当委員会が語る、兵器と徴兵制と国民国家

ハイテク兵器と徴兵制(国民皆兵)の関係について中世ぐらいからざっくり話すつもりが思った以上に長文になったでござる。
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Togetter(トゥギャッター) @togetter_jp

いまネットで人気のまとめはこちらです。「「『徴兵制はあり得ない』は現実を見ていない」というのこそ現実を見ていない」 togetter.com/li/697388

2014-07-25 20:54:02
六祖 @6_so_e_no

このやり取りのどちらが正しいかどうかよりこのやり取り自体が、青山氏の「ハイテク化しているから徴兵制などあり得ない」を否定する格好になってるよね。 日本での徴兵制の有無をどちらか賭けろって話はどうでもよくてね、凄く気になるのは「ハイテク化することと、徴兵制は関係あるの?」なんだ。

2014-07-25 20:59:00
六祖 @6_so_e_no

何故、国民皆兵制ができたのか?というシンプルな疑問ですね。

2014-07-25 22:11:09
扶桑委員会 @fussoo_moe

少しこのあたりを話してみたくなったので連ついしてみる。なお特に資料引っ張ってきて論じるわけじゃないので間違ってる可能性も大いにある。

2014-07-25 22:19:51
扶桑委員会 @fussoo_moe

国民皆兵制が進んだのはナポレオン戦争前後からだ。じゃあその前はというと騎士、傭兵の時代だ。高価な鎧に身を固めた貴族の突撃が戦場の花形であり生半可な武器では阻止できなかった。

2014-07-25 22:21:27
扶桑委員会 @fussoo_moe

だが、鉄砲の発明で変化が生じる。これまで騎士を倒すにはものすごく苦労した(矢は通らずかき集めた意識低い兵士じゃ槍衾を維持できず崩されるし騎士が纏う鎧を撃ち抜くクロスボウは構造が複雑で連射ができない)が、鉄砲はぶち抜ける上に簡単な訓練で発射できた。

2014-07-25 22:26:01
扶桑委員会 @fussoo_moe

数々の戦いで王権がまとまり官僚制が整備され徴税能力が飛躍的に増大し、それにより王権がさらに強化されていく過程で王が直接軍隊を抱えられるようになっていくのもこの頃だ。

2014-07-25 22:28:40
扶桑委員会 @fussoo_moe

官僚が整備されることで領地の住民を的確に把握できるようになり、徴税能力が強化されるとともに農民を兵士として徴発しやすくなり、これまでと比較すると多くの軍隊を動員できるようになった。だが、これだけでは精強な軍隊を作れなかった。兵士に目的意識がなかったのだ。

2014-07-25 22:30:02
扶桑委員会 @fussoo_moe

兵士からすればおらが村から役人に掠われるも同然につれてかれて軍事訓練させられ行軍し、敵と戦うとかやってられない。そのため彼らが逃げ出さないように厳しい軍紀が作られるがそれでも逃げた。ただ単に鉄砲ができて簡単な訓練で兵士が作れるようになっても徴兵制はうまく機能しなかった。

2014-07-25 22:32:12
扶桑委員会 @fussoo_moe

これを決定的に変革するのがフランス革命だ。フランス革命は王が民衆に打倒され殺されたという、当時としてはかなりショッキングな事件だった(フランス革命には当時流行した啓蒙思想が強く関係しているが割愛)。

2014-07-25 22:34:16
扶桑委員会 @fussoo_moe

権力者だった各国の王は自分らも同じ目に遭っちゃたまらないとフランスをよってたかってボコボコにするのだが、それによりフランスに住んでる人は連帯意識を強めた。国民の誕生である。

2014-07-25 22:34:23
扶桑委員会 @fussoo_moe

民衆は王権を打倒し成立したフランスを我らの国と意識し侵略者をはねのけるため命を賭して戦った。高い士気は少数(小隊単位の60人くらい。当時は大隊である800人くらいでまとめて運用するのがふつうだった。細かくすると逃げちゃうから)による戦術を可能にしたし、軍隊はねばり強くなった。

2014-07-25 22:38:02
扶桑委員会 @fussoo_moe

その後各国は国民意識の醸成に努めることになる。日本も明治維新後義務教育を行い、そこで国民意識を醸成し、高い士気を持つ国民軍を作り出すことに成功した。

2014-07-25 22:40:28
扶桑委員会 @fussoo_moe

第一次世界大戦はそういう国民国家の集大成とも言える一大事業となった。数千万の若者が祖国のためと武器を取り、戦い、死んでいった。それまでの国家間戦争ではせいぜいナポレオンがロシア遠征に動員した50万人がせいぜいだったことを考えると、恐ろしいまでに大規模になっていることがわかるだろう

2014-07-25 22:42:24
扶桑委員会 @fussoo_moe

以上を見ると、国民皆兵制のためには二つの条件を満たすことが望ましいことが分かる。ひとつは簡単な操作で強い威力を持つ兵器の存在、そして高い国民意識だ。

2014-07-25 22:44:07
扶桑委員会 @fussoo_moe

では兵器はどうか。現代の兵器はハイテクだから徴兵制に向いていない、といわれるのはただしい面もあるが正確ではない。よりきちんというならば「現代兵器はハイテク化が進んでいて操作が難しいから徴兵制には向いていない」なのだ。

2014-07-25 22:47:55
扶桑委員会 @fussoo_moe

中世では例えばイングランドのロングボウ兵は親指が反り返って変形するほどロングボウに習熟していたという。また、弓道や剣道で強い人弱い人の差が大きく、また強くなるにはかなりの年数が必要であることも想像しやすいだろう。現代兵器も同じなのだ。機能が高度化して操作に習熟が必要なのだ。

2014-07-25 22:49:31
扶桑委員会 @fussoo_moe

ハイテク化したなら操作が簡単になるのでは?というのがイメージなためにこのあたりで混乱があるのではないかなと思う。だがハイテクの固まりであるパソコンを見れば分かるように、使いこなせる人と使いこなせない人の実力の差は歴然としている。兵器もそんなようなものだ。

2014-07-25 22:51:02
扶桑委員会 @fussoo_moe

だから、将来さらに技術が進んで兵器がすごく簡単に使えるようになれば、徴兵制が復活する可能性は大いにある。銃によってパラダイムシフトが起きたように、将来そのような転換がないということはとうてい言えない。

2014-07-25 22:52:13
扶桑委員会 @fussoo_moe

ただし、将来そのようなことになったとき「やだよ国を守るために戦うなんて、やりたいやつにやらせろよ」という人ばっかりで徴兵で集めても士気が低くほっといたら逃げ出すような国民意識なら、徴兵制が機能するかどうかかなり怪しい。

2014-07-25 22:56:21
扶桑委員会 @fussoo_moe

いくら兵器が高性能でも使う人にやる気がないなら意味がない。先に挙げた中世における騎士の突撃だが、きちんと槍衾をくんで隊列を維持できれば正面からなら撃退できるのだが、500キロの数百数千の馬上騎士が群れをなして時速30キロで突っ込んでくる恐怖に耐えられずに逃げて崩れてしまう

2014-07-25 23:01:16
扶桑委員会 @fussoo_moe

スイス傭兵が勇名を馳せたのも、同郷意識が強いことから士気が高く、騎馬突撃に対して槍衾をくんでしっかりとこらえることができたからだ。いくら兵器が進化しても使う人が恐怖で逃げ出すなら意味がない。

2014-07-25 23:02:55
扶桑委員会 @fussoo_moe

要は将来的に何らかの技術革新で簡単に使えてすごい兵器が現れたとしても、高い士気をもたらす国民意識がなければ徴兵制はあまり意味がありませんよ、と。逆に言うと、高い威力の簡単に使える兵器と国民に戦う意志があれば徴兵制は復活するとも言える。

2014-07-25 23:04:56
扶桑委員会 @fussoo_moe

まぁこのあたりで内戦ガンガンやってるアフリカとかの例が出てくると徴兵制とはまた違う世界があるのでの……

2014-07-25 23:06:37
扶桑委員会 @fussoo_moe

鉱山とか巡って死闘を繰り広げるアフリカとかは、近代国家の文脈で語るとわけわからんことになる。中世とかの官僚制が弱く王権が貧弱な頃のほうが近い。

2014-07-25 23:11:08