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くみかおるの冒険 @ElementaryGard
1963年つまり今から半世紀+1年前、天才まんが家・手塚治虫がテレビアニメ『鉄腕アトム』をなんと原作者自らの手で制作。無謀の極み。何度でも繰り返すよこの話題。で、もし『アトム』を始めていなかったら、日本の商業アニメはどうなっていたのでしょう?これは究極の問いでもあります。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
結論を先に言うと、おそらくアメリカのテレビアニメの下請けとして、日本のテレビアニメは始まっていたのではないか、と想像します。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
企画も脚本も絵コンテも向こうで用意され、日本では作画、彩色などの実作業を請け負う。絵師に徹するわけです。その番組が日本で放映されるかどうかはわからない。ただドルが稼げる。1ドル360円の時代ですからね、これはとってもおいしい商売です。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
TCJあたりが下請け第一号になってたんじゃないかと思います。『鉄人28号』『エイトマン』で『アトム』の後を追った会社ですが、ここはもともとCM制作会社。そのなかにCMアニメ部があって、それを急きょ拡張して『鉄人』『エイト』を制作。それぞれ電通とTBSからの命令でした。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
なぜ『アトム』に電通やTBSが刺激されたのかというと、ドルです。「アトムは一本一万ドルで輸出契約を結んだ」というニュースが独り歩きして、目の色が変わった。ちなみに東映もこのニュースに目の色が変わり、東映動画の資本金をわずか一か月で16倍に増資。16倍ですよ16倍。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
『アトム』のアメリカ輸出の成功は、さまざまな偶然の重なりからでしたが、それぞれが時代の子でもありました。日本テレビの設立がCIAのアジア戦略の延長にあってオーナー正力松太郎がCIAと通じていた話は有名ですが、あれに連なる力学が働いていました。結果としてですけど。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
その話はここではしません。とにかく『アトム』のドル稼ぎは刺激的だった。言い換えればアトム輸出がなければ、テレビアニメでドルを稼ごうとは誰も野心を燃やさなかったわけです。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
ハリウッドのテレビアニメスタジオから日本のTCJかどこかに下請けの企画打診がありえたんじゃないかなーと想像します。想像ですよ想像。ハリウッドはすでに海外に下請けをいろいろやっていました。メキシコ、東ヨーロッパ、オーストラリア。台湾や韓国もそうやってアニメ産業が誕生。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
ならば台湾、韓国の前に日本に目をつけるはずです。事実、50年代にそんな話があったとかなんとか。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
ではなぜ日本はハリウッドの下請けとしてアニメ産業が発達しなかったのかというと、自主企画にこだわったから。「こだわった」はおかしいかな。東映でいえば『白蛇伝』などの長編映画の企画は、要は黒澤の『羅生門』が切り開いた文芸時代劇の欧米輸出路線の延長にあった。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
『アトム』も日本の人気まんがが原作。つまり「作品」を志向した。一方で下請けは「仕事」なのです。絵師に徹するのだから。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
敗戦国・日本がどういうわけか映画では世界最先端の作品を生み出した。これは日本の撮影所システムが、監督に撮りたいものを撮らせるのを基本とする、後に黒澤をしてユートピアといわしめるものだったから。蓮見重彦がうまくまとめています。um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/199…
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
ですがアニメーション映画はそうではありません。監督が撮りたいものを撮らせることが、制作方式の関係でまず不可能だから。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
実写映画界がとにかく監督の撮りたいものを100%撮らせていたわけではむろんありません。欧米の映画祭で絶賛される作品の下には、そうではないプログラムピクチャーがどどーんとあったのだから。富士山の雪は山頂付近にあって、あとは黒い火山灰のすそ野がででーんと地平線いっぱいに広がるように。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
アニメーションで「作家」はありうるのか?
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
難しい問題なのでここでは踏み込まないでおきます。とにかく60年代の日本で「絵師」に徹してドルを稼ぐ発想は、『アトム』の成功によって種を摘まれてしまった、といえなくもないのではないかと思います。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
『アトム』に刺激されて作った『エイトマン』のアメリカ輸出がきっかけで「商品化権」が発見され、それがやがて特撮ものの企画につながった…これも過去に何度も語ったとおりです。ということは『アトム』がなかったらキャラクタービジネスのフライング的急発達も日本ではなかった、と思います。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
電通や博報堂がニューヨークに支局を持っていて、そこからmerchandisingの考え方が日本にも入ってはいました。このラインから日本でもキャラクタービジネス的なものは60年代半ばには始まっていたと考えられます。ただもっと細々と、おそるおそる。なにしろテレビアニメがないんだから。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
国産のテレビアニメ番組が、です。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
ヨーロッパでマーチャンが始まったのは70年代に入ってからです。むろんその国の国産キャラクターでの話。ディズニーは戦前から稼いでいました。テレビ放送も70年代に始まった。子ども番組が足りなくて、それで日本製アニメを安く買い込んで流したのが後のANIMEマニア増殖のきっかけに。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
日本でのテレビ放送のほうがヨーロッパよりずっと早かったのは、アメリカの政策でそうなる運命だったからです。歴史のフライングといっては大げさでしょうか。そして、アメリカの対日戦略によるいくつものフライングが重なったところに「アニメ」が生まれてしまった。そんな気がします。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
フライングの時期が過ぎ、超大国アメリカの手のひらで踊る時代でなくなるのとともに、労働環境も金鉱探しの鼻息がうせていった。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
うーんまだうまく語り切れない。自分でも面白いところに来てるのがわかるのですが。興味のあるかたは拙訳『ミッキーマウスのストライキ!』の巻末解説をどうぞ。amazon.co.jp/dp/4772611142/…
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
補足。スタジオジブリの母体は、アメリカからの下請けを得意とするトップクラフトというスタジオでした。ジブリが制作部を解散し、人材をよそに引き取らせていて、そのうちのひとつポリゴン・ピクチュアーズ(でしたっけ)がやはりハリウッド下請け系。ああ、何かラインを感じます。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
ハリウッドの下請けとして始まって、やがて国産企画に挑んでいくという進化パターンを日本は踏まなかった。『羅生門』の栄光と、日本のこどもまんが文化の急拡大が背後にあった。このふたつが進化パターンに大きな磁力を発した…
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コメント

黒木鉄也 @Tetsuya_Kuroki 2014年8月24日
アレな人が3分枠帯番組の『インスタントヒストリー』も例に挙げて暴れているので、参考までに5分枠帯番組『クレクレタコラ』の制作費を明らかにしましょう。情報ソースは、『クレクレタコラ』のプロデューサーだった磯野理の『東宝見聞録』より。
黒木鉄也 @Tetsuya_Kuroki 2014年8月24日
30分枠番組の制作費が400万円前後だった時代に、5分枠の『クレクレタコラ』の制作費は1話につき20万円(257話の納品で総制作費は5140万円)で、30分枠と同条件の1週6話で単純計算しても、1週あたりの制作費は120万円が限度。30分枠が1週150万円だった『鉄腕アトム』の時代だと、3分枠の『インスタントヒストリー』の1週制作費は、高く見積もっても50万円台が限度でしょう。
黒木鉄也 @Tetsuya_Kuroki 2014年8月24日
ちなみに、手塚治虫が生前に語っていた「アトムの制作費は1話55万円」説は、『インスタントヒストリー』の1週制作費を参考していたと思われますが、『鉄腕アトム』の企画をフジテレビに売り込んだ広告代理店(萬年社)は、当時の30分枠番組の相場だった1週150万円台をアトムの制作に投入しており、これって制作費を調達する代理店も儲からなければ出来ないコトですよね。
黒木鉄也 @Tetsuya_Kuroki 2014年8月24日
萬年社が、それ以前の短編アニメ番組とは破格の制作費を『鉄腕アトム』に投入可能だった理由は、一般的な知名度も高い手塚治虫の原作をアニメ化して、広告料が高い全国ネットの30分枠で放映すれば、莫大な商品化収入も得られるという勝算もあったからで、アトムよりも知名度が低いマンガをアニメ化して、広告料も低い時間帯で放映していたなら、国産のテレビアニメは商業的に厳しいジャンルとして、この時点で衰退していたでしょうね。
黒木鉄也 @Tetsuya_Kuroki 2014年8月24日
ハイリスク・ハイリターンで、1週30分枠の国産アニメ番組という新ジャンルを開拓した『鉄腕アトム』の商業的成功が、競合他社による商品化収入目的の後続作品を続出させたコトで、くみさんが主張する仮説にもつながるワケですが…。長過ぎたコメントはここで一旦終了。あとは、くみさんにお任せします。
言葉使い @tennteke 2015年5月7日
パーソナルコンピュータの発達で、一人でアニメを作る人が頭角を現してきたけど(新海誠とか山村浩二とか)、そういうことではないんだろうな。>>アニメーションで「作家」はありうるのか?
(新)ぼくキャプ村ーN @sinbokukyapun 2015年5月10日
ビデオ屋やってた鷺巣さんは、うしおそうじ本人では?弟さんも手伝っていたのかもしれないけど