アニメーションにおけるタイミング論

@toshiharumurata=村田峻治氏さんによる、2Dアニメーションのタイミング論です。例として走りのアニメーションを題材に、描くべき絵の決め方などツイートされていましたので、まとめました。 以下の記事も合わせてご覧ください。 アニメーション作画における芝居・理論・技術について http://togetter.com/li/69137 続きを読む
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村田峻治 @toshiharumurata

ちょっと今日はタイミングに関する総論を書いてみよう。アニメーションの場合、1秒で24コマ(フレーム)使える訳ですが、日本のアニメーションの場合はその成り立ちからフルアニメーションではなく、今では3コマ主体(劇場等は2コマも有る)のリミテッドアニメーションです。

2010-11-16 23:50:04
村田峻治 @toshiharumurata

そこで問題になるのはどのような絵を入れて如何に動かすかになる訳です。先日走りに空中ポーズを入れたら最低中3枚必用になってしまうという話がありましたが、正にそこがポイントなのです。実際には1秒で24枚使える訳ですが、それを3コマにした場合8枚しか使えません。

2010-11-16 23:54:15
村田峻治 @toshiharumurata

北久保さんがおっしゃってましたが、走りは空中ポーズを描く必用は必ずしもないのです。問題はその様に見えれば良いわけです。アニメーションというのは残像を利用した錯角で動いた様に見せる表現なのです。走りの場合で説明していきましょう。

2010-11-16 23:59:17
村田峻治 @toshiharumurata

理論上歩きと走りの違いは常に片足が地面に接しているかどうかです(競歩のルールにもなっています。)ここで囚われがちになるのが、どの様なポーズを描くとそれらしいのかという事。これは宮崎駿さんに聞いた事ですが(元は大塚康生さんから)3コマ、2コマで中二枚の走りを描く場合二枚の役割は

2010-11-17 00:03:17
村田峻治 @toshiharumurata

原画の絵が着地、次が動きを溜める沈み込み、その次が次の着地点へのジャンプのための蹴りだし(伸びきり) になります。が、実際には時間の連続性がある訳で、全てのポーズをバラバラに考えてはいけないのです。2コマの場合それぞれの絵の間に1枚ずつオミットされた瞬間が存在する訳です。

2010-11-17 00:07:04
村田峻治 @toshiharumurata

そこで問題になるのはフルアニメだと6枚必要な走りを如何に3枚で表現するか、実は思っている以上にこの3枚に持たせる意味合いは大きいのです。まず原画でよく描かれるポーズですが一番気をつけなくてはならないのが蹴り足、この蹴り足の描き方次第で描いていない空中ポーズの存在を感じさせるのです

2010-11-17 00:12:51
村田峻治 @toshiharumurata

沈み込みの絵も勿論前の原画の絵からの繋がりでただ沈むのではなく慣性の法則で前に進む様に見せなければならず、足の描き方もそこで大きく変わるのです。次の蹴り出しの絵も如何に前の沈み込みの絵から次の着地点までジャンプするための力の放出を感じさせねばなりません。

2010-11-17 00:18:02
村田峻治 @toshiharumurata

以上の説明で分かってくる事は中二枚で描かれる走りの絵それぞれには実際には描かれない、つまりシートでは空白になる失われた時間の絵の役割を前後関係を考えながら持たせなければならないと言う事です。ポーズ単体単体で考えてしまうと、この様には描けません。

2010-11-17 00:22:45
村田峻治 @toshiharumurata

要するにリミテッドアニメーションで一番重要なのは描かれない失われた空白の時間を如何に錯覚を利用して見せるかなのです。走りや歩きもそうですが、皆陥りやすいのが直線的な動線になりがちという事。人間の構造は全て関節を動かす事による訳で、走りも手や足、背骨等の関節を支点にした円運動です。

2010-11-17 00:26:41
村田峻治 @toshiharumurata

描かれない、瞬間を感じさせるにはその複雑な円運動を複合させねばならないのです。ただ、これは機会的に走りを描く場合の話だけで、実際に芝居としての走りを 描く場合にはもっと複合的な要素をプラスしなければなりません。上下動の加減、腕の振り、頭の角度や表情、髪の毛や服のバタつき。

2010-11-17 00:30:11
村田峻治 @toshiharumurata

アニメーションで走りという表現をするには実にこれだけの要素を満たさなければならないのです。勿論走りだけではなく、全ての動きに言える事です。オール1コマでもない限り(この場合も描かれない瞬間はあるわけです)シート上で空白になる時間を如何に補完して描くかがキーなのです。

2010-11-17 00:33:20
村田峻治 @toshiharumurata

これを理解出来ないと、金田さんや亜細亜堂の小林治さん等が使う高等テクニックのコマ落とし等は出来ません。アニメーションは実際に存在しないものをさも、ある様に見せる表現なので、いかに描かない部分をお客さんに想像させるかが鍵なのです。これは演出の場合にも言えます。

2010-11-17 00:36:39
村田峻治 @toshiharumurata

如何に見せない事が重要になります。全てを見せようとすると、情報量では圧倒的に多い実写には適いません。見えない物を見えるように見せる。これがアニメーションの表現としての醍醐味だと思います。

2010-11-17 00:38:40
平松禎史 @Hiramatz

@toshiharumurata 走りに使う3つポーズ。「着地、沈み込み、突っ張り」(言い方はいろいろ)ですが、突き出して着地した足が次の絵で曲り後方へ蹴り出すの一連を表してます。固定観念として良くないと思うのは沈み込みで体全体も沈ませて、突っ張りで全体を浮かせるやり方です。

2010-11-17 17:16:31
平松禎史 @Hiramatz

@toshiharumurata 頭の当たりにジグザグの印を書いてその体全体の動きを指示した原画があります。上下動ですね。走りの速度などケースによりますが、速度が速く勢いのある時程上下動は減ります。動物の走りの頭がピタッと動かないことからも明らかですが、ブレるとうまく走れない。

2010-11-17 17:20:11
平松禎史 @Hiramatz

@toshiharumurata 歩きもそうですが、運動が記号になって必要な絵と上下動が決まってるかの誤解が蔓延してたように思います。基本的には村田さんのご指摘の通りです。加えて、走りも気持ちなどを表現する演技の一つと理解して、もっと自由に描かれれば良いと思います。

2010-11-17 17:24:18
村田峻治 @toshiharumurata

@Hiramatz その通りですね。上下動が付く走りは宮崎駿さんが言っている通り陸上競技(運動会)での走りですよね。昔の時代劇なんか観るとむしろ上下動があまりない。特殊部隊等もターゲットを見失う確率が上がるので上下動は抑え目ですね。上下動が付くという固定観念は捨てて欲しいです。

2010-11-17 18:34:34
村田峻治 @toshiharumurata

@Hiramatz 走りという行為自体が芝居なんだと解釈して欲しいですよね。歩きでは間に合わない等の理由で気が急いて走り出す訳ですから、感情的にもエキセントリックな状態なんですよね。だからつまづいたりもするだろうし息を切らせるだろうしそういう事が有って走りという芝居が成立すると。

2010-11-17 18:40:01
平松禎史 @Hiramatz

@toshiharumurata あと子供の動きですね。楽しいけどヤツらは止まらないから大変w 小学校3、4年くらいまでの子はまず走りますよね。まっすぐ立たないし親が手をつないでてもグニャグニャ動き続けます。理由はないんでしょうが子供らしさの表現として重要で、走り方も独特ですね。

2010-11-17 19:16:08
村田峻治 @toshiharumurata

@Hiramatz 子供を子供らしく動かすにはかなりの観察力とテクニックが要求されますね。走りも歩きも独特だし、表情一つとっても大人とは違う生き生きとした表現が必要ですね。イラストでもそうですが、難しいんだけど楽しいんですよね、子供を描くのは。

2010-11-17 19:21:26