『昭和陸軍全史 1 満州事変』から始まった軍部の話

永田鉄山ら一夕会の幕僚たちは一次大戦から学習したからこそ暴走を起こしたのではないかという話とか、永田鉄山による日本人の国民性の評価とか。
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司史生@減量中 @tsukasafumio

川田稔『昭和陸軍全史 1 満州事変』(講談社現代新書)読み始める。本書の指摘で印象的なのは、満州事変が世界恐慌以前から計画されていたということ。つまり事変による国内危機の打開は後付けでしかなく、総力戦のための戦略資源確保という純軍事的理由が本質だったということ。

2014-07-28 00:19:49
司史生@減量中 @tsukasafumio

永田鉄山ら一夕会の幕僚たちは次の世界大戦を不可避と考え、総力戦のため満州と北支の戦略資源の確保を必須と考えて、そのために事変を起こした。日本軍は一次大戦から学ばなかったのではなく、学習したからこそ暴走を起こした。

2014-07-28 00:26:09
司史生@減量中 @tsukasafumio

幕僚たちがなぜ執拗に宇垣一成を忌避したのかもその線から理解できる。宇垣も総力戦を認識し軍の近代化を進めたが、宇垣は日本が単独で総力戦を担えると考えず、ワシントン体制を維持して英米と提携することで戦略資源を確保する方針だった。

2014-07-28 00:30:27
Baatarism/ちゃんぷるー @baatarism

@tsukasafumio 結局、 日本単独でいくら頑張っても総力戦は担えなかったから、宇垣の方が正しかったことになりますね。

2014-07-28 08:01:07
司史生@減量中 @tsukasafumio

川田先生の著述の内容がどれだけ定説として研究者が需要しているのか私は知らないのだが、この説明については納得する。ひとくちに日本の大陸侵略というが、当時の軍部がなぜそこまでしたのか、単なる満蒙特殊権益の維持では明確な理路が見えてこないからだ。

2014-07-28 00:39:45
司史生@減量中 @tsukasafumio

しかし未来に起きるべき戦争に勝利する勝つために、際限の無い戦争を引き起こして滅びてしまうってのは、まるきり谷甲州の航空宇宙軍だよなあ。

2014-07-28 01:14:16
司史生@減量中 @tsukasafumio

本書に出てきた永田鉄山の日本人の国民性の評価。「また家族制度の下に養育された自然の結果であろうが、依頼心強く自治自律の念に乏しいように思われる。おまけに外的律法の下に制縛的に訓養されているため、自覚に欠け責任感が十分ではない点があるように思われる」

2014-07-28 01:25:56
司史生@減量中 @tsukasafumio

永田は日本の国民性を、粘り強さに欠け、権威に盲従し自律的な判断力に乏しいと見て、このままでは大戦後の柔軟な戦闘群戦法に適応できないと危惧していた。陸軍が教育とかに手を突っ込みはじめた理由の一端である。

2014-07-28 01:31:28
司史生@減量中 @tsukasafumio

現代の私が見ると永田の評価にはびっくりさせられる。太平洋戦争で日本兵の示した粘り強さ、指揮中枢が壊滅しても個々の兵士が自己の判断で死ぬまで戦い続けた自律性の高さは、一種異常だと思うからだ。

2014-07-28 01:35:23
司史生@減量中 @tsukasafumio

しかし権利より義務を唱える、徴兵制で鍛えなおせ系の反動派の主張って、永田鉄山の逆ですよね。永田的には、そうした主張から生み出されるのは第一次世界大戦以前の兵士であって、軍事的にはまる100年退行することになる。

2014-07-28 01:40:06
司史生@減量中 @tsukasafumio

昨日の永田鉄山の日本人観の捕捉だけど、永田は大戦後の戦闘群戦法に必要なのは、自立した個人の主体的な責任感と判断力だと考え、そこに欧米の精神的優越を見ていたという。永田の目指した総力戦国家の国民は、そういう西欧的な自立した個人であることが望ましかった。

2014-07-29 01:27:20
司史生@減量中 @tsukasafumio

川田稔先生も指摘しているが、総力戦が必要とした兵士=国民が、没個性的で権威権力に盲従する人間でなかったところに、この時代の全体主義の複雑さがある。『言論統制』の鈴木庫三少佐も、そうした総力戦国家の複雑な教育観を象徴する軍人だった。

2014-07-29 01:32:35
司史生@減量中 @tsukasafumio

実際には太平洋戦争における日本陸軍のアビリティは、良くも悪くも山本七平の言う「空気」による集団主義で、永田鉄山の目指したような個人主義的な兵士が養成されたわけではなかった。だが、そうした「空気」に支配された集団主義が戦闘群戦法を使いこなしてしまったのも皮肉な事実ではある。

2014-07-29 01:37:32
司史生@減量中 @tsukasafumio

たぶん永田鉄山は山本七平の指摘した「空気」、専制的権威主義体系と西欧的個人主義の中間に存在する東洋的集団主義について認識してはいなかったのではないか。永田は傑出した軍政家だったが、彼もまた高級幕僚という組織集団の「空気」に支配から自由ではなかったように思われる。

2014-07-29 01:42:52