ヒトラーが「元伍長」であるという誤解/その背景は何か?(赤城毅氏)

ヒトラーは第一次大戦で、鉄十次勲章を得るなどの戦功を立てた勇敢な兵士であったのですが、ヒトラーが「伍長」だったという表現がよく見られます(例:手塚治虫「アドルフに告ぐ」)。 しかし、実際の階級的にはそう呼ぶのは適切ではない、と歴史関係のノンフィクションや翻訳を手がける赤城毅氏(大木毅氏)@akagitsuyoshiが紹介。 詳しい人の間では常識だとか(笑)。 では、なぜそんな誤解が広まったのか?それも含めての考察と反響です。
148
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

WWⅠのヒトラーの階級は、よく「伍長」と訳されているが、実際には Gefreiter で下から二番目、「一等兵」だった。統率力がないので階級を上げちゃ駄目という判断で、鉄十字章までもらっているのに、とうとう一等兵止まりだった。(続)

2014-08-02 22:37:48
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

(承前)だから、軍隊に留まっても、ヴェルサイユ条約で十万人に制限された陸軍に残れるとは考えにくい。たぶん、リストラされて、政治家になったと思われる。

2014-08-02 22:39:02
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

私の恩師が、ヒトラーとスターリンのどちらかとつきあわなきゃならないとしたら、断然後者だよ、スターリンは酒飲むからなとおっしゃったことがある。(続)

2014-08-02 22:58:27
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

(承前)同感なのだが、権力を握ったあとのスターリンだと、酔っ払ってウカツなことを口走ると、翌朝シベリアか、へたすりゃ銃殺場だったりするかもしれない。(続)

2014-08-02 22:59:03
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

(承前)その点、いっしょに飲むなら、やはりムッソリーニか。一晩中自慢話を聞かされそうな気もするが、翌朝死刑にされることはあるまい。

2014-08-02 23:00:16
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

ところで、リッベントロップだと思ったが、巨大な執務室をつくって、来客が一〇メートルぐらい歩いて来ないと、握手できないようなつくりになっていたそうである。それで、威圧しようとしたわけだナ。(続)

2014-08-02 23:02:17
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

(承前)ところが、松岡洋右が訪独したとき、入り口で立ち止まって、一歩も前に出ようとしなかったので、しかたなくリッベントロップも立ち上がり、歩み寄って握手したそうである。(続)

2014-08-02 23:03:15
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

(承前)チャップリンの映画か、いしいひさいち先生のマンガの世界である。

2014-08-02 23:04:02
積読荘の住人 @tsundokulib

@akagitsuyoshi ありゃ、わたしそのエピソード、ムッソリーニと吉田茂の組み合わせで読みました。

2014-08-03 19:02:24
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@tsundokulib たしか、リッベントロップにも同様のエピソードがあったと記憶するので、独裁国家首脳の常套手段なのかもしれませんね。ちなみに、ヒトラーの執務室も馬鹿でかいです。

2014-08-03 19:08:10
Daisuke Tano @tanosensei

@akagitsuyoshi 「伍長」というのはヒトラーの実際の階級から来ているのではなく、ヒンデンブルクが彼を「ボヘミアの伍長」と呼んだところから来ているんじゃないでしょうか。

2014-08-02 23:04:52
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@tanosensei それ、確証あります? 実は、「ボヘミアの伍長」、誰が言い出したかを特定しようとすると大変ですよ。

2014-08-02 23:07:44
Daisuke Tano @tanosensei

@akagitsuyoshi 確証はないですね。というか自分がどこからその知識を得たのかも覚えていません。

2014-08-02 23:10:10
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@tanosensei 私、あれは英語圏から出てきたのではないかと疑っているのです。ドイツ語で、Böhmischer Gefreiter とやったら、どうしても「ボヘミアの一等兵」にしかなりませんからね。

2014-08-02 23:12:43
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@tanosensei 実際、英語の文献で Bohemian Corporal とやっているのは、頻繁に見かけますが、ドイツ語文献ではほとんど見かけないと思いますが、どうでしょうか(英語からの逆輸入的に使っているのは見た記憶があります)。

2014-08-02 23:14:19
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@tanosensei 回想録などではなくて、ヒンデンブルクが「ボヘミアの伍長」を使っている一次史料はありますかね?

2014-08-02 23:15:30
Daisuke Tano @tanosensei

@akagitsuyoshi そこらへん、あんまり注意して読んではなかったですね。(^_^;) むしろヒンデンブルクが耄碌していてヒトラーの素性をいい加減にしか把握していなかったというニュアンスで理解していました。

2014-08-02 23:20:25
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@tanosensei bömischer Gefreiter だと「ボヘミアの伍長」のニュアンスにはならないので……。たぶんヒトラーがキイパーソンになってから、英語で「ボヘミアの伍長」という蔑称が生まれたのではないかと(ほんとは一等兵だったので、それでも過大評価ですが)。

2014-08-02 23:24:32
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@tanosensei それが、ドイツに逆輸入されたのではないかと思っています。英語の bohemian だと、勝手気ままなとか、放浪のとか、軽蔑のニュアンスもありますしね。

2014-08-02 23:26:22
Daisuke Tano @tanosensei

@akagitsuyoshi ああ、それなら説明がつきそうですね。細かいけど、ちゃんと調べたら面白そう。

2014-08-02 23:30:27
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@tanosensei 案外、ウィーラーベネットが Wooden Titan あたりでつくった話じゃないかという気がします。

2014-08-02 23:33:14
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@tanosensei ウィーラーベネット、結構話を盛っているのは、周知のことですし。

2014-08-02 23:35:11
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@tanosensei 念を押しますが、「ボヘミアの伍長」って、ドイツ語の文献で見かけたことあります?

2014-08-02 23:38:32
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

文書館史料を渉猟したり、稀覯本を探したりする前に、当たり前と思われていることを疑うところ、疑う精神から、研究ははじまります。学者、ジャーナリスト、ライターを問わず、ヘンだな、不思議だなと思うセンスがいちばん大事なのです。

2014-08-02 23:44:55