プロ翻訳家が語る『赤毛のアン』の邦訳比較

NHKの朝のドラマがきっかけで『赤毛のアン』に改めて脚光があたっています。邦訳も何十種類とあるとか。どの程度のものか分析していきましょう。
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It happens sometimes @ElementaryGard

『赤毛のアン』の訳者比較 ― 2014/03/31 01:24 gabasaku.asablo.jp/blog/2014/03/3… うーん、先ほど図書館で村岡花子訳のを借りてきました。ここにある箇所の訳、あんまりよくないですね。数行とばしているし。

2014-07-13 21:26:51
It happens sometimes @ElementaryGard

「つまり、洞察力にすぐれた人が見れば、マシュー=カスバートがばかみたいにおそれている、このさすらいの少女のからだには」 うーん、これもちょっとねえ。

2014-07-13 21:31:18
It happens sometimes @ElementaryGard

①an ordinary observer ②an extraordinary observer ③our discerning extraordinary obeserver 三段跳びのリズム感からかもしだされるユーモアを、村岡をはじめほかの翻訳者もつかめていない。

2014-08-12 00:47:13
It happens sometimes @ElementaryGard

togetter.com/li/705230 >③our discerning extraordinary obeserver our(我らが)とあるのに注目!これはマシュウのことです。実際のマシュウは極めて鈍感ですが、ここでは「尋常ならざる観察眼を有する」と皮肉っているのです。

2014-08-12 00:43:02
It happens sometimes @ElementaryGard

くみ訳「要するに尋常ならざる観察眼を有するならば、問題のこの迷子娘には非凡なる知性と魂が感じられることにあるいは気がつくところなのだが、あいにくマシュウ・カスバートは女性には小心で、この娘に声をかけることすらたいそう難儀なのだった。」 いかめしい単語が原文に並ぶので訳も同様に。

2014-07-13 21:44:36
It happens sometimes @ElementaryGard

"in short, our discerning extraordinary obeserver might have concluded that no commonplace soul inhabited the body of this stray woman-child

2014-07-13 21:46:29
It happens sometimes @ElementaryGard

of whom shy Matthew Cuthbert was so ludicrously afraid." 以上が原文です。

2014-07-13 21:46:46
It happens sometimes @ElementaryGard

茅野美ど里・訳 (1987年刊、偕成社) 「つまり、洞察力にすぐれた人が見れば、マシュー=カスバートがばかみたいにおそれている、このさすらいの少女のからだには、人なみはずれた魂がやどっていることがわかったはずなのである」 

2014-07-13 21:48:23
It happens sometimes @ElementaryGard

この訳では失格。「もしマシュウ・カスバートに人並み外れた観察眼があったならば」と訳さないと×。そのうえ、アンの体からにじみ出る、わかるひとにはわかるオーラの輝きと、もじもじおずおずのマシュウの腰抜けぶりが対比的に描かれている原文のニュアンスを、汲み取れていない。

2014-08-12 02:55:17
It happens sometimes @ElementaryGard

妙なオーラを放つ小娘VSさえない初老のおっさん の対立構図を訳文に生かさないと×。この方は原文をうしろから訳していってますね。それだとこの対立構図が消えてしまって、ユーモアの感じがなくなってしまうのです。私が編集さんなら突っ返すレベルです。厳しいね。

2014-07-13 21:52:59
It happens sometimes @ElementaryGard

ちなみにアンが駅のホームで待ちぼうけしてるところに、養子「息子」となる子を迎えにマシュウが馬車で現れるところの文です。アニメだと第一話。

2014-07-13 21:57:07
It happens sometimes @ElementaryGard

ああ、ああ、図書館の児童室に並んでるような古ぼけた洋もの小説を、私に改めて訳させてくださるのなら、原著が英語でもドイツ語でもフランス語でも、赤さびた戦艦大和の残骸から超すごい宇宙戦艦を浮上させてみせるのに…(ここ、『カリ城』で姫様をくどくルパンの口調で)

2014-07-13 22:03:05
It happens sometimes @ElementaryGard

村岡訳の『アン』をとびとびに読んでいく。私が最初に読んだのは別の訳。誰のだったか。

2014-07-13 23:55:50
It happens sometimes @ElementaryGard

”As much as she hated Gilbert, however, did she love Diana,

2014-07-14 00:12:31
It happens sometimes @ElementaryGard

with all the love of her passionate little heart, equally intense in its likes and dislikes." さあ花岡はどう訳しているか。

2014-07-14 00:13:02
It happens sometimes @ElementaryGard

花岡じゃなくて村岡か。「しかしアンは、ギルバートをにくめばにくむほどダイアナを、同じようなはげしい熱情で小さな胸の底から愛したのだった」。

2014-07-14 00:15:40
It happens sometimes @ElementaryGard

くみ訳。「だがアンはギルバートを憎むのを止めず、そのぶんダイアナを好いたのだった。その小さな胸に燃える愛情の激しさは、誰かを憎む心と同じくらい熱いものだった」。 どうでしょう。「誰かを」と付け加えるのがセンス。また自画自賛ですすみません。

2014-07-14 00:24:45
It happens sometimes @ElementaryGard

で、村岡訳ではここで次の章に行ってしまうんですが、実は原著ではさらに続くんですよ。アンがいかにダイアナに思い入れているかが、マリラとのやり取りから描かれる。なぜここを訳者はとばした?百合だからか?

2014-07-14 00:27:17
It happens sometimes @ElementaryGard

少女小説には「父性との和解」という裏テーマのがけっこうある。『アン』の世界は「父」がいない。マシュウはしょせん女性恐怖症の独身男。それがぽっくり亡くなるのと入れ替わりに李小狼…ではなくてギルバートがアンの心のなかにとうとう入ってくる。

2014-07-14 00:38:04
It happens sometimes @ElementaryGard

ところで意外と知られていないのが『赤毛のアン』の著作権、正確には日本語への翻訳刊行の権利について。戦前にとうに切れていたようです計算すると。つまり作者のモンゴメリが生きているあいだに邦訳権はフリーになっていた。

2014-07-14 17:50:52
It happens sometimes @ElementaryGard

ただしそれは日本での翻訳権について。日本国内で何かの言語に翻訳するぶんにはモンゴメリの遺族との契約は不要、印税支払いも不要。翻案権は?1979年に日本でテレビアニメになるとき、たしか某劇団経由で日本アニメーション社は遺族にお伺いを立てています。中島Pの回想録に言及あり。

2014-07-14 17:55:29