- hakumu0906
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(これまでのあらすじ:ハイスクール生徒ギンイチはある日、ゲイシャパンクス少女に助けられる。紆余曲折あり、彼女と共にパンクス達の集うバー、「ヨタモノ」へ行く約束をすることとなったが……?)
2014-03-09 19:42:23ギンイチは、ゲイシャパンク少女、イチジクとの初めてのデートを心待ちにしていた。いや、焦りすぎはよくない、かの消しゴム事件で学んだはずだ、短気は損気、古事記にもそう書いてあった気がする 1
2014-03-09 19:46:05そう、これはデートではなく、ただ出かけるだけなのだ。そもそも自分は「ヨタモノ」がどういう場所なのかもよく知らないではないか、デートはやはり自分がエスコートを、いや、だから焦りすぎるな……ブッダ!彼は緊張のあまり待ち合わせ場所に早く来すぎて余計な事ばかり考えてしまっているのだ! 2
2014-03-09 19:47:58その時だ、ギンイチにひとりのヨウジョが近付いてくる、髪は長くぼさぼさで、たくさんのポケットのついたぶかぶかのコートを着ている。「アー……」「……?」ギンイチは訝しんだ。このような場所に、ヨウジョが? 3
2014-03-09 19:51:46「アー……私、迷ってしまいました……ここはどこでしょう……アー……お兄さん、わかりますか」ギンイチは、すぐには自分の事だとは思わなかった。しばらくした後、もう一度声を掛けられはじめて気がついた。「ど、どこ?どこって……」「アー……迷子……とても困ります……」 4
2014-03-09 19:54:00「迷子になった事が知れたら……私、怒られてしまいます……お尻を叩かれるかもしれません……アー、いい、たまらない……」ギンイチは直感した。このヨウジョは、何かが危険だ。もしや噂に名高い、ソウカイ・エレメンタリースクールの生徒かもしれない 5
2014-03-09 19:56:57関わらない方がいい。そうでなくとも今日はイチジクとデートなのだ。いや、デートというのはやはり少しまだ早いか……いや、それはともかく。この大事な日に、ソウカイ・エレメンタリースクールのヨウジョに絡まれるというトラブルがあってはいけないのだ。 6
2014-03-09 20:00:27ソウカイ・エレメンタリースクールのヨウジョは、問題児ばかりであり、また非常に強い。その力は大人を軽く凌駕し、一般人の3倍の速度で走るようなヨウジョがごろごろしているのだ。分校のアマクダリ・エレメンタリースクールやザイバツ女学院などに並ぶ恐るべき学校なのだ 7
2014-03-09 20:03:11「あ、あ……困りました……私、一人では帰れないかもしれません……おなかもすきました……このままでは飢え死に……あーいい……それもまたたまらない……」ヨウジョがよだれをたらしながらねくねと動く。仮にソウカイ・エレメンタリースクールの生徒でなかったとしても危険すぎる 8
2014-03-09 20:07:34「あー……助けてもらえませんか……私、どうすればいいか……」しかし、おお、ナムアミダブツ!ギンイチは聞いてしまったのだ、その言葉を。このマッポーの世で助けを求めるヨウジョの声を無視した事が広まれば最悪ムラハチである、なんとしてもそれは避けねばならなかった。 8
2014-03-09 20:11:26ギンイチは思案した。まずはこのヨウジョにはダガー・カシ(駄菓子の事と思われる)を与える、その後はマッポに引き取ってもらおう。そして速やかにこの待ち合わせの場所に戻る。時間にはまだまだ余裕がある。十分に間に合うはずだ。 9
2014-03-09 20:15:23「わかった、なんとかするよ、まずはあの店でダガー・カシを買おう」「ああー……助かります……私、アゴニィと申します……名札、出しましょうか」「いや、いいよ」本当にソウカイの小学生だったらと思うと、恐怖でしかない。ギンイチはその申し出を断った。 10
2014-03-09 20:19:18やるとなれば急がねばならない。待ち合わせの事もあるが、このマッポーの世には恐ろしい要素が多すぎる。具体的にはショウジョ・ウチコワシやアリス天狗等だ。可能性は低いものの彼らに見つかるような事があればこのろくでもない自体がさらにろくでもないこととなるだろう。 11
2014-03-09 20:24:54「アアー……ええと、私、おまんじゅうが欲しいです……」「わかった」ギンイチは手早くおまんじゅうを買うとアゴニィに差し出した。「ああー……おまんじゅう……はるかにいいです……」こうしてみればやはり普通のヨウジョである、ソウカイといえども恐れる事はなかったか。しかしその時だ 12
2014-03-09 20:29:38「あー……おまんじゅう、私、もっと楽しみたいです……!」アゴニィはぼさぼさの髪を振り乱すと大量のポケットから大量のタタミ針を取り出し、それをおまんじゅうに突き刺し始めたのだ!「アイエエエエ!?」その異様な光景にギンイチは思わず叫ぶ! 13
2014-03-09 20:33:29「お、おぶじぇ!」アゴニィは恍惚とした表情で叫ぶ!おまんじゅうはまるでハリネズミかイガグリのようだ!「な、な、なにを……」「ああー!」アゴニィはひとしきり針を突き刺し終えると針を引き抜き全て几帳面にしまった後、おまんじゅうを一飲みにした 14
2014-03-09 20:37:45何かとんでもないものを見たような気がした。まるで全てが夢のようであった。「い、一体何を……」「ああー!これをすると、とても、気持ちいいんです!わかってください!」アゴニィはよだれを垂らし、息を乱しながら顔を紅潮させる! 15
2014-03-09 20:43:08その叫び声に周りの人間たちが一斉にこちら見る!これではギンイチがこの台詞を言わせているようではないか!「アイエッ、こ、これは違うんです」「あー!いいー!」ギンイチはすぐさまアゴニィを連れてその場を逃げ出した。これでは本当にやましいことがあるようではないか!ギンイチは後悔した 16
2014-03-09 20:49:23もう十分だろう。彼女をマッポに連れていこう。そしてヨタモノで全てを忘れよう。そんな事を考えながら、ギンイチは違和感を感じ、一度振り返る。アゴニィがいない。少し探すと、公園にアゴニィを見つけた。目の前には野良犬、そして手に持つタタミ針!ギンイチは慌てた。まさか。いやまさか。 17
2014-03-09 20:58:32「お、オブジェ!」「待っ……!」アゴニィは、ポケットからフェルト布を取りだすとタタミ針で素早く犬のカワイイオブジェを作り出す!ワザマエ!「……あー……お兄さん、すみません、カワイイ犬を見つけた物でつい」ギンイチはへたりこんだ。 18
2014-03-09 21:04:05「あー、お兄さん……これ、私、あげます」アゴニィは犬のオブジェをギンイチに手渡す。「え……」ギンイチは驚きながら犬を受け取る。「あー……おまんじゅうと、助けてくれたお礼です……あ、名前いりますか」「い、いや、いらないよ」 19
2014-03-09 21:10:16ギンイチはこの子を厄介者だと思っていたことを、少し後悔した。マッポに引き渡すより、真剣に行きたい場所を探してあげようか……しかし「ああ……時間が」あれほど余裕のあったはずの時間が、もうすぐ近くまで来ていたのだ。 20
2014-03-09 21:15:02