琵琶先生による、現代輸血治療の意義とその限界。(おまけあり)

発端は、船橋市議会議員、無所属(結いの党から離党)の高橋宏氏が個人ブログに投稿した、「放射線照射した血を輸血しているという現実」(http://ameblo.jp/takahirominfuna/entry-11906106544.html)と言う記事。 瞬く間に拡散、炎上した記事に関連する、臨床医である琵琶先生の、そもそも輸血とは何か、輸血治療の限界とは何か、に関するツイートをまとめました。 後半に、まとめ主による「GVHDとは何か」に関する連ツイを、おまけとして収録しました。
科学 輸血 結いの党 γ線照射 船橋 GVHD
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枇杷 @loquat_priest
「輸血」とひとくちにいいますが、血液の全成分を分けずに全部入れる「全血輸血」は、現在の医療現場ではゼロと言ってもいいほど行われていません。献血から得られた血液は、おおざっぱに赤血球、血小板、血漿の3成分に分けられて、それぞれの用途に応じて使われます。
枇杷 @loquat_priest
赤血球には酸素の運搬、血小板には止血という主な働きがあります。それらと白血球を除いた液体成分である血漿は、そのまま凍らせて止血に使う新鮮凍結血漿、加熱などの処理を施したヒト蛋白製剤、それと血漿をさらに成分別にわけた血漿分画製剤があります。
枇杷 @loquat_priest
それぞれの働きや用途の詳細は省きますが、「患者さんに足りなくて問題を引き起こしているものを補う」というのが輸血の基本的な考え方です。どの患者さんにどの成分が足りなくて何の輸血をするのかは、病気によっても違うし同じ病気でも病態(症状の状態)によって変わります。
枇杷 @loquat_priest
「輸血が身体に有害なことがある」というのは事実です。たとえば、主成分が塩と水である血漿製剤を心不全や腎不全の患者さんに考えなしに輸血すれば、体に水がたまりすぎて具合を悪くします。
枇杷 @loquat_priest
ほかには、血小板による血栓ができすぎる病気で、血小板を使い果たして減ってしまっているような人に血小板を輸血すると、かえって血栓をたくさんつくってしまい、さらに病気が悪化するようなこともあります。
枇杷 @loquat_priest
また、赤血球が足りなくて輸血をする場合、健康な人と同じようなレベルまで輸血をしてしまうと、それよりも輸血を少なく抑えた人より、治療の成績が悪くなるといった結果もあります。繰り返しますが、「患者さんに足りない成分とその量を見極め、必要なだけの輸血をする」のは大原則です。
枇杷 @loquat_priest
目の前の患者さんに血液が足りないことが分かっていても、いったいどれだけの輸血が必要なのか、成分はともかくその量を適切に見極めるのはとても難しいことで、いろいろな病気の専門家が日々、その量を見極めようと努力しています。臨床の最前線でも、研究としても。
枇杷 @loquat_priest
ある量以上の血液を失ってしまった患者さんに、いくら塩水やタンパク質の点滴をしても、血液中の赤血球がある程度以下に薄まってしまえば、体の各臓器が必要としている量の酸素を肺から届けることができなくなります。この現実は医療が相当進歩した現在も変えられていません。
枇杷 @loquat_priest
よく考えない輸血が体にとって害になる可能性があるのは言うまでもないけど、同じように、輸血でなければ助からない患者さんがいることも言うまでもないのです。輸血を受ける方の違いや成分、量の違いに全く触れることなく、「輸血は害だ」などと簡単に言い切る言説は暴論以外の何物でもありません。
枇杷 @loquat_priest
「輸血は害だ」という暴論をみて献血をためらっている方がもしいるなら、あなたは詐欺師か愚か者に騙されそうになっています。あなたが提供してくれる血液は高い確率で誰かの役に立つだろうし、場合によっては人の命を救います。迷わずに献血してください。
枇杷 @loquat_priest
…長いなあ。白血球とGVHD端折ったのに。修行が足りん。

と言う訳で、僭越ながら私が前座としてGVHDについて、分かる範囲で解説させて頂きます。

ところどころGVDHとかになってるのはご愛嬌って事で…。

simesaba0141/MJ号 @simesaba0141
@simesaba0141 GVHDは、日本語の移植片対宿主病と言う名前がそのまんま示すとおり、簡単に言うと移植された臓器が、もともとある自分の体を、外来からの異物と認識して免疫反応により攻撃する病態で、アレルギー反応の一種(4型)です。
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141
@simesaba0141 早速習ったことをまるっと忘れてましたが、いわゆる拒絶反応とは逆になります。例えて言うと、トロイの木馬みたいなものですね。木馬を移植臓器だとすると、その中に兵隊が潜んでいて、こいつが増殖しながら宿主を体内から手当たり次第に攻撃します。
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141
@simesaba0141 その発生機序は、まだ不明(Wikipediaより)だそうですし、そこまで説明できるほど深い知識は持っている訳ではありませんが、ここでトロイの木馬に例えた意味を、良く考えて見てください。木馬自体が悪さをする訳ではなく、内部に潜んだ兵隊が暴れる訳です。
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141
@simesaba0141 つまり、予め兵隊を殺してしまえば、木馬自体は有用なものとして、充分に宿主のために働いてくれる訳です。ここで琵琶先生のまとめを思い起こして下さい。輸血は基本的に足りないものを補うために行われるものでしたね。
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141
@simesaba0141 その対象は、赤血球や血小板、そして白血球を除いた血漿成分でした。そしてGVHDを引き起こす原因として有力視されているリンパ球は、白血球に分類されます。つまり、輸血全般に言える事ですが、白血球は最初から邪魔者扱いのようです。
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141
@simesaba0141 さて白血球と、他の血液成分の大きな違いは何か、それは細胞核の有無にあります。白血球には核があります。核が在ると何が起こるかというと、核内にはDNAがありますので、自己再生能力を有しているという事を意味します。
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141
@simesaba0141 もうお気づきと思いますが。リンパ球など白血球は、移植された後、何らかの理由で自己再生を始める事があり、これが輸血後、患者の免疫力が落ちている場合などに、一気に増殖を始める事でGVHDが起きる訳です。予後は一般に不良だそうで、怖いですね。
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141
@simesaba0141 さてそこで漸く放射線の出番となります。放射線の作用には電離と言うものがあり、DNAを簡単に切断してしまいます。特にリンパ球は放射線に弱く、短時間に250mSvを超える照射を受けると減少し始めます。中でもリンパ球は最も感受性が高い事が知られています。
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141
@simesaba0141 対して他の血液成分は、そもそも核を持たないので、放射線に対する耐性は非常に高く、この感受性の差を上手く利用することで、元々成分分離の段階で白血球は減少している血液製剤から、放射線を照射することで、さらに効率良く白血球を除去できるのです。
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141
@simesaba0141 もちろん、白血球の残骸はそのまま残る訳ですが、少なくとも自己再生能力を奪えば、GVHDに関して言えば安心して輸血できるようになる、と言う理屈です。余談ですが、この血液照射装置というのは、昔は放射性同位元素を使ってました。
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141
@simesaba0141 なので、装置の分類がちょっと特殊なので、技師免許の引っ掛け問題として多用されます。ウチの会社も、この装置を売らないかと持ち掛けられた事があるそうな。
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141
@simesaba0141 余談ついでに、リンパ球と言うのは実は細胞としては完全に出来上がった状態ですので、いわゆる放射線の感受性の高さを説明する、ベルゴニー・トリボンドーの法則というやつがあるのですが、そこに規定されている条件とは真逆だったりします。
simesaba0141/MJ号 @simesaba0141
@simesaba0141 なのに、人体では最も放射線感受性が高い部類に入る例外なので、これも国試に良く出ます。そう言った成熟した細胞が、どうして輸血されると自己再生能力を発揮することがあるんでしょうね?(おしまい)

コメント

simesaba0141/MJ号 @simesaba0141 2014年8月16日
おお、ここが震源地ですか。まあ、何と言うか罪作りな人ですね。
ぼくキセノン(御用希ガス) @Bokusui_N 2014年8月16日
ああ… URLだけで震源が誰だかわかってしまいました。
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