艦これ二次創作SS。
胡散臭い女提督と脛に傷持つ艦娘たちの狂った御伽噺なり。
一部性的表現並びに残虐的表現を含むため未成年の閲覧を禁ず。
長編。荒神下ろし
#rsbs日誌 午後。暖かい麦茶を啜りつつ執務に耽る。執務補佐に霞を起き、淡々と作業をこなしていた。「ほんと、司令官って真面目よね」書類業務は真面目にやらんとトチるでな。真面目にやっておってもたまに書き損じが出るがの…「呆けてるんじゃないわよ全く」
2014-04-10 18:12:41#rsbs日誌 霞は昼の便で届いた大量の手紙や封筒、メールを仕分けておった。海軍からの。友人からの。懇意にしている商人、バイヤー、職人など。そしてスタッフや艦娘宛の物など、数百に渡る。霞はただ黙々と仕分けておった。
2014-04-10 18:15:29#rsbs日誌 大別して、提督宛の物であるか否か。そして重要なものか不要な広告レターであるか否か。明らかに下らない安売りの広告レターも多く混ざっており、霞は独り心の中でやれやれと思った。こんな孤島によく送り付けるなと
2014-04-10 18:18:22#rsbs日誌 そうして仕分け終えた手紙を霞は執務机の上に置いた。「はい、提督の分よ」うむ、お疲れじゃ霞よ。 ……作業の手を終えて提督は暫く手紙を読んでいたわ。わたしは残りの他の手紙の分別処理。すると不意に音がしたわ。提督が立ち上がったの。椅子の音ね。
2014-04-10 18:22:24#rsbs日誌 「どうしたのよいきなり」「すまん、話しは後じゃ。霞、現時刻をもって執務補佐の業務を解除。吹雪型駆逐艦一番艦吹雪に執務補佐に就くよう伝令を伝える事を命ずる。」「どうしたってのよ、本当」「ちと仕事が入った。急ぎのな」
2014-04-10 18:25:50#rsbs日誌 「…あらそう。精々トチらないようにしなさい…霞、退室します」「うむ」内線電話に手を伸ばす提督を一別して霞は執務室を後にした。「…ふぅ、嫌いじゃないのに…残念じゃないの」ぽつりと、呟いた
2014-04-10 18:28:03#rsbs日誌 「中央放送室かや。すぐ艦娘を呼んでくれ。それと工廠に…」執務室は慌ただしく、そして鎮守府も慌ただしくなった。
2014-04-10 18:35:01#rsbs日誌 騒がしくなる工廠脇の格納庫。そこには幾つかの航空機が格納されているが、今最大級の航空機が引き出された。「なにあれ!」「あれは…ボーイング?」「いや、違うよ」ぽそりと様子を伺っていた響が呟いた。「あれはボーイングスキーだ」
2014-04-10 18:50:33#rsbs日誌 「ボーイングスキー?」「なんなの?それ」「ソビエトがリバースエンジニアリングして作ったBー29のデッドコピーさ。随分とマニアックな物を使うんだね、提督は…」
2014-04-10 18:52:25#rsbs日誌 4000馬力級のターボプロップエンジンが爆音を奏で、二重反転プロペラが空気を震わせる。ブレーキが耐えるギリギリ一杯まで出力を高めてから、ボーイングスキーは滑走路を駆け抜け、飛んでいった。
2014-04-10 18:58:05#rsbs日誌 「所で提督は何処に行ったんだい?」「電は知らないのです」「吹雪が言ってたわ!えっと…あ…あ…アルソック体操とか言う国よ!」響は姉妹の言葉に眉を潜め、暫し悩んだ。「……ああ。アルストツカか」「知っているの?」
2014-04-10 19:26:29#rsbs日誌 「まぁね…共産主義国家さ。同じ響の同型が世話になっている…」「ふーん…どんな国なの?」雷が無邪気に問いかけた。「…まぁ、ぼちぼち平和な国さ…時々物騒だったり不正もあるけど」…響は悩んだ。遠いアルストツカに提督は何のようなのだろう、と
2014-04-10 20:11:16#rsbs日誌 「さあ、そろそろ食事の時間だ、今夜の夜間哨戒は私達だよ」「そうね、ご飯食べなきゃね!」遠く僅かにターボプロップの甲高い音を聞きながら響は祈る。『御無事を、司令官』
2014-04-10 20:13:18#rsbs日誌 Next!Papers, please!…Next!Papers, please!……繰り返される言葉。ここは共産主義国家、アルストツカ。そしてその東グレスティンの国境である。西グレスティンと東グレスティンを繋ぐアルストツカ唯一の入国監理局がある。
2014-04-10 21:22:22#rsbs日誌 立ち並ぶ人、人、人…空は寒々とした鈍い曇天。そして吹き付ける風。人々は厚く服を着込み、そしてコートの前をキツく閉じた。Next!Papers, please!…DENIRO!また独りの入国希望者が、書類不備か何かで振るい落とされた。Next!…
2014-04-10 21:36:04#rsbs日誌 Next!Papers, please!…Next!Papers, please!…此処、アルストツカの入国審査は厳しい。流行病のワクチン接種証明書や各種の許可証。自国民であってもIDカードなどが必要とされてしまう…不意にアラートが鳴り響いた。
2014-04-10 21:38:19#rsbs日誌 すぐ隣の詰所から警備員が現れ、国境を違法に通過しようとしたか、ないしは密輸を行おうとした人物を連行していく。審査官にとっては最早日常茶飯事の光景であった…
2014-04-10 21:43:25#rsbs日誌 Next!Papers, please!…審査官が何時ものように事務的に答え、通行人の顔を見るべく視線を上げた時だった…そこには、少女が立っていた。だが、少女と呼ぶには余りにも漂う雰囲気が老獪としていた。
2014-04-10 21:45:43#rsbs日誌 髪色も眼の色も、肌の色も何もかもが祖国アルストツカの周辺国では見慣れない物だった。高級インクの様な清んだ黒髪。ルビーよりもなお赤い燃えるような赤い瞳、そして高級菓子の白砂糖の様な白い肌。不気味なまでに美しかった。
2014-04-10 21:48:37#rsbs日誌 「入国目的は?」『来訪じゃよ。友人を訪ねにな』酷く古くさい言葉遣いをする。今時老婆や老爺でさえ中々話さない口調だ。審査官の中で不信感が山のように募る。「滞在期間は?」『二週間くらいじゃよ』
2014-04-10 21:54:24#rsbs日誌 パスポートの国籍は…ヤパン。遠い遠い東洋の国だ。有効期限もしっかりある。入国許可証もアルストツカが発行した確かなものだ。各種の流行病のワクチンの接種証明書も問題はない。しかし妙に解せない。
2014-04-10 21:57:31#rsbs日誌 「無作為検査を行わせて貰います」審査官は淡々と検査カメラのスイッチを入れた。受付のシャッターも落ちる。『ぉー、これかや。よっこらせ』少女は大人しく指示に従い写真を撮られた。直ぐ様現像されたX線写真を見るも、何も不振な点はない。
2014-04-10 22:02:05#rsbs日誌 無駄に艶かしく妖艶な裸体が其処には写っており、武器や薬物の詰まった袋。自爆テロの為の爆薬と言ったものは見受けられなかった。不気味なまでに彼女はクリーンで、故に不気味だった。
2014-04-10 22:03:52#rsbs日誌 何の不正も不備もない書類に何の違法な持ち込みもない。審査官は疲れた溜め息を溢しながら緑色の許可を示す判子をパスポートに押した。APPROVED!「問題を起こさないように」せめてもとばかりに彼は嫌みを込めて呟く。
2014-04-10 22:06:24