑴現行著作権法にいう「技術的保護手段」にゲーム機の検知→(コンテンツ視聴・実行)可能の仕組みが含まれるようにすること,そして⑵「技術的保護手段」に関する条項とは別にマジコン規制を置くこと,のいずれかが考えられる。
2010-11-16 16:15:22#magicom 前記⑴の方法はすこぶる危険だ。本来著作権法が権利を付与し,無権限の行為を侵害とするのはあくまで「利用」行為(複製・上演・公衆送信等の21条以下所掲の一連の行為)であって,「使用」すなわち著作物を見,読み,聴く等の行為ではないはずだ。
2010-11-16 16:21:43#magicom しかし何度も言うように,ゲーム機の特定信号検知・可能の仕組みによって(文字どおり)可能となるのは,見る・聴く等の「使用」行為にとどまると言えよう。(※あえて該当するとすれば,前述の「映画の上映」という「利用」。)
2010-11-16 16:23:57#magicom 特定信号の検知により何らかの動作を可能にし,あるいは制限する仕組みが広く「技術的制限手段」に含まれるとすれば,それは著作権法の本来の目的とするところを大きく踏み越えてしまうことになろう。
2010-11-16 16:25:18