健康の確率的影響の悩み

大井 玄 さんの本が、ちょっと面白かったので紹介します。
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Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

大井 玄『人間の往生』(新潮新書、2011年)に、食道がんの専門家、F・インゲルフィンガー(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌編集長)さんが食道がんになったときのエピソードが紹介されている。(P.33-34) (続く

2014-08-01 19:05:27
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続き) 「しかし、世界でもっとも豊富に情報を持つこの専門家は、治療法選択に迷いノイローゼになりかかったのです。そもそも医療情報は確率的値として表現されており、その個別・固有の例に当てはまるものではない。」 (続く

2014-08-01 19:09:42
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続き) 「ふつうの人は、病気についての知識があると、治療法も最善のものを選ぶことが可能だと考えるが、治療成績はすべて確率で表される。治る確率が70パーセントといっても、自分が残りの30パーセントに入らない保証はありません。」(P.67) (続く

2014-08-01 19:13:33
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続き) 「どちらかを選択するときには、かならずそれを信ずる、あるいは身を委ねるという心理作用を伴う。だから、治らなければならないという執着が強ければ強いほど、正解のない問題に悩むという悪循環に陥る。」 (続く

2014-08-01 19:19:53
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続き) 「彼は専門的知識を駆使して考えたが、自分にとって、どの治療法が最良か判りませんでした。」(P.67) この悩みは、まさに、低線量被曝の確率的影響を心配する人たちの悩みと同種のものではないだろうか?知識をいくら増やしても、それで正解を得られるわけではない。 (続く

2014-08-01 19:22:33
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続き) インゲルフィンガーの悩みは結局、このようにして解決される。 「はっと気づいた。そうだ主治医を信ずることが必要なのだ、と。それから彼は自分の病気について考えるのを止め、編集長の業務に専心します。」 (続く

2014-08-01 19:26:11
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続き) 「彼の結論は、専門知識があれば最良の選択ができると思うのは「傲慢」だ、というものでした。」 こうしてインゲルフィンガーは、主治医を信頼することによって、ノイローゼから脱出した。 (続く

2014-08-01 19:28:22
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続き) 低線量被曝の影響に悩む人で、さらに専門家に不信感を持ってしまった人の場合、「確率的影響」の悩みに出口はあるのだろうか? いくら知識を増やしても、悩みが解決しないとしたら? 信頼できる人は、どうやって見つけられるのか? とても難しい問題のように思われる。

2014-08-01 19:31:49
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補足) このエピソードは、大井 玄 さんの新刊 『病から詩がうまれる 看取り医がみた幸せと悲哀』(朝日選書) でもちょっと紹介されている。本としてはこちらのほうが名著だと思う。

2014-08-01 21:33:34