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ヒトラーが「元伍長」であるという誤解/その背景は何か?(赤城毅氏)

ヒトラーは第一次大戦で、鉄十次勲章を得るなどの戦功を立てた勇敢な兵士であったのですが、ヒトラーが「伍長」だったという表現がよく見られます(例:手塚治虫「アドルフに告ぐ」)。 しかし、実際の階級的にはそう呼ぶのは適切ではない、と歴史関係のノンフィクションや翻訳を手がける赤城毅氏(大木毅氏)@akagitsuyoshiが紹介。 詳しい人の間では常識だとか(笑)。 では、なぜそんな誤解が広まったのか?それも含めての考察と反響です。
歴史 赤城毅 近代史 独裁者 欧州 ナチス ドイツ 大木毅 ヒトラー 第二次世界大戦 戦史
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赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
WWⅠのヒトラーの階級は、よく「伍長」と訳されているが、実際には Gefreiter で下から二番目、「一等兵」だった。統率力がないので階級を上げちゃ駄目という判断で、鉄十字章までもらっているのに、とうとう一等兵止まりだった。(続)
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
(承前)だから、軍隊に留まっても、ヴェルサイユ条約で十万人に制限された陸軍に残れるとは考えにくい。たぶん、リストラされて、政治家になったと思われる。
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
私の恩師が、ヒトラーとスターリンのどちらかとつきあわなきゃならないとしたら、断然後者だよ、スターリンは酒飲むからなとおっしゃったことがある。(続)
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
(承前)同感なのだが、権力を握ったあとのスターリンだと、酔っ払ってウカツなことを口走ると、翌朝シベリアか、へたすりゃ銃殺場だったりするかもしれない。(続)
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
(承前)その点、いっしょに飲むなら、やはりムッソリーニか。一晩中自慢話を聞かされそうな気もするが、翌朝死刑にされることはあるまい。
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
ところで、リッベントロップだと思ったが、巨大な執務室をつくって、来客が一〇メートルぐらい歩いて来ないと、握手できないようなつくりになっていたそうである。それで、威圧しようとしたわけだナ。(続)
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
(承前)ところが、松岡洋右が訪独したとき、入り口で立ち止まって、一歩も前に出ようとしなかったので、しかたなくリッベントロップも立ち上がり、歩み寄って握手したそうである。(続)
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
(承前)チャップリンの映画か、いしいひさいち先生のマンガの世界である。
積読荘の住人 @tsundokulib
@akagitsuyoshi ありゃ、わたしそのエピソード、ムッソリーニと吉田茂の組み合わせで読みました。
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
@tsundokulib たしか、リッベントロップにも同様のエピソードがあったと記憶するので、独裁国家首脳の常套手段なのかもしれませんね。ちなみに、ヒトラーの執務室も馬鹿でかいです。
Daisuke Tano @tanosensei
@akagitsuyoshi 「伍長」というのはヒトラーの実際の階級から来ているのではなく、ヒンデンブルクが彼を「ボヘミアの伍長」と呼んだところから来ているんじゃないでしょうか。
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
@tanosensei それ、確証あります? 実は、「ボヘミアの伍長」、誰が言い出したかを特定しようとすると大変ですよ。
Daisuke Tano @tanosensei
@akagitsuyoshi 確証はないですね。というか自分がどこからその知識を得たのかも覚えていません。
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
@tanosensei 私、あれは英語圏から出てきたのではないかと疑っているのです。ドイツ語で、Böhmischer Gefreiter とやったら、どうしても「ボヘミアの一等兵」にしかなりませんからね。
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
@tanosensei 実際、英語の文献で Bohemian Corporal とやっているのは、頻繁に見かけますが、ドイツ語文献ではほとんど見かけないと思いますが、どうでしょうか(英語からの逆輸入的に使っているのは見た記憶があります)。
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
@tanosensei 回想録などではなくて、ヒンデンブルクが「ボヘミアの伍長」を使っている一次史料はありますかね?
Daisuke Tano @tanosensei
@akagitsuyoshi そこらへん、あんまり注意して読んではなかったですね。(^_^;) むしろヒンデンブルクが耄碌していてヒトラーの素性をいい加減にしか把握していなかったというニュアンスで理解していました。
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
@tanosensei bömischer Gefreiter だと「ボヘミアの伍長」のニュアンスにはならないので……。たぶんヒトラーがキイパーソンになってから、英語で「ボヘミアの伍長」という蔑称が生まれたのではないかと(ほんとは一等兵だったので、それでも過大評価ですが)。
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
@tanosensei それが、ドイツに逆輸入されたのではないかと思っています。英語の bohemian だと、勝手気ままなとか、放浪のとか、軽蔑のニュアンスもありますしね。
Daisuke Tano @tanosensei
@akagitsuyoshi ああ、それなら説明がつきそうですね。細かいけど、ちゃんと調べたら面白そう。
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
@tanosensei 案外、ウィーラーベネットが Wooden Titan あたりでつくった話じゃないかという気がします。
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
@tanosensei ウィーラーベネット、結構話を盛っているのは、周知のことですし。
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
@tanosensei 念を押しますが、「ボヘミアの伍長」って、ドイツ語の文献で見かけたことあります?
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi
文書館史料を渉猟したり、稀覯本を探したりする前に、当たり前と思われていることを疑うところ、疑う精神から、研究ははじまります。学者、ジャーナリスト、ライターを問わず、ヘンだな、不思議だなと思うセンスがいちばん大事なのです。
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コメント

gryphon(まとめ用RT多) @gryphonjapan 2014年8月4日
NHK BSプレミアムで、まさにこのtogetterの時代…第一次世界大戦とヒトラーの権力掌握について、カラー化されたフィルムで構成する番組が8月に放送されます。その紹介追加
坂東α @bando_alpha 2014年8月4日
本質的にはどうでも良いが、下から2番目だから「一等兵」かというと違う気もする。そもそも旧軍の上等兵は兵の中で優秀、な筈なので、鉄十時勲章貰う程なら十分相当するだろうし。
坂東α @bando_alpha 2014年8月4日
そう考えると水木先生の「兵長」が「優秀な古参の兵士」的ニュアンスを最も表現してるのかしらん
Hoehoe @baisetusai 2014年8月4日
アドルフのおっちゃんは権力さえ与えなければ精力的で頼りになりそう。すぐキレて大演説ぶたれるけど
言葉使い @tennteke 2014年8月4日
安彦良和「虹色のトロッキー」での「東条上等兵」発言は、最初の大形コミックス平成4年7月10日初版の第一巻P.28です。東条が関東軍参謀長、石原が関東軍参謀副長時代です。ちなみに平成4年12月25日初版の第二巻P.143には「東条憲兵」という言い方も。
thx4311@平壌運転 @thx_4311 2014年8月4日
なんで読んだか忘れたけど、ワイマール時代になっても隠然たる権力を保持していた参謀本部に雇われ「お道具」として使えそうな政治結社などと接触していてその時は少尉を名乗っていたという説があるらしいけど、それは仕事をスムーズに進めるための「泊付け」と言う奴かなぁ?あるいは攻殻の「少佐」みたいなものか?
長 高弘 (タル坊サウルス) @ChouIsamu 2014年8月4日
東條英機がヒトラーを「元伍長風情」と呼んだのは、東條も、その辺りを誤解してたのか、それとも、「元伍長風情」と呼んだ事自体が「伝説」なのか……
noobie@ゲーム評論集発売中ニキ @17noobies 2014年8月4日
どうでもいいけど後半アイコンが同じでわかりにくいw
白瀬伸一(軍事アナリスト) @ChromeBranche 2014年8月4日
ひょっとしたらナポレオンのあだ名「le petit caporal(ちびの伍長)」に対応させた呼び方だったのかもしれない。ヒトラーはナポレオンを意識していたというし、自分のあだ名に使う階級を「盛る」ことは我が国でもよくあることであるし。
アニドル脚本審査委員委員長YouTube解説出演.Ἄτη,LeeὝπνος, Sandmann. @Gartheimer 2014年8月4日
 ヒトラー総統はお酒はたしなむ程度ですが、飲みましたよ。アルデンヌの作戦の時に(詳しくは失念)、祝いでワインを飲んで、側近が驚いたというエピソードが残っています。
マルンボーリ @tandaji 2014年8月4日
同志スターリンと飲み会するなんて度胸のある先生だな。
y_mat2009@Censored @y_mat2009 2014年8月4日
ヒトラー係長…上にも下にも同僚にもしたくないような…
ICHIKAWA Kento(おにぎり) @kentosho 2015年9月7日
あ、伍長じゃなかったんだ…
ウィルヘルミナ (Vilhelmine) @HelmiLokadottir 2017年1月24日
ボヘミアについてはこちらに興味深い議論が→(https://www.reddit.com/r/AskHistorians/comments/1cj18v/what_did_paulus_mean_when_he_called_hitler_a/)。 要は生地ブラウナウ・アム・イン(Braunau am Inn)がボヘミアのブラウナウ(Braunau in Nachod, チェコ語でブロウモフ Broumov)と取り違えられたというもので、同時期のヒトラー伝記などにも同様のミスがあるようです。
ウィルヘルミナ (Vilhelmine) @HelmiLokadottir 2017年1月24日
あと、一次資料ではありませんが、ドイツ語文献に登場する、ヒンデンブルクやパウルス等が言ったとされるヒトラーの別称 der böhmische Gefreite (Gefreite は Gefreiter の異型または複数形。厳密な階級というよりより一般に「兵卒」位の感じかと)ですが、 böhmisch は単純に「ボヘミア地方の」であり、 いわゆる 「ボヘミアン」(ドイツ語でボエーミアン Bohemien. フランス語由来)の意味は含みません。
ウィルヘルミナ (Vilhelmine) @HelmiLokadottir 2017年1月25日
引き続きボヘミア云々に限った話ですが、上掲リンク先によると、フリードリヒ・パウルスの発言については彼と共にスターリングラート戦に参加したフィリップ・フンバートが 『シュピーゲル』 紙に寄稿した回想で、その真偽はさておくとして、基本的に英語からの影響を考慮する必要がありません。
亜山 雪 @ayamasets 2017年4月24日
旧ドイツ陸軍で伍長というと、班長くらい?分隊長くらい?
94式北海黒竜王V、 @DoomDrakeV 2018年6月8日
ゲームギャザのガンダムの連載で桂令雄が「伍長待遇上等兵」って書いてたはず
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